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葵祭をもっと楽しむ

2015年05月12日 公開
2023年10月04日 更新

『歴史街道』編集部

こんにちは。今日は平成27年(2015)5月12日(火)です。

狭い会議室での編集部員全員参加の編集会議の後でインフルエンザを発症、部内を恐怖に陥れたのは、私(立)でございます。何とか復帰いたしましたが、インフルエンザは5月にも流行することがあるそうで、皆さん、お気を付けくださいませ。

今年のゴールデンウイークは京都の家におりましたが、毎日のようにニュースで紹介されていたのが、「葵祭」の前儀についてでした。今回はこの前儀についてご紹介させていただきます。

葵祭のクライマックスは、5月15日に行なわれる「巡行」です。京都御所から下鴨神社・上賀茂神社へ新緑の都大路を、総勢500人を超える優雅な行列がねり歩きます。

前儀はまず、5月1日に「競馬会足汰式(くらべまえあしぞろえしき)」が上賀茂神社であります。5月5日に行なわれる「賀茂競馬(かもくらべうま)」に先立ち、馬の組み合わせを決めるなどの儀式です。

5月3日には、「流鏑馬神事(やぶさめしんじ)」が行なわれます。下鴨神社のある糺の森の馬場で、公家の装束を着用した射手が疾走する馬の上から的を射ぬきます。公家の装束を着用しての流鏑馬は他では見ることができません。

そして、5月4日には「斎王代禊の儀」が行なわれます。斎王代と巡行で女人列に参加する40人の女性が、今年は下鴨神社の御手洗池(下鴨神社と上賀茂神社の1年ごとの交替です)に手を浸して身を清めます。今年の斎王代様は東京在住のCAさんとのことで、そんな情報も耳に入れておきます。

そして、意外と知られていないのが、5月5日に行なわれる「賀茂競馬(かもくらべうま)」です。

舞楽装束に身をまとった乗尻(騎手)が、2頭ごとに上賀茂神社の馬場でその速さを競い、天下泰平と五穀豊穣を祈願する行事とされ、平安時代に宮中武徳殿で5月5日の節会に催されていたものが起源とされます。

現在では左方右方に分かれた2頭ずつで6番の競馬が行われ、2頭の馬が古式に則って速さを競い合い、左方の勝ち数が多い年は豊作とされているそうです。

乗尻が独特の掛け声をかけながら疾走する様子は迫力満点で、この荒々しさで神をよろこばせるともいわれています。

さて、この乗尻(騎手)は賀茂氏族の末裔が古式を継承しながら騎乗して神事として奉納することを、千年近く続けています。

京都では、秦氏と賀茂氏という有力豪族が力を持っていました。その賀茂氏の氏神を祀った神社が上賀茂・下鴨神社です。

上賀茂神社の境内を流れる明神川沿いに土塀を巡らせて広がっているのが、「社家(しゃけ)」といわれる町並みです。神職を世襲してきた賀茂氏の屋敷が集まった場所で、明神川の水が各屋敷に引き込まれ、神官たちはその水で禊を行なってきました。

賀茂の家系はいくつかの姓を生み出し(賀茂16流)、その中でも神職に就いた家が「賀茂七家』と称されました。現在では賀茂氏は全国に散っていますが、葵祭では「賀茂競馬」を奉納するために集まるなど、今も強い結束を誇っています。

華やかな平安絵巻のような巡行以外にも、葵祭には見所がたくさんあります。巡行より前に行なわれる様々な儀式や、賀茂氏の歴史に触れることのできる社家の見学など、ちょっと深い京都を味わってみてはいかがでしょうか。(立)

 

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