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ジェットスター・ジャパン 鈴木社長の “成功する働き方”

2012年05月07日 公開

鈴木みゆき (ジェットスター・ジャパン〔株〕代表取締役社長)

『THE21』2012年5月号より》

問題解決に向かって摩擦や議論を恐れない

恐いもの知らずで新しい世界に飛び込む

 格安航空会社(LCC)が国内線の運航を開始する今年、日本にも本格的なLCC時代が到来するといわれている。そのうちの1社、ジェットスター・ジャパンを率いるのが、鈴木みゆき社長だ。新たなビジネスチャンスをつかむには、先入観を捨てて、新しい価値観の創造がカギになると語る。

 「私たちのビジネスは規制緩和が大きなきっかけですが、私たちがやろうとしているのは新しい価値観の創造です。航空料金を下げることで、これまで飛行機を使ってなかった人たちも飛行機を使ってもらう。バスや電車を利用していた人にも、飛行機を移動の選択肢の1つだと気づいてもらう。潜在需要を掘り起こし、市場を拡大していくには、先入観は邪魔になります。新しい目線で物事を捉えていく姿勢が大切だと思います」

 規制緩和や市場の変化は新たなビジネスチャンスとわかっていても、新たなビジネスをつくり出すのは苦手だというビジネスマンも多い。

 「その苦手意識は、新しい挑戦に対して臆病になっているからではないでしょうか。ぜひ恐いもの知らずになって、新しい世界に飛び込んでほしいと思います。もう1つ大事なことは、失敗を恐れないこと。これから挑戦することは、必ずしもすべて成功するとは限りません。そう思うだけで、少しラクに挑戦できるのではないでしょうか。

 私自身は物事をシンプルに考えるため、あまり失敗を恐れないタイプですが、その代わりたくさん失敗してきました。一度はモバイル決済の会社を自分で立ち上げたものの、利用者の伸び悩みから資金繰りが悪化し、会社を売却せざるを得なかったこともあります。苦渋の想いをたくさん経験してきましたが、失敗こそは成功の糧だと信じています」

明らかにダメなものは切り捨てる潔さをもつ

 失敗は失敗のままで終わらせない。失敗を次の成功の糧にしてきたことが、鈴木氏の現在につながっているといえる。

 「失敗には必ず原因があるので、その原因を検証し、次の成功につながるよう行動することが大切です。自分自身のプロジェクトを振り返ってみると、初期段階のコミュニケーション不足が失敗の原因になっていることがあります。どんな仕事も自分一人だけで成し遂げることはできません。周囲の協力を得るためには、まずは私自身がチームメンバーに信頼されること、そしてチーム内で情報を共有し、全員を同じベクトルに向かわせることが課題だと感じています。

 ジェットスター・ジャパンの立ち上げの際にも、この過去の教訓を生かすように行動しました。社員75人全員が、できるだけ早い段階で会社のビジョンを理解し、共有できるよう、互いに確認しながら進めていったのです」

 ジェットスター・ジャパンのようなグローバル企業に限らず、国籍や民族、考え方や価値観の違う人たちと一緒に仕事する機会は増えている。ビジネス人生の大半を海外で勤務した鈴木氏は、「日本人ならではの謙遜さは、ビジネスシーンでは美徳にはならない」と指摘する。

 「『若輩者ですが』などといった日本語表現が示唆するように、日本人は何かと謙遜しがちです。謙遜は日本では美徳とされているかもしれませんが、外国人には通用しません。ビジネスにおいては、日本人はもう少し積極的に自分たちのよさをアピールし、組織にどのように貢献できるのかを明確に伝えることが必要だと思います。

 そのためには、摩擦や議論を恐れないでほしいのです。日本文化には物事を円満に収める慣習があり、それがうまく機能する場合もありますが、ビジネスの場面では摩擦や議論のなかから新しいアイデアや発想が生まれてくることも多いからです。

 お互いに意見をぶつけ合う議論を苦手に感じる日本人も多いかもしれません。しかし、こう考えてみてはどうでしょうか。相手個人を攻撃するのではなく、問題を一緒に解決するという姿勢で臨むのです。そうすれば健全な形で議論を進めることができるはずです。この問題はどう解決するのか、問題解決にはどのような手段があるのか。オープンに議論することで、問題認識をチーム内で共有することもできます。当社にはオーストラリア人と日本人が多いのですが、かなり活発に議論しています」

 ビジネスは試行錯誤の繰り返し。さまざまな方法をトライして、成功の可能性があれば改善し、うまくいかなければ捨てるという割り切りも必要だという。PDCAをうまく実践していくためのコツはあるのだろうか。

 「まずは、目標を明確にします。このPDCAで何を成し遂げたいのか、その目標があいまいなままでは、PDCAはうまく機能しません。そして目標を掲げたら、その目標をスタッフ全員と共有し、つねに効果検証します。ここでいう『つねに効果検証』とは、1週間ごとのようなスパンではなく、1時間ごとの超短期スパンです。とくに私たちのような消費者相手の企業は、市場の変化に迅速に対応することが求められます。

 たとえば、私の前職である通信会社では、契約加入者の勧誘のためのテレマーケティングの内容を、随時集計される契約加入率と照らし合わせて、検証、改善を繰り返していました。どのような話し方ならお客様は興味をもって聞いてくれるのか、PDCAを素早く回転させ、その結果を迅速に反映することに集中していたのです。

 このとき、機能しないやり方は即座に切り捨てることがポイントですが、日本企業には、成功しないものを捨てることに躊躇する傾向があるように感じます。せっかく計画したのだからもう少し試してみたい、という気持ちがあるのかもしれません。しかし、こうした躊躇が企業にとっては命取りです。失敗したら、すぐに開き直って次に進む。PDCAはスピードが肝心です」

変化は恐怖ではなく自分白身への刺激

 60歳定年の時代とは違い、いまは生きているあいだは働き続けたいという人が増えている。50代になっても伸び続ける人は、どのような意識をもっている人なのだろうか。

 「年齢に関係なく、好奇心旺盛な人が伸び続けるのだと思います。新しいチャレンジに立ち向かって、それを生きがいに感じることができれば、つねに若さを保つことができると思います。

 私にジェットスター・ジャパンの社長就任の声がかかったときも、最初は半信半疑でした。航空業界とは無縁だった私の経歴では難しいだろうと思い、ジェットスターグループCEOのブルース・ブキャナン氏にダメもとで会いにいったのです。ところがブキャナン氏は、『新しいビジネスを日本に定着させるには、この業界に染まっていない人のほうが斬新なアイデアが期待できる』と。その言葉を聞いて、この仕事をぜひやらせてほしいと思いました。私にとって変化は恐れるものではなく、好奇心への心地よい刺激です。好奇心さえあれば、何歳になっても市場の変化を追い、新たな挑戦ができると信じています」

 鈴木氏は、好奇心のチャレンジ精神のおもむくまま、これまでのキャリアを積んできた。

 「今回の取材のテーマのように、10年後を計画することが大事だといえるといいのですが、私の場合はまったくそうではありません。いまから10年前、自分が航空業界に転職するなど考えてもいませんでしたから。冒頭にも申し上げたとおり、私のこれまでのキャリアは、恐いもの知らずに突き進み、目の前のチャンスを必死につかんできた結果に尽きます。

 好奇心をもつことのほかに、もう1つ大事にしてきたことは、周囲の状況に柔軟に対応する姿勢です。チャンスが訪れたときに、そのチャンスを開花させるためにどうすればいいか、ということは常に考えてきました。会社や業界が変わっても、さらに働く国が変わっても、与えられた場所で自分がどう貢献ができるのかを考える。この柔軟な視点の切り替えが、自分のキャリアを新しい世界へと広げていくのかもしれません」

<取材構成:前田はるみ/写真:永井浩>

 

鈴木みゆき

(すずき・みゆき)

ジェットスター・ジャパン(株)代表取締役社長

 1960年生まれ。幼少期と学生時代のほとんどを英国など海外ですごす。大学卒業後、ロイターに入社。世界各地で勤務したのち、起業などを経験、2002年、日本テレコム(株)専務執行役員兼コンシューマ事業本部長。インターネットプロバイダー「ODN」事業など個人向けサービスを統括。2006年、KVH社長。2011年より現職。
 

THE21

 

BN



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