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豆魂に出逢った…京とうふ藤野・藤野清治社長



2016年03月11日 公開

櫛原吉男(マネジメント誌「衆知」編集主幹)

小さな豆腐にも大きな魂

「米櫃に頭を突っ込んで寝ているわが子の姿を見て、ホンマ涙が出たわ」と笑いながら昔話を語った。

仕事で遅くなり帰宅した時の話だ。当時は朝早くから豆腐づくりをして、夜は豆腐料理専門店をやっていたから、子どもの世話まで手が回らない。親の帰宅が遅くなり、お腹がすいて仕方なかった幼子は、米櫃を開けて素手でご飯を食べてそのまま寝てしまったのだ。

「嫁はんは、妊娠中で上の子を背負い車で豆腐の配達をしとった。お腹が大きいのでシートベルトが締められん。その時、警察官に捕まった。しかし、その姿を見て何も言わず見逃してくれた。よっぽど悲壮に見えたんやろな」

一方、私は東京の百貨店に商品を置いてもらうため、日参していた。百貨店の仕入れ担当者を昼食に誘ったのはいいが、お金がなくて「自分は先に済ましたから」といって水を飲んでいた。京都駅に着いたら、財布が空で家に帰るバス代さえこと欠く有様だった。仕方なく、嫁はんに迎えに来てもらったのも一度や、二度ではなかった。

「自分は2代目だが、気持ちは1.5代目のつもりだった。親父は、根っからの職人、いいものさえ作ればそれでいいと思っていた。だから、葛藤の連続。従業員も本当に往生したと思うでホンマ」

軌道に乗るまでは必死だった。

「朝の早い豆腐屋の仕事はシンドイ。可愛い娘は嫁にはやらへん」と嫁はんの両親に初めて挨拶にいった時、言われた。

「内心、今畜生と思った。それほど、豆腐屋の社会的地位は低かった。俺の息子には、こんな思いはさせないと心に誓った。こままでやってこられたエネルギーは、ハンディキャプと劣等感だったかもしれない」

「とことんやって、ダメなら、倒産すればいい」と笑う。

「こんな店にしたい、こんな商品作りたい」と寝床で嫁はんに夢を語った。

「嫁はんは、同じ夢を見る同夢(ドウム)やな」しんみりと語る。

「小さな豆腐にも、大きな魂」と自らを豆魂と呼ぶ。

自分で人生の感動ストーリーを作り上げている自信にあふれていた。

 

※京とうふ藤野では、とうふの表記を「豆腐」でなく「豆富」としているため、文中の関連箇所ではこれに従いました。



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