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人間とロボットは、どのように共存しうるのか

2018年07月24日 公開

丹羽宇一郎×石黒 浩

丹羽宇一郎 × 石黒 浩
 

丹羽宇一郎(早稲田大学特命教授、伊藤忠商事名誉理事)
にわ・ういちろう*1939年愛知県生まれ。名古屋大学法学部卒業後、伊藤忠商事入社。1998年社長就任。1999年約4000億円の不良資産を一括処理し、翌年度の決算で同社史上最高益(当時)を記録。2004年会長就任。内閣府経済財政諮問会議議員など要職歴任後、2010年民間出身では初の駐中国大使に就任。現在、早稲田大学特命教授、伊藤忠商事名誉理事、公益社団法人日本中国友好協会会長。

石黒 浩(大阪大学大学院基礎工学研究科教授)
いしぐろ・ひろし*1963年滋賀県生まれ。1991年大阪大学大学院基礎工学研究科博士課程修了。京都大学大学院情報学研究科助教授、大阪大学大学院工学研究科教授等を経て、2009年大阪大学大学院基礎工学研究科教授。2017年より大阪大学栄誉教授。ATR石黒浩特別研究所客員所長(ATRフェロー)。専門はロボット学、アンドロイドサイエンスなど。最先端のロボット研究者として世界的に注目されている。

「これからはロボットによって人間が仕事を次々と奪われ、やがて支配されるのでは……」。人工知能やセンサー技術などの開発で、人間を凌ぐほどの知性や能力を持ったロボットが続々と登場しつつある今、そんな悲観的な声も少なくない。はたして、ロボット技術の進化は、産業社会にどんな変化をもたらすのだろうか。人間とロボットは、どのように共存しうるのか。国際的なビジネスの舞台で活躍し続け、人類の未来に関心を寄せる丹羽氏と、知能ロボット研究の第一人者である石黒氏が、ロボット社会の将来展望を語り合った。

取材・構成:片岡義博
写真撮影:岡村啓嗣
 

人間の仕事は人間に向かっていく

丹羽 ロボットはフォーマットの定まった作業であれば、休まず、間違えずに行なうなど、人間よりもずっと優れた能力を発揮します。ただし、今のところはインプットされた情報に対するアウトプットしか出せませんね。今後、人間とロボットの仕事は、どのように分かれていくのでしょうか。

石黒 これまでも単純な仕事は徐々にロボットに置き換わってきましたし、記憶能力、計算能力は人間よりもロボットのほうがはるかに優れています。ものづくりの現場においても、機械の制御・調整はますますロボットに代わっていくでしょう。機械では限界があったいわゆる「匠の技」も、最近はセンサー技術によって、かなり再現することができます。

サービス業でも同様です。ファストフード店のようにマニュアル化されている仕事も多いので、それらはすべてロボットにもできるようになります。

丹羽 医療の現場でも、「ダヴィンチ」という手術支援ロボットが導入されていますね。

石黒 臨床医学や法律など、要するに機械的、作業的に進めている分野は、ロボットに置き換わっていくでしょう。

また、簡単なカウンセリングであれば、ロボットのほうが適しているかもしれません。誰しもプライバシーを他人に話すことには抵抗がありますから。実際に、進路や就職といった問題を直接人間に話す場合と、間にロボットを入れて遠隔操作で話す場合を比べると、ロボットを入れたほうがはるかに効果は高いんです。

丹羽 ロボットは感情を差し挟まずにフェアに判断してくれますからね。

そうなると問題は、人間の心や脳にかかわる部分で、直感、感性、感覚といったものをロボットが持ちうるかどうかですね。この部分はロボットには難しいと見る専門家が少なくありません。

石黒 確かに、その部分では人間の活動範囲がどんどん広がっていくでしょうね。今の感覚では仕事といえないような活動が、今後増えていくと思います。

元来、感性や直感にもとづくクリエイティブな活動は、いっぱしの仕事とは見なされませんでした。アーティストなんて、昔は自分の力だけでは食べていけなかった。でも、今は十分に仕事として成立しています。

ですから、これからは仕事の中身も質も、さらには仕事の概念すら変わっていくかもしれません。言い方を換えれば、今の概念でいうところの仕事はすべてロボットにやらせて、人間はクリエイティブな活動に時間と能力を使ったほうがいいし、そうなると思います。

そもそも有機物からなる人間は、栄養を必要としたり病気にかかったりするので、自分の身体を維持するために必要なルーチンワークをしてきました。しかし、これからはロボットがそれを肩代わりしてくれるんですから、人間は人間にしかできないことをしていけばいい。事実、コンサルティングや弁護士など、人と人が直接かかわる仕事はどんどん増えています。だから、人間の仕事は全体的に人間に向かっていくと思います。

丹羽 そのクリエイティブな仕事は、時代によって要請が異なってくるでしょうね。重要なのは、人間の想像力によってそれを広げていくことです。あるいは人間の脳そのものを研究して、人間の持つ機能と可能性を追究しなければいけないと思います。

石黒 まさにその通りです。仕事は脳や心の方向にもっとストレートに向かうと思います。

私の仮説では、50年経ったら社会が人間に求める能力がガラッと変わるので、大学の学部における今の偏差値もすべて入れ替わります。今、一番偏差値が高いのは医学部で、次が法学部です。でも医学部と法学部の勉強は、ほとんどが知識の記憶です。それなら、全部ロボットにやらせたほうがいい。

一方、教育学部などは偏差値がそれほど高くありませんが、人間を教育するというのは、一番難しいことですよね。つまり、今の大学の学部における偏差値が示しているのは、ロボットに求めている性能と同じ評価であって、人間としての能力の評価ではないということです。だから50年経ってロボットが普及すれば、偏差値は全部入れ替わると思います。

丹羽 なるほど、教育分野の先生が一番人間らしい仕事をすることになるかもしれませんね。会社経営も人間を最大の資産として扱うわけですから、教育分野と同じです。人間をどのようにして育て、活かすかが、今後ますます問われることになるでしょう。

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ロボットや技術を通して「人間とは何か」を問う >



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