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役所広司が語る、軍を捨てて国を残した「阿南惟幾」という男

2015年08月05日 公開
2022年07月28日 更新

役所広司(俳優)

終戦70年を迎える今年8月8日(土)、映画「日本のいちばん長い日」が全国公開される。1945年4月の鈴木貫太郎内閣発足から、8月15日正午に国民へと玉音放送が届くまでを描く本作で、阿南惟幾陸相を演じるのが主演の役所広司さんだ。阿南を演じるにあたって、役所さんの胸に去来した想いとは。

 

板挟みの中で、下した決断

 阿南惟幾という男は、陸軍大臣の地位にいた方ですから、優秀な人間であったことは間違いないでしょう。しかし、その魅力はむしろ、部下に愛され、また部下を心から愛した人間味の部分ではないでしょうか。

 実際、今作では家庭での顔もしっかりと描き、「ひとりの人間」としてフォーカスしています。閣議と家庭での阿南さんにはギャップがあり、演者としては、とてもやりがいがありました。

 昭和20年(1945)の陸相就任以来、阿南さんは最後まで徹底抗戦を訴え続けます。しかし、彼ほどの人物であれば、もはやあの戦争に勝ち目がないことは悟っていたでしょう。

 しかし、これは戦争に限りませんが、一度始めてしまったものを止めることが、いかに難しいか。そのことを、阿南さんの役を通じて改めて感じさせられました。戦争とは人間同士が行なうものであり、「多くの仲間たちが斃れた今、自分が死んだとしても、少しでも敵国に仕返しをしたい」という気持ちが芽生えるのは、人間として当たり前でしょう。いざ戦争に入れば、それまでの常識など、もはや何の意味も持たないのです。

 そうした中で阿南さんは陸相に就き、昭和天皇の終戦への想いに触れるわけですが、心中、様々な葛藤があったと思います。
 

映画「日本のいちばん長い日」

監督・脚本:原田眞人
キャスト:役所広司 本木雅弘 松坂桃李 堤 真一 山﨑 努 他

2015年8月8日(土)、全国ロードショー

写真:稲垣徳文 スタイリスト:安野ともこ(コラソン) ヘアメイク:田中マリ子(ベレッツァ スタジオ)

ジャケット、トップス、パンツ/MAURIZIO BALDASSARI(マウリツィオ バルダサーリ〈双日インフィニティ〉、お問い合わせ先:03-6867-1551)

©2015「日本のいちばん長い日」製作委員会

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