親の「どうしてできないの?」が子どもに与える悪影響

大野萌子
2023.04.14 15:05 2023.04.14 15:05

見上げる女の子

人生の幸福は、いかに人間関係に恵まれているかで決まるそうです。そして、人間関係を築くうえで欠かせない人格形成は、およそ10歳頃までに土台ができるといわれていて、その9割が「親子関係」によって構築されるといいます。

それでは、親子関係に悪影響を与える「よけいなひと言」と、信頼関係を深める「わかりあえるひと言」の違いはどこにあるのでしょうか。これまで、カウンセラーとしてさまざまな悩みに接してきた大野萌子氏に、子どものやる気を育てる「声かけ」について聞きました。

※本稿は、大野萌子著『よけいなひと言をわかりあえるセリフに変える親子のための言いかえ図鑑』(サンマーク出版)より、内容を一部抜粋・編集したものです。

大野萌子
公認心理師。産業カウンセラー。2級キャリアコンサルティング技能士。一般社団法人日本メンタルアップ支援機構(メンタルアップマネージャ資格認定機関)代表理事。法政大学卒。日本通運(株)を退職後、学研エデュケーショナルを通じ17年間、2歳から中学生までの学習指導と教育相談に関わる。産業カウンセラー資格取得後は企業内カウンセラーとしても活動。

たった一言で、子どもの「やる気」を育てる

会話する夫婦と子ども

子どもは大人ほど、「時間」というものを意識していません。そのため、「早く」「急いで」と言われても、何をどう急げばいいのかわかりません。

子どもにわかりやすく伝えるためには、「お着替えしよう」「靴を履こう」「シャツのボタン留めようね」というように「レッツ! ○○」と”具体的な行動”まで言葉にすること。

小学校低学年くらいまでは、自分でできないことも多いので、一緒に手伝ってあげるといいでしょう。

×よけいなひと言 「早くして!」
◎わかりあえるひと言 「お着替えしよう」

同じく曖昧な言葉に「ちゃんとして」「ぐずぐずしないで」などがあります。親はそう言えば伝わると思いがちなのですが、「ちゃんと」「ぐずぐず」は言った本人にしかイメージがわからない”感覚用語”。

そのため、子どもは戸惑って何をすればいいかわからず不安になり、何をするにも親の顔色を気にして「指示待ち」するようになります。

それでも、「指示」や「欲求」が漠然としていてよくわからないと、だんだんどうでもよくなって自分で考えなくなります。

場合によっては、「どうせ何をやっても何か言われるんだから」と、最初からあきらめたり、好き勝手なことをしたりするようになることも。

たとえ親子であっても「以心伝心」はありません。

一緒に生活していると「言わなくてもわかるはず」「このぐらいで通じるだろう」と思ってしまいがちですが、すべて”幻想”。

特に子どもは経験値が少ないのですから、何をどうしてほしいのか、具体的な言葉で伝えてください。

なぜやってはいけないのか「理由」を考えさせて

笑顔でタブレットをみる親子

子どもが間違ったことや悪いことをしたときは、「成長のチャンス」。それがなぜ悪いことなのか? なぜやってはいけないのか?「理由」まで考えさせて学びにつなげましょう。

「あやまりなさい」と言われるだけだと、負けず嫌いな子は納得できないまま「あやまればすむんだ」と学習してしまいます。

逆におとなしくて真面目な子は、ただあやまるだけだと「全部自分のせいだ」という思考回路ができることも。そのまま大人になると、他人の理不尽な怒りも重く受け止めてしまうようになります。

ですからまずは、「何が悪かったと思う?」と投げかけて本人に考えさせ、納得できたあとであやまらせるようにしましょう。言い分があるようなら、必ず聞いてあげてください。

×よけいなひと言 「あやまりなさい!」
◎わかりあえるひと言 「何が悪かったと思う?」

お友だちに悪口を言った場合など、「同じことを言われたら○○ちゃんも嫌だよね?」と相手の立場になって考えさせる人もいます。けれども、小学校低学年くらいまでは、まだ他人の気持ちを把握するのは困難です。

それよりも、自分が言ったこと、やったことがなぜ悪いのか、考えを聞いたうえで、間違いがあれば訂正してあげましょう。

子どもに「反省して!」と強要するのは”支配欲”の表れ。相手をコントロールしたい人にとって子どもは1番服従させやすい対象なのです。

エスカレートすると主従関係になってしまい、ときには虐待につながる可能性もあるので注意しましょう。