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黒田長政の「一の谷形」の兜は金色に輝いていた?



2015年10月27日 公開

歴史街道編集部

「黒田長政が関ケ原合戦でかぶっていた『銀箔押一の谷形兜』は、実は金色だった」…こんなニュースが今年の2月に流れました。

黒田藩伝来の品を多く所蔵する福岡県の福岡市博物館が、所蔵する有名な「一の谷形兜」の修復作業中に、一部に金色の下地が露出しているのを確認し、もともとは金箔を使って金色に輝いていたと想定されるとの報道でした。

戦国時代に武将たちの間で流行した独特なデザインの「変わり兜」の中でも、トップクラスのユニークさで目を引く黒田長政の「一の谷形兜」。源義経が断崖を馬で駆け下り、平家軍に奇襲をかけた「鵯越(ひよどりごえ)の逆落とし」で有名な一の谷の地形を表現したものとされます。

現在伝わる「一の谷形兜」は、表面が少しくすんでいますが、全面が銀箔に覆われており、黒田家に伝わる「関ケ原戦陣屏風」でも銀色で描かれています。一見、鉄板でできているように見えますが、檜の薄い板を曲げて表面に銀箔を押したものです。なかなか重そうですが、実は意外と軽くて3kgほどの重さとのことです。

見慣れたこの銀色の兜が、もともとは金色に光り輝いていた…今年の夏に福岡市博物館で開催された「大関ケ原展」でもこの兜が展示され、かつて金色だったと紹介されたそうです。

ところが、博物館が今年の9月に兜にX線をあてて成分や素材をくわしく分析したところ、兜の素材には金の成分は見つからず、金色の下地の素材も特定できなかったと発表されました。

博物館は「銀箔の上に何かを塗り、金色に仕上げていた可能性がある。今後も調査を続けたい」とコメントしています。謎は深まるばかり、ですね。今後の調査を見守りたいと思います。

この「一の谷形兜」ですが、もともとは竹中半兵衛が考案したとされ、義経の一の谷での活躍にあやかって戦勝を祈願する意味合いが込められていたとされます。そして福島正則を経て、長政の所有となりました。

朝鮮出兵の際、長政と正則はささいなことから仲違いをしたとされます。しかし、帰国後に「旧交の御親ミ捨て難き」ということで、和解をすることになります。その証として、二人は兜を交換します。福島正則が持っていた「一の谷形兜」が長政へ、長政が持っていた「黒漆塗桃形大水牛脇立兜」が正則へと贈られました。

関ケ原合戦では、長政と正則がそれぞれ贈られた兜をかぶって奮戦します。正則の水牛の角のように伸びた兜も、関ケ原の戦場で敵味方の注目を浴びたと思われる勇壮さを備えています。

そしてもう一つ。長政が天下分け目の関ケ原合戦に「一の谷形兜」をかぶったと思われる理由が、竹中半兵衛の存在です。

長政の父・官兵衛(如水)とともに、豊臣秀吉の天下取りを支えた名軍師・竹中半兵衛は、長政にとって命の恩人でもありました。

長政は織田信長への人質として、秀吉のもとで過ごしていました。荒木村重が信長に反旗を翻した際、官兵衛は有岡城に幽閉されましたが、官兵衛が裏切ったと考えた信長は、秀吉に長政の処刑を命じます。

この危機から長政を救ったのが、半兵衛でした。信長に処刑をしたとの偽の報告をし、密かに自分の居城に長政を匿います。長政にとって半兵衛は生涯の恩人となったのです。

長政の半兵衛への思いは、関ケ原合戦でもう一つの物語を生みます。半兵衛の嫡子・重門は、当初西軍に属していましたが、長政らの勧めもあって合戦前に東軍に与します。

関ケ原合戦当日、長政と竹中重門は、合戦開始の烽火を上げる重要な位置である岡山(丸山)に陣取ります。半兵衛の「一の谷形兜」を身につけ、嫡子の重門とともに大合戦に挑む…。長政の胸中には、半兵衛への並々ならぬ思いが満ちていたと想像するに難くありません。

奇抜さやユニークなデザインに目を奪われがちな変わり兜ですが、己の生死をかけて合戦に臨む戦国武将たちの、兜に込めた覚悟や願いに思いを馳せるのも、戦国時代を理解する一つの方法といえるのかも知れません。(立)



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