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「スマート・エイジング 」で高齢者の消費変化に対応する~シニアビジネス成功の鍵とは?

2019年09月02日 公開

村田裕之(東北大学特任教授・村田アソシエイツ代表)

シニアの消費は年齢では決まらない

また、50代の人はこうで、60代の人はこうというように、シニア消費は年齢で決まると思っている経営者が多いのですが、それも誤解です。シニアの消費は変化で決まります。自分や自分の周囲に何かの変化が起きた時に、新たなニーズが発生するのです。

その一つは、「自分の体の変化」です。例えば、4、50代ではまだ若い頃の食欲が残っている一方で、基礎代謝は落ちています。運動不足な上に何かとつきあいも多いため、つい食べすぎてしまい、「メタボ」になる人が多く見られます。

しかし、逆に70代以降では低栄養が問題になっていて、加齢や疾患で筋肉量が減少して筋力や身体機能が低下するサルコペニアになると、要介護状態に陥りやすくなります。そのため、「高齢者ほど肉を食べたほうがいい」と言う医師も少なくありません。

また、退職など個人の「ライフステージの変化」も大きく影響します。特に仕事を辞めると収入が激減するので、「ダウンサイジング消費」が起こってきます。

そしてもう一つが、家族のライフステージの変化で、まず起こりうるのは親の介護です。また奥さんから見ると、旦那さんの退職は大きな変化である一方、奥さんの子育て終了という変化をきっかけに、旦那さんの消費行動が変わるということも当然あります。お子さんの就職や結婚、お孫さんの誕生もこうしたライフステージ変化の一つです。

これらの変化が、シニア市場の動向を左右する大きな要因となっているのです。
 

「3K不安」の解消と「スマート・エイジング」

シニアビジネスの基本は、シニア消費者の「不」の解消です。「不」とは「不安」や「不満」「不便」を意味します。なかでも健康不安、経済不安、孤独不安という「三大不安」が深刻で、私はこれらの頭文字を取って「3K不安」と呼んでいます。

この三つの不安はそれぞれ密接にかかわり合っていて、例えば病気になって動けなくなったらお金がかかり、孤独な生活を強いられます。

このように、年を取るにつれ、私たちの体や心は様々な面で変化します。しかも、そうした変化は、私たちにとって辛いことが多いのが現実です。だからこそ、変化に賢く対応する生き方とは何かを考え続け、選択していくことが大切になります。ですから私は、いくつになっても成長できる「スマート・エイジング」の考え方を提唱しています。

「スマート・エイジング」のために必要な四つの条件は、脳を使う習慣、運動する習慣、バランスの取れた栄養、そして人と交わる習慣、つまり社会性です。

シニアが退職するとこの四つの条件が次第に失われます。会社を辞めると家からあまり出なくなり、今日は一日誰とも話さないということも日常茶飯事になって社会性が低下します。配偶者に先立たれると店屋物やコンビニ食ばかりになり、栄養バランスが偏ります。家にこもり気味だと運動不足で足腰が弱まります。そして家でテレビばかり見ているようになると、脳を使う習慣が減り、認知症予備軍になってしまいます。

こうした事態を防ぐには、シニアが社会とのかかわりを保てるような生活環境を整えることが欠かせません。逆に言うと、シニアに先の四条件を維持する仕組みを提供するサービスや商品が、企業にとって大きな狙い目になるのです。

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