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「あったらいいな」を追求して...ヒット商品“メガネクリーナふきふき”誕生の裏側

2022年02月03日 公開

小林一雅(小林製薬会長)

小林一雅
写真撮影:小西国広(スタジオ コニシ)

「ブルーレット」「アンメルツ」「消臭元」「熱さまシート」など、愛され続ける長寿ブランドを創造し、衛生日用品のニッチマーケットで勝ち続ける小林製薬。

優れたマーケッターとして知られる同社の中興の祖・小林一雅会長は、どうやって数々のヒット商品を世に送り出すことができたのか。社員を育成しつつ、ヒット商品を生みだし、市場を創造するうえで、どんな経営が求められるのか――。その秘訣がこの開発秘話に隠されている。

※本稿は、小林一雅著『小林製薬 アイデアをヒットさせる経営』(PHP研究所)の一部を再編集したものです。

 

ヒット商品「メガネクリーナふきふき」はこうして生まれた

メガネクリーナーふきふき
「メガネクリーナふきふき」 写真提供:小林製薬

お客さまのニーズというものは、市場調査やアンケートももちろん大事ですが、それだけで掴めるような簡単なものではないのです。100人いれば100人の考え方、それぞれの好き嫌いがあると認識すべきです。

ですから、誰もが自分が「欲しいもの、必要としているもの」を考え、アイデアを出し合う仕組みづくりを組織のリーダーは考えるべきです。

自分自身が、そのアイデアによる商品を欲しいと思う。もしくは自分がそのアイデアを気に入って、ぜひやりたいと思う。そうした考え方を会社全体で受け容れ、多くの人がアイデアを出し合うことになると、大きな結果、良好な結果が生まれることになる。

私はその可能性を信じ続けていますし、「やってみなければわからない」ということは実際にあります。それほど、仕事において、体験というものは貴いものです。

「メガネクリーナふきふき」という商品があります。1994年に発売を開始して、もう四半世紀以上もご愛顧いただいているものです。

海外出張に行ったときに見つけためがねクリーナーが、個包装のティッシュタイプで、とても便利に感じ、持ち帰って、帰国後すぐにマーケティング開発部門に渡して、「これ、検討してみてくれ」と指示をしました。

20歳代の経験が少ない若手が、その開発担当になりました。彼なりに市場調査をし、コンセプト調査も行なったうえで、開発会議では、この案件は「ペンディングにしたい」と報告をしてきました。

「市場には液体の滴下タイプのクリーナーが100円ぐらいで売られていて、100回以上使える。だから1回あたりのコストが1円以下になる。今回の案件では1回30円の試算となるため、価格競争力がない」というのが大きな趣旨でした。

 

「まずは、やってみる」ことで、見えてきた課題

調査による判断は有効性のあるものでしたが、そのさいにどうやら、私がイメージしているコンセプトを理解できていないことがすぐに見て取れました。「何もわかっとらんなぁ〜」。本音がつい出てしまいましたが、若手社員ですから、丁寧にわかりやすく説明をしてみました。

「まず、利便性はどうや。これ1枚で、汚れふきが完結するやろ。それがお客さまにとって便利ということや」「滴下タイプは完結せんやろ。拭き取る布やティッシュがいるやろ」「数字ばかり見てるんやないか」「使っていただくお客さまの気持ちをまず考えんとアカン」

私はいつものように、事例を原理原則にあてはめて、要求したり尋ねてみたりするのですが、社長の私がそれだけ言葉を尽くしても、まだ納得していない感じが表情に見えています。

「よっしゃ。いいから、まずはつくってみんかい!」。この一言で、開発はスタートしました。トップダウンがいいか、ボトムアップがいいか。プロダクトアウトがいいか、マーケットインがいいか。実際の経営ではそんな理論の枠組みにとらわれるよりも、その時々に「まずは、やってみる」ことが求められるのです。

開発がスタートしてから、ネックになったのはやはり価格でした。テストでは、私の思惑通り、ご購入者の満足度は非常に高いのですが、再購入意向率が低いという結果が出ていました。要因は価格にあるようでした。

そこで、販売部門が加わる会議で、社長の私から、各エリアの営業責任者に「誰か、売ってきてくれへんか?」と頼んだところ、大阪の営業責任者が「社長がそこまでおっしゃるのなら……」と手を挙げてくれ、わずか3店舗でしたが、テスト販売をすることになりました。

すると、社員にとっては予想外の結果が出たのです。定番商品として棚に並べることを許されるレベルの販売結果を得ることができたのです。

営業部門にとって、売り場で出た結果ほど説得力のあるものはありません。それからは、とにかくこの商品を成功させるのだという思いのもと、お互いが努力を積み重ねていくことになりました。

「紙製では印刷が汚いという意見が出たが、どうするか」「よし、フィルム包装にしよう。しかも1回でなく2回使えるようにしたいな」

「それなら、折りたためるフォルムにしたらどうか」「そうだな。でも待てよ。同時に、拭き取り性を高めることはできないか」「よし、紙でなく不織布に変更だ。エンボス加工もしたほうがいいな」

そうしたやりとりを交わしながら、創意工夫を重ねる社員たちによって仕上げられた新製品は、私が持ち帰った海外の商品とはまさに別物で、新しい価値が付加された製品でした。

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