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中国国防費 問題とすべきは「2桁の伸び」より透明性の向上



2012年03月12日 公開

前田宏子 (政策シンクタンク PHP総研主任研究員)

 2012年度の中国国防費予算案が前年実績費11.2%増し、いわゆる「2桁の伸び」になったことが多くのメディアで報じられた。この「2桁の伸び」は、中国の国防政策に対する懸念を表明する際によく使用される言葉である。実際、中国の国防予算はリーマン・ショックの影響を受けた2010年を除き、20年に渡り2桁成長を続けてきた。中国の急速な軍備増強は地域のパワー・バランスに変化を生じさせ、東アジア地域の秩序を不安定化させる要因になっている。翻って日本の防衛費は、90年代後半から実質削減を続けてきた。日本が中国と同じペースで軍備増強を行うことは財政事情を考えれば不可能であるが、日本は自国の防衛力整備や周辺国との安全保障協力を進めると同時に、中国に対し、周辺国の対中警戒感を低下させるような政策を取るよう働きかけていく必要がある。

 ただし、その際、中国の国防予算が2桁成長を続けているという批判は、中国からみればあまり説得的ではないだろう。中国経済自体が急速な発展を遂げており、中国の国防費の伸び率や財政支出に占める割合が(国防費は公表されている額の2倍はあるのではないかと言われているが、それでも)飛びぬけて大きいというわけではないからである。2012年の中国財政部(省)が示した予算案では、国防費は前年費11.2%増だが、たとえば他にも公共安全費(治安対策)11.5%、教育費16.4%、医療費16.4%、社会保障・雇用対策費21.9%、住宅保障23.1%などの前年費増となっている。さらに、「2桁」を問題とするのであれば、極端な話、9.9%なら構わないのかということにもなろう。イメージに基づく批判は、一般の中国人の反感を招くだけでなく、中国側に反論の隙を与えるだけである。

 問題とすべきは、よく言われていることだが、人民解放軍や中国国防政策における透明性が欠如・不足していることだ。中国の国防建設の目的(戦略)、国防予算の内訳、軍組織の構成・人員、国防に関する政策決定過程などについて不明な点が多いことが、中国の軍備増強に対する他国の心配を招く原因となっている。心配の種類は大きく分けて二つある。一つは、中国の国防建設目的は、対外的に説明している「防衛的」な範囲を超え、もっと野心的な動機に基づくものではないかという疑念。二つ目は、人民解放軍へのシビリアン・コントロール、軍上層部の下層部に対する掌握度など、組織としての軍の管理能力に対する不安である。

 透明性の不足を批判された際、中国側がよく行う反論は、「国防政策については、どの国も情報を完全に公開しているわけではない。アメリカ然り、日本然りである」というものである。確かに、国防・安全保障政策については、どの国にも機密とされる部分はあり、公開される情報も国によって異なる。しかし、中国が公開している情報が圧倒的に少ないという事実は、日本の防衛白書と中国の国防白書を見比べても一目瞭然である。1998年に初めて中国の国防白書が公表され、2009年には国防部がウェブサイトを開設するなど、中国でも少しずつ情報公開が行われるようになっているが、ハード面での軍備増強のスピードに比べると、あまりにも遅々とした歩みと言わざるをえない。

 中国の人々が、外国からの透明度向上に対する要求を不当なものと誤解しないようにするためにも、また情報公開に関し中国側と建設的な議論を行うためにも、日本側では公開されているが、中国では公開されていない項目リストを作成し、その中でも特に優先度の高い(公開が望まれる)情報について、中国に要求していくというのも一つの案ではないかと考えられる。
( *無断転載禁止)

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