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松下幸之助と歩んだ歴史を受け継ぎ、次世代へ伝える~平岡常男・平岡電気会長

2018年08月07日 公開

マネジメント誌「衆知」―幸之助さんと私

平岡常男・平岡電気会長
 

平岡常男・平岡電気株式会社会長
ひらおか・つねお*1938年福岡県久留米市生まれ。大阪外国語大学でロシア語・ソ連学を学ぶ。大学卒業後、父親の尊敬する丹羽正治氏が社長をしていた松下電工株式会社に入社。同社で営業企画課長を経験したのち、’76年に家業を継ぐために帰郷し平岡電気株式会社に入社。’93年より社長、2010年より会長を務める。

パナソニックの創業当初から絆を深めてきた九州随一の販売会社・平岡電気の平岡常男会長。3世代にわたって松下幸之助と直に接し、垣間見てきた松下哲学について語っていただいた。

聞き手:渡邊祐介(PHP研究所 経営理念研究本部 本部次長)
構成:高野朋美
写真撮影:河本純一
 

一流のブランドを築くために

――非常に近い距離で幸之助と接しておられたということですが、交流の中で松下哲学を感じるようなエピソードはありましたか。

平岡 昭和の初期、電球業界ではマツダランプが全盛期を迎えており、最もブランド力がありました。他社が10〜25銭で売っているのに対し、マツダランプは36銭。そんな中で松下さん(松下電器、現パナソニックのこと。以下同)が電球を売り出されたのですが、幸之助さんは「36銭で売ってくれ」と、あくまで高価格帯にこだわられました。

ところが、その頃の松下商品は、まだ品質が不安定でした。泣き所は2カ所、一つは口金とガラスの接合部、もう一つはフィラメントです。口金とガラス部は素材が違うためにすぐ外れるし、フィラメントはちょっとした振動で寿命が尽きてしまう。そこがマツダランプとの品質差を生んでいました。でも幸之助さんは、「改良して立派な商品にするから、36銭で何とかがんばって売ってほしい」と販売会社に頼んでおられました。

その頃、私の父は幸之助さんと一緒に九州各地に足を伸ばし、商品を売り込んで、お客様の生の声を聞いて回っていたそうです。この時、父は「36銭という高値では無理や。お客さんだってそう言っている」と幸之助さんに訴えたそうですが、「売り値だけは下げないでくれ」と、頑として値下げを拒まれます。

幸之助さんはわかっておられたんでしょうね。一度値段を下げたら、ブランド力を失ってしまい、二度と一級品にはなれないことを。だから、商品が改良されるまで、辛抱して36銭で売ってくれと言い続けたんでしょう。

――昭和40年代にドイツでナショナル電池を売り出す際も、幸之助は「値段だけは決して下げてはならない」と指示したそうです。松下哲学はずっと貫かれているのだと感じました。

平岡 シャネルは高いからシャネルであって、安いと誰も買いませんからね(笑)。あの時代に、ブランド力というものをすでにわかっておられたところが、幸之助さんらしいところです。

「トップみずから新商品に触る」というのも、幸之助さんから受け継がれた松下哲学の一つでしょうね。私は昭和26(1951)年に松下電工に入社し、その3年後にキーソケットを製造する部門に配属されました。当時、キーソケットは松下にとって重要な商品で、高品質なものをつくろうと研究に研究を重ねていました。

その指揮をとっていた事業部長とともに試作品を持って、当時の松下電工社長だった丹羽正治さんのもとへ決裁をもらいに行ったのを覚えています。

丹羽さんは試作品を見ると、「ちょっとペンチを持ってこい」と言って、内部まで細かく見てくださいました。その頃の競合他社は東芝と神保電器だったのですが、松下さんより神保電器のほうが品質がよく、スイッチの歯切れもよかった。丹羽さんはそれを非常に気にされていて、試作品を自分で触ってみては、「スイッチの歯切れがだいぶよくなったな」などと言っておられました。

私は、商品を隅々までご覧になる丹羽さんを非常に尊敬していました。競合他社にも立派な社長さんはおられましたが、商品をここまで細かく見る社長はまずいないだろうと。そんなトップのもとで働けることを、誇りに思っていました。

父も私と同意見でした。松下電工は、松下電器産業から見れば子会社だったかもしれませんが、父は「丹羽さんこそが、幸之助さんの一番弟子や。俺にはよくわかっているんや」と常々言っていました。

その言葉が証明されたのは、父の葬儀の時です。幸之助さんはだいぶご高齢だったので、葬儀には出席されませんでしたが、代わりに当時の松下電器産業社長の谷井昭雄さんと、松下電工社長の丹羽さんが来てくださいました。そして、丹羽さん、谷井さんの順番で席につかれたんです。それを見た時、「ああ、親父が『丹羽さんが幸之助さんの一番弟子や』と言っていたのは本当やったな」と思いました。

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