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北朝鮮のミサイル発射 : 水面下のわずかな変化



2012年04月16日 公開

前田宏子(政策シンクタンク PHP総研 主任研究員)

 北朝鮮の長距離弾道ミサイル(北朝鮮は人工衛星と主張)発射は失敗したが、今回の件に関し、日本の防衛体制や危機管理体制で改善すべき点がないか、北朝鮮が実施するかもしれない核実験を防ぐためにどのような働きかけをすべきか、努力も空しく防げなかった場合の対応をどうするか、急ぎ周辺国とも協議しながら準備しなければならず、まだまだ緊張の解けない日は続く。

 ミサイル発射の失敗によって、北朝鮮が核実験を強行するのではないかという見方があるが、仮に成功していても、その危険はあっただろう。北朝鮮の過去の行動パターンから推測すると、国際社会の反対にもかかわらず核実験を行う可能性が大きいように思われる。ただ、過度の期待は禁物だが、北朝鮮の指導者交代がひょっとするともたらすかもしれない変化については注視する必要がある。

 たとえば今回、北朝鮮としては異例なことに、「衛星」発射失敗の事実を認めた。海外から多くの専門家や記者を招いていた手前、隠すのが難しかったという事情もあるのかもしれないが、国営の朝鮮中央テレビも失敗のニュースを報道した。また、北朝鮮指導部は、これまで“改革開放”というアイデアに対し、現体制を揺るがすことになるかもしれないと否定的な姿勢を示してきたが、新しく指導者となった金正恩は、資本主義論議を容認し経済改革に意欲を示しているという情報もある。(毎日新聞、4月16日)。

 日本を含めた国際社会は、今回そして今後もおそらく生じる北朝鮮の挑発行為に厳しい姿勢で臨むべきである。ただし、交渉である以上は、北朝鮮が望むもの、具体的には食糧やエネルギー支援、国交正常化などのアメも用意しなければならない。しかし、単に次の核実験までの時間を引き延ばすことにしかならない程度の北朝鮮の譲歩に対し、安易に譲歩すべきではない。その点について国際社会が団結できない限り、挑発、譲歩の悪循環を止めることはできないからだ。

 中国は、2月に米朝合意ができた直後の北朝鮮のこの行動に、またも面子を潰された思いでいるだろう。北朝鮮に使節を送り中国側の「憂慮」を伝えたり、北朝鮮で開催される行事に招待されているより格下の人物を送ったりして、不快感を示している。さらに、胡錦濤国家主席は、3月にソウルで開催された核サミットや外国首脳との会談において、北朝鮮に対し通常より厳しい表現を用いて憂慮を示しているが、国際社会からの厳しい視線を気にしていると同時に、率直に北朝鮮に対する不満を示しているのだろう。中国も国連安保理において、北朝鮮のミサイル発射を強く非難し、従来の制裁を強化する内容の議長声明案を採択することに同意した(16日報道)。

 他方、中国は北朝鮮に実際に大きなダメージをあたえる食糧・エネルギー支援をやめることはまずやらないだろうし、実際に制裁を課すことには否定的である。(もし、北朝鮮が核実験を行った場合は、やむを得ず制裁に同意するかもしれないが、やはり厳しい措置には反対するだろう。)中国がもっとも恐れているのは北朝鮮が不安定化し、北朝鮮人が中国国内に大量に流れ込んでくることである。

 とはいえ、一般の中国民衆の北朝鮮に対する不満は募る一方で、最近では知識人層でも中国の対北朝鮮政策を見直すべきと考えている人が少なくない。中国人からみた北朝鮮のイメージは、経済成長のための努力をせず、中国から多大な支援を受けながらその面子を潰し、指導者が世襲の独裁国家、というものである。また、中国の知識人が自国の北朝鮮政策について批判をしにくいのは、胡錦濤政権が現在の北朝鮮の政治体制と金正恩の継承についてお墨付きを与えてしまったせいもある。ある中国人研究者は「党のトップが認めてしまったことを、正面から批判するのは難しい」と話していた。

 中国に対し、北朝鮮へ圧力をかけるよう要求することは、国際社会からの圧力を認識してもらうため必要である。しかし、それだけでは中国の政策は変わらない。北朝鮮を何とかしたいと考えている人々と、それぞれの国益と落としどころについて率直に話し合うことも必要である。

 

phpsouken.jpg政策シンクタンク PHP総研 Webサイト(PCサイト)
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