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「好相行」と十二年籠山行~宮本祖豊・天台宗延暦寺円龍院住職



2018年02月08日 公開

マネジメント誌「衆知」PHP言志録

比叡山
 

日常を離れ、自分と向き合う

比叡山には、3つの地獄があるといわれています。その一つが、浄土院の掃除地獄です。

浄土院には伝教大師(最澄)の御廟があり、比叡山で最も清らかな聖地とされるため、徹底した掃除を行ないます。しかし、山中にあるので次々と枯葉が舞い落ち、掃いても掃いても終わることがありません。地獄とされる所以です。

浄土院で仕える僧侶は侍真職といわれますが、12年ものあいだ山に籠って尽くすことから、そのお勤めは「十二年籠山行」と呼ばれます。籠山中、境内から一歩たりとも外に出ることは許されず、たとえ病気になっても病院で治療を受けることはありません。新聞やテレビ、インターネットを見ることも許されないので、外界とは完全に遮断された世界となっています。

またそれ以前に、侍真職になるには、「好相行」という荒行を満行していなければなりません。好相行とは、3000もの仏様の名前を唱えながら、五体投地の礼拝を行なうもの。途中、横になって休むことは許されず、不眠不臥での行となります。

この行では精神も肉体も極限の状態になりますが、仏様の姿が見えるまで終わりません。私の場合、命の危険があるとドクターストップがかかり、2度、行を中断する羽目になりました。

しかし、比叡山には「行不退」の掟があり、断念するなら死か還俗を選ばなければなりません。3度目の時に、やっと私の目の前に阿弥陀仏がお姿を現されました。

ただ、それがはたして本物なのか、先達の僧侶に報告して認められなければなりません。心の目で見えるなら、目を開いても閉じても仏様が見えているはずです。それが立体的で色彩もあり、光り輝く生きたお姿であれば、本物と認められます。この好相行と十二年籠山行を満行するのに、私は20年の歳月を要しました。

そもそも私は北海道出身で、実家はお寺でもありません。京都大学の受験に失敗して浪人生活を過ごす中で、将来はサラリーマンではなく、徳を積む人生を歩みたいという思いが強くなりました。

そんな時に出合ったのが、中国の天台大師智顗が書いた『摩訶止観』という書物でした。坐禅の指南書ですが、文章は格調高く哲学的で、大変感銘を受けた私は、この本を一生かけて究め、実践し、徳を積みたいと思い至ったのです。

両親は出家に反対でしたが、22歳の時、書き置きを残して家出しました。懐に比叡山までの片道分の旅費があるだけでした。もちろん、何のツテもありませんから、得度受戒するまでには紆余曲折がありました。

今、私は居士林で所長を務めさせていただいています。居士林というのは在家の方々の修行道場で、主に企業の新入社員の研修を行なっています。内容は、坐禅止観、写経、法話、掃除や根本中堂の参拝など。もちろん、食事をいただく作法も立派な仏道修行です。

現代人は、インターネットなどからの情報に振り回され、日々、不安を抱きながら暮らしています。そんな日常から離れ、静かに坐禅をしながら自分と向き合うことで、普段の生活の中で見失っている大切なものに気づいてもらえたらと思っています。
 

※本記事は、マネジメント誌「衆知」2017年11・12月号、特集「感動を生み出す」より一部を抜粋編集したものです。



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