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中国人はなぜお金持ちになったのか…都市部世帯の持ち家は平均1.5軒

中島恵

2021年01月18日 公開 2022年10月24日 更新

中国人はなぜお金持ちになったのか…都市部世帯の持ち家は平均1.5軒


上海市にある古いマンション。一等地のため、価格は高騰している(著者撮影)

新型コロナ禍からいち早く立ち直ったとされる中国。彼らの経済成長はいまだとどまるところを知らない。中国人の資産も一昔前に比べると急増しているが、そこにはIT産業の隆盛とは異なる別の理由があるという。カギは「住宅の転売」だ。

※本稿は中島恵『中国人のお金の使い道』(PHP新書)より一部抜粋・編集したものです。

 

持ち家3軒を持っている世帯が10%存在する

中国国家統計局の2019年のデータでは、都市部の家計消費支出のうち、住宅費は24%となっている。2009年の統計では10%だったので、10年間で倍増した。

住宅費といえば、住宅ローンか家賃ということになるが、中国の不動産市場の成り立ちには中国特有の背景があり、日本とは根本的に異なる。

中国人にとって不動産はかけがえのない財産であり、生活の基盤となる最も重要なものだ。むろん、日本人にとっても大事な財産であることに変わりはないが、日本人の意識の中では、財産というよりも「住居」や「終の棲家」という実用的な意味合いのほうが大きいのではないかと感じる。

たいていの日本人にとって、不動産は「一生に一度か二度の最も大きな買い物」だ。

だが、中国人にとっての不動産はそうとは限らない。

財産や「住居」であると同時に「投資」の対象であり、自分の財産をさらに大きく増やしてくれる財テクの「道具」、人生のステップアップに欠かせない「踏み台」といった存在なのだ。

だから、多くの中国人は不動産の購入に目の色を変えて夢中になるし、自分が住む不動産を購入しても安住せず、また別の不動産を手に入れようとする。

一般的な日本人は考えてみたこともない発想だと思うが、彼らにとっては、不動産には自分の住居という以上の大きな意味があるため、「不動産を1軒以上持っている」という人が少なくない。

2020年5月、中国人民銀行が発表した、都市部住民世帯を対象として行った資産状況に関する調査報告によると、都市部住民世帯の住宅保有率はなんと96%に上っていた。

そのうち1軒の住宅を保有する割合は58.4%、2軒を保有する割合は31%、3軒を保有する割合は10.5%。1世帯平均で1.5軒を保有していることがわかった。

自分の不動産が値上がりしたら、タイミングを見計らって転売するためだ。そのようにして得た利益によって、中国人のふところは驚くべきスピードで豊かになっていった。

 

不動産とは「転売するもの」

タイトルの「中国人はなぜお金持ちになったのか」の答えを二つ挙げるとすれば、その一つ目は、不動産の転売である。

2020年7月、北京市内に住む40代の女性に電話を掛けた。

雑談をしていたとき、彼女が最近見かけたという、ある不動産の話を始めた。自宅に近い新築マンションの展示場に人だかりができていたというのだ。

その不動産というのは、北京市の東四環路という大きな道路を越した住宅地にあり、1平方メートル当たり、約9万8000元(約150万円)もするもの。

中国の高級物件は最低でも100平方メートル以上の面積があるものが多いので、100平方メートルなら、単純計算でも日本円で約1億5000万円ということになる。

そのころ、北京市では新型コロナ問題がほぼ収束していたとはいえ、消費が落ち込んでいる中、そんな高級物件の展示場に人だかりができていると聞いて私は驚いたのだが、友人はとくにびっくりしたという様子もなく、こう続けた。

「だって、今なら絶対にお買い得だから、以前から狙っていた人が飛びつくのは当たり前ですよ。新型コロナの影響で、どこも不動産の価格が下がっているんですから」

確かに、2020年5月、中国全体の不動産販売額は、前年同期比16%増と、新型コロナ前よりもアップしていた。同じころ、小売の売上高は同3%減であるのと比べ、不動産はいち早く、新型コロナ前の状態に持ち直した。

2003年にSARS(重症急性呼吸器症候群)が発生したあとも中国の不動産価格は一気に値下がりしており、そのときのことを覚えている中国人は今回のコロナ禍を「チャンス到来」と思い、即座に行動に移したのだ。

その女性は10年以上前にも、日本円に換算して3000万円ほどの不動産をローンで購入しており、現在ならその価値は「少なくとも5倍にはなっていると思う」と話す。

それでも「今もう1軒買っておけば、10年後はきっとさらに価値が上がって転売できるはず。そうしたら、もっと優雅な生活ができるんじゃないかな」と、夢見るようにつぶやいていた。

そのころ、北京市では新型コロナ問題がほぼ収束していたとはいえ、消費が落ち込んでいる中、そんな高級物件の展示場に人だかりができていると聞いて私は驚いたのだが、友人はとくにびっくりしたという様子もなく、こう続けた。

「だって、今なら絶対にお買い得だから、以前から狙っていた人が飛びつくのは当たり前ですよ。新型コロナの影響で、どこも不動産の価格が下がっているんですから」

近年は「不動産を買わない」という選択をする若者も増えてきているが、もう少し上の世代なら、そう思うはずだという。

それはまさしく、彼らの多くが「不動産さえ持っていれば、その価格が上昇し、それが所得を増やすことにつながるはずだ」という「不動産神話」を今も信じているからに他ならない。

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住宅は「単位」から払い下げられた

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