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奇兵隊結成と高杉晋作

2015年05月31日 公開

歴史街道編集部


 

有志の士を募り、一隊を創立し、名づけて奇兵隊といわん…

文久3年(1863)5月10日、幕府が認めた攘夷決行日に合わせて、長州藩は関門海峡を通過するアメリカ商船を砲撃。23日にはフランス船、26日にはオランダ船を砲撃しました。いずれも外国船が逃げたことで、長州側は「攘夷実行」に大いに気勢を上げます。

しかし、外国船の報復はすぐに行なわれました。6月1日にはアメリカ軍艦が下関に来襲し、砲台を沈黙させ、さらに長州藩の軍艦3隻すべてを大破沈没させました。続いて5日にはフランス軍艦2隻が来襲、各砲台を破壊し、陸戦隊が上陸して付近の村落を焼き払ったのです。

これに対し長州藩の正規藩兵「先鋒隊(選鋒隊)」は、戦国時代さながらに隊伍を整えて下関から壇ノ浦へと進軍しますが、フランス軍艦の艦砲射撃を受けると慌てふためいて四分五裂となり、めいめい勝手に山中に逃げて、退却してしまいます。全く話になりませんでした。

この様子にはさすがに下関の町人たちもあきれ果て、「麦の黒穂と先鋒隊は 勢をそろえて出るばかり」と揶揄〈やゆ〉する唄が流行ったほどです。

敗戦の報せは、すぐに山口にいる藩主・毛利敬親〈たかちか〉のもとにもたらされました。そして萩郊外の松本村で「東行」と称して隠棲していた、高杉晋作を呼び寄せます。

「公、これを聞いて大いに怒る。高杉晋作を召していわく、汝策ありや。晋作答えていわく、願わくば馬関のことをもって臣に任ぜよ。臣一策あり。請う、有志の士を募り、一隊を創立し、名づけて奇兵隊といわん。

しかれども、もっぱら奇兵のみをもって従事するにあらず。奇兵の中また正あり奇あるなり。いわゆる正兵者は総奉行の兵あり。これに対して奇兵とせんと。公、喜んでこれを許す。ここにおいて高杉晋作馬関に来たる。時に六月六日なり」(『奇兵隊日誌』)

藩主・毛利敬親より下関防衛の委任を受けた高杉は、即座に下関に向かいます。彼の頭にあった奇兵隊とは、藩の上士から成る先鋒隊とは異なり、陪臣でも足軽・中間でも、農民でも町人でも、身分を一切問わず、藩のために戦う志さえあれば入隊を認めるものでした。


写真:下関の高杉晋作像、白石正一郎宅跡碑

しかし従来の組織にない、新たな部隊を興すとなれば、資金が不可欠です。そこで晋作が真っ直ぐに向かったのが、下関の竹崎で廻船問屋を営む富商・白石正一郎のもとでした。この時、晋作は白石とは面識がありませんでしたが、司馬遼太郎『世に棲む日日』では次のように描かれます。

(前略)晋作は接するほどに、
(これは、どうしようもなく大きい)
と、おもわざるをえない。
「なるほど」
と、うなずくばかりの正一郎のほうも、じつは自分より二廻り以上も齢若な晋作を、肚のなかで、
(いままでこれほど本物な人間をわしは見たことがあったろうか)
と、驚きと感動を押しころしながら、晋作との対座をつづけている。
正一郎は最後に点頭すると、
「相わかりました」
と言い、一つ固唾をのんでから、
「およばずながら手前、あなたさまについて参りましょう」

この時の白石正一郎の決断が、晋作と長州の運命を変え、さらには維新への引鉄になったといっても過言ではないのかもしれません。

晋作は白石宅を本陣として隊の結成に取り掛かりますが、すぐに50~60人の人数となり、白石宅では手狭となったので、阿弥陀寺(現、赤間神宮)に本営を移します。応募は防長二州よりひきもきらず、同年末に300人に達したところで、これを上限としました。

以後の入隊希望者は、別の民兵組織で吸収していきます。萩野隊、膺懲隊、集義隊、義勇隊、遊撃隊、八幡隊など、文久3年末の時点で総人数は1,000人を超えました。さらに翌年、続々と新しい隊が生まれ、これらは諸隊と総称されることになります。

高杉の奇兵隊結成を機に生まれたこれら諸隊が、後の四境戦争で幕府軍を撃退し、維新に向かって突き進むことを思えば、奇兵隊結成及び晋作と白石との出会いが、時代の大きな転換点の一つであったといえそうです。



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