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選手に教える前に指導者の意識を変える~白井一幸・プロ野球コーチ

2017年09月27日 公開

マネジメント誌「衆知」

コーチング

ニューヨーク・ヤンキースで学び、北海道日本ハムファイターズの二軍監督となった白井一幸氏が、まずはじめに着手したこととは?
 

チームを強くするために、まずコーチを改革

2001(平成13)年、日本ハムファイターズ(当時)の二軍監督になった私が取り組んだのは、育成方法の改革でした。ただ、育成の対象としたのは、選手というより指導者であるコーチたちです。長年一軍が低迷しているチームを強くするには、二軍の指導方法から変えるしかないと考えたのです。

それまでの長い低迷期の間、指導者や選手たちが頑張っていなかったかといえば、そんなことはありません。十分頑張っていたはずです。にもかかわらず低迷が続いているということは、頑張り方が間違っているのだと私は考えました。さらに言えば、チームとして満足な結果が残せないのは、選手ではなく指導者の責任です。

では、指導方法のどこが間違っていたのか。それは、それまでの監督やコーチが選手に対し「怒る」「教える」「やらせる」という指導をしていたことです。

選手が犯したミスに対して怒るコーチは、「厳しいコーチ」として評価されます。なぜミスをしたのかを教えると、「理論的なコーチ」という定評がつきます。そして、ミスしないように練習をやらせると、「仕事熱心で情熱的なコーチ」と、やはり高い評価を受けます。でも、これらは指導者の三悪だと私は思っていました。

なぜか。ミスをした時、誰が一番ショックかといえば、選手本人です。普通の人間であれば反省もするし、打開策を講じようとするでしょう。そんな選手の心情を無視して怒り、わかりきっている原因を教え、「こうしろ」とやらせる。すると、選手は萎縮し、自分の頭で考えることをしなくなり、義務感から練習することでエネルギーレベルが下がります。つまり、そういうコーチは指導者らしくみえて、実は指導者がやるべきことをやっていないのです。そこで私は、選手のプレーの結果に対して「怒らない」ことを実行し、コーチたちにも守ってもらうことにしました。エラーをして戻ってきた選手を「ドンマイ」と励ます。これには、長年怒ることに慣れていたコーチは戸惑ったと思います。口ではそう言っても、顔は明らかに怒っていたでしょう。そのうちコーチたちから「怒らないとストレスになる」という声が聞こえてきました。

でも、コーチが怒るのを我慢すれば、選手は何かを感じるはずですし、萎縮せずに伸び伸びとプレーするようになります。さらに、「教える」「やらせる」ことをやめれば、選手はミスの原因を自分で考え、みずから改善しようとすることでエラーが減り、選手と指導者との信頼関係も強くなっていくのです。

ただ、そうしたやり方ですぐに結果が出たわけではなく、私の監督就任一年めのチームは、100試合で36勝しかできませんでした。そのためファンからは「選手を甘やかすな」と野次られ、同様の批判の投書がたくさん球団に届きました。批判は身内からもありました。育成方法を改革するという方針は、フロントには承認されていたものの、それを球団内の全員が理解していたわけではありません。チームOBからも、練習の内容や方法などすべてを批判され、私は毎日逆風にさらされていました。

だからといって、やり方を変えたわけではありません。私は「外からは今までと違うやり方に見えているのだ」と、前向きにとらえました。古いものを壊して新しいものをつくり上げる時には、批判はあって当然だと思います。批判を怖がっていては何もできないし、われわれにとっては何もしないことがそれまでの失敗でした。確かに、今となってはよくあんなことができたなと思いますが、当時は、「本当にチームが強くなるためにできることはすべてやる」という強い思いから、がむしゃらにやりました。
 

白井一幸(しらい・かずゆき)
1961年生まれ。駒澤大学卒業後、1983年ドラフト1位で日本ハムファイターズ入団。’91年には最高出塁率とカムバック賞を受賞するなどし1996年引退。現在、北海道日本ハムファイターズ内野守備走塁コーチ兼作戦担当。

※本記事は、マネジメント誌「衆知」掲載〈白井一幸の組織改革と人材育成はプロ野球に学べ!第2回》より、一部を抜粋編集したものです。

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