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生後3ヶ月の息子の「目が見えない」と分かって人生が激変した



2021年03月04日 公開

澤田智洋(コピーライター・世界ゆるスポーツ協会代表理事)

 

父親がキレイなCMをつくったところで、視覚障害のある息子は見れない

時は流れて、僕ら夫婦に1人の息子が生まれました。よくミルクを飲んで、よく泣いて、よく笑う。寝不足の日々が始まりましたが、かわいくてしかたがありませんでした。でも、3か月ほど経った頃、息子の目が見えないことがわかりました。

終わった、と思った。

見えない子って、どうやって育てたらいいんだろう。恋愛ってするのかな。幸せなんだろうか。その日から、仕事が手につかなくなりました。

 僕の主な仕事は、映像やグラフィックを駆使して、広告をつくることです。それってつまり、僕がいくら美しいCMをつくったとしても、視覚障害のある息子には見ることができないということ。

「パパどんなしごとしてるの?」と聞かれたときに、説明できない仕事をやるのはどうなのか。僕がやっている仕事なんて、まったく意味がないんじゃないか。

なにをすればいいんだろう? どう働けばいいんだろう? 32歳にして僕は、今まで拠り所にしていたやりがいをすべて失い、「からっぽ」になってしまったんです。

 

視覚障害のある息子がくれた「再デビュー戦」

その矢先に、日本ブラインドサッカー協会の松崎英吾さんとの出会いがありました。

ブラインドサッカーとは、アイマスクを装着して行う「視覚障害者サッカー」です。 その一般向けの体験会を実施してはいるものの、もっと知名度を上げて集客を図りたい。なにかアイデアはないか? という相談でした。

ものは試しにと、体験会におそるおそる参加してみると、自分の価値観が180度「グワン」と音を立ててひっくり返りました。 場をリードするのは、視覚障害のある寺西一さんという選手。

参加者は、アイマスクをつけて、柔軟体操をしたり、ボールを使ったグループワークをします。 暗闇に放り込まれて一気に不安が襲いかかってくる……と思いきや、それは予想していたような「視覚を奪われた怖い体験」ではありませんでした。むしろ「視覚が閉ざされている安心感」を得られる体験だったんです。

世界が、なにか「適切な情報量」にチューニングされていくような。

情報社会の今、人は情報の85%を視覚から得ている、というデータがあります。つまり僕らの生活の中では、スマホ、パソコン、タブレット……あらゆるデバイスが「ON」になっていて、常に目から情報が飛び込んできてしまう。

ところが視界を「OFF」にすると、情報量がおさえられ、快適な時間が待っていた。 そう考えると、その場をリードするブラインドサッカー選手が「目をOFFにするエキスパート」に見えてきました。

後日、僕は松崎さんに「OFF T!ME(オフタイム)」というネーミングを提案しました。 脳も目も疲れている現代人。それに対して、ブラインドサッカー体験は「目をOFFにする」という価値を提供しています、と。

その後、「OFF T!ME」はテレビや新聞に取り上げられ、今では企業や団体向けのチームビルディングやコミュニケーション研修として、日本ブラインドサッカー協会の収益の柱のひとつにまで成長しました。

この仕事が、いちクリエイターとしても、息子の親としても、ターニングポイントになりました。「目が見えない」という、ある意味での「弱さ」が、見方を変えると新しい価値になることを目の当たりにしたからです。

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