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2017年大注目! 大河ドラマの舞台・井伊谷を歩く

2017年12月10日 公開
2022年07月14日 更新

山本博文(東京大学史料編纂所教授)

龍潭寺(静岡県浜松市)
龍潭寺(静岡県浜松市) 撮影:著者

※本記事は、山本博文著『歴史の勉強法』(PHP新書)より一部を抜粋、編集したものです。

 

歴史の勉強法―現地に行けば見えてくる

大河ドラマの舞台・井伊谷

2017年のNHK大河ドラマは『おんな城主 直虎』です。この人物は、徳川四天王の一人で彦根藩主となる井伊直政の養母で、戦国の「女地頭」として知られた人物です。しかし、実際には史料に乏しく、なかなかその実像は明らかになっていません。

井伊家の本拠地のあった井伊谷は、静岡県浜松市にあり、浜名湖の北に位置します。ここにも行ってみましょう。

井伊谷の中心は、井伊谷バス停のあたりで、「井伊谷」という交差点があります。この北に井伊家の居館がありました。現在では住宅地になっています。その北西方向に、現在は「城山公園」になっている井伊谷城址があります。中世の城ですので山にしか見えませんが、引佐多目的研修センターが目印になります。その後方に城に登る登山道があります。

井伊谷は、「谷」という名前から想像していたよりはるかに広く、起伏はありますが、けっこう開けた土地でした。やはり現地に行ってみると、抱いていたイメージが修正されます。南には浜名湖の北を通る街道が走っており、気賀の関所があります。ここは関所の建物が再建され、当時の様子が人形で再現されています。

井伊谷の名所は、井伊家菩提寺の龍潭寺で、観光客もたくさん訪れています。本堂も庭園も立派です。井伊家の祖である共保、直盛(直虎の父)、直政の三人の木像を安置した御霊屋があり、その横手には歴代の墓所があります。また、隣の井伊谷宮は、明治時代に建立された神社ですが、南北朝時代の後醍醐天皇の第四皇子の宗良親王が晩年過ごした場所で、親王が祭神となっており、陵墓もあります。目指す史跡とは別の史跡を発見するのも、現地に行く楽しみの一つです。

井伊直虎を含む井伊家歴代当主の事蹟は、龍潭寺九世住持・祖山法忍和尚が享保15年(1730)に書いた『井伊家伝記』によって語られています。『引佐町史』は、この史料などを中心に、井伊家の歴史をよくまとめてあり、よい参考書になります。静岡県の方なら地元の図書館などで読めると思いますが、他県では大きな図書館でないと架蔵していないかもしれません。

楠戸義昭氏は、『引佐町史』も含めて多くの文献を読んで『女城主・井伊直虎』(PHP文庫)をまとめています。現地に行く前、この本を読んでおけば、基礎知識は身につくでしょう。

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