共通テストにも導入予定の新科目「歴史総合」…小中学生から始める3つの対策

馬屋原吉博
2023.03.15 17:11 2023.03.15 17:11

馬屋原吉博

来年春、2022年度から全国の高校で「歴史総合」という新しい科目が必修となる。これは日本史と世界史を統合して、近現代を中心に教えるというまったく新しい科目。2024年度からは大学入学共通テストにも加わるという「歴史総合」。

この未知の科目に備えるために、小中学生のころからできることはあるだろうか。中学受験専門塾で社会と国語を教え、難関中学に多くの生徒を送り出している馬屋原吉博さんに聞いた。(取材・文=久保美鈴、 撮影=奥西淳二)

馬屋原吉博(中学受験専門のプロ個別指導教室「SS-1」副代表)
中学受験専門のプロ個別指導教室「SS-1」副代表、社会科教務主任。
中学受験情報局「かしこい塾の使い方」主任相談員。1983年生まれ。著書に『今さら聞けない! 世界史のキホンが2時間で全部頭に入る』(すばる舎)、『カリスマ先生が教える おもしろくてとんでもなくわかりやすい 日本史』(アスコム)などがある。

「歴史総合」とはどんな科目?

テストに挑む子ども

――「歴史総合」という科目が新設された背景を教えてください。

【馬屋原】歴史総合は、高校の学習指導要領の改訂によって新設された科目です。小中高一連の教育改革はすでに始まっていて、高校のものはそのゴールに当たります。その中で社会科の単位数などを見直す必要があり、日本史と世界史を融合させるような形で「歴史総合」という必修科目が設定されることになりました。

――どのような特徴があるのでしょうか。

【馬屋原】いちばんの特徴は、近現代史にシフトしたものになっているということです。

――「近現代」というのは、具体的にどの年代になるのでしょう。

【馬屋原】「近代」などの時代区分は社会構造の変化に注目したもので、当然、地域によって時期は異なります。日本史では19世紀の幕末以降を近代としていますが、ヨーロッパでは15~16世紀以降と言われることが多いようです。「歴史総合」ではヨーロッパで産業革命が進んだ18世紀あたりから学びを深めていく設計になっているようです。

――なぜ近現代史がクローズアップされたのでしょうか。

【馬屋原】世の中に出てすぐに役立つ知識は、古代よりは近現代史だろうということなのでしょう。国際的なニュースを背景とともに理解し、世界で活躍できる人間を育てたいというメッセージが込められているように感じます。

グローバル・ヒストリーに対応するために必要なこと

勉強をする男女

――「歴史総合」の新設で歴史教育そのものにも変化が起こりそうですね。小中学生のころから準備できることはあるでしょうか。

【馬屋原】対応するための鍵は3つあります。

まずは、日本史をしっかりと身につけておこうということです。

歴史には、特定の地域を取り上げて過去から現在の流れを見る「縦のつながり」と、ある時代を基準にして同時期の各地の関係性に注目する「横のつながり」があります。

最近は、歴史を地域の枠にとらわれず地球的規模でとらえようとする「グローバル・ヒストリー」という言葉を目にする機会が増えましたが、「歴史総合」も今まで以上に「横のつながり」を強く意識したものになっているようです。

でも横のつながりを重視すると、当然ながら縦のつながりがとらえにくくなるということが起きてきます。情報処理ができる能力には限界があるので、わけがわからなくなってしまう子も出てくるでしょう。だからこそ小中学生のうちに、日本史という「縦軸」を1本通しておいてほしいと思います。

たとえば西暦1700年代と言われたときに、その時の日本は江戸時代でこんなことが起こっていたというイメージがある子とない子では、世界史を含めた歴史の理解度にだいぶ差が出てくるでしょう。縦軸がひとつ、自分の中にできていれば、そこが他の知識を理解するとっかかりになってくれます。

これからは高校の歴史教育で横のつながりを重視するようになりますので、縦の部分をとらえる力、視点というのは小中学校で身につけるようにしておきたいですね。

また、年代を意識的に覚えておくのも役立ちます。暗記は不要だという人もいますが、西暦何年にこういう出来事があったということを覚えておくことで、それがフックになって頭の中でマップが整理されることもあります。たくさん覚える必要はありませんが、数字は大事にしておいたほうがいいですね。