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もし足利義満が天皇になっていたら?

2018年07月04日 公開

井沢元彦(歴史作家)

足利義満
 

最愛の息子を天皇にしようとした男・足利義満

室町幕府の3代将軍、足利義満が天皇になろうとしたことは、いまでこそ日本史の常識になってきましたが、戦前は決してそうではありませんでした。

むしろそのことは、ひた隠しにされていたといっていいでしょう。

言うまでもなく、そんなことを事実として認めれば、「万世一系」の天皇家という概念が崩れるからです。

正確に言えば、義満は自分は太上天皇(上皇)となり、最愛の息子・義嗣を天皇にしようとしたのです。

義満の皇位簒奪計画は、あと一歩で成功するところまできていました。

義満の妻は天皇の准母となったのです。

自分の妻が天皇の「母」になれば、自分は天皇の「父」ということになります。

しかも、義満は息子の義嗣を親王(天皇の息子)と同じ待遇で元服させました。宮中で「立太子」の形をとったのです。

しかも、義満は、それまで絶えていた中国との国交を回復させ、「日本国王」の称号を中国皇帝からもらっていました。

つまり、対外的・国際的には、日本の「元首」は既に義満だったのです。

あとはそれを国内の地位と一致させるだけです。

それも義嗣の「立太子」が終わった以上、あとは最後の段階として「天皇退位」があればいいのです。

当時の、後小松天皇が退位さえしてしまえば、自動的に義嗣に天皇の座が転がり込むことになります。

「皇太子」は義嗣しかいなかったのです。

後小松天皇に自発的に退位させるもよし、あるいは「急死」させてしまうことも考えられないではありません。

この件に関しての詳しい考察は、拙著『天皇になろうとした将軍』(小学館刊)を見て頂いた方が早いですが、かいつまんで経過を述べてますと次のようになります。

義満は「生まれながらの将軍」でした。

父の2代将軍義詮が早く死んだため、幼いころから帝王学の教育を受けており、将軍になったのは11歳の時です。

そして、25歳の時には早くも左大臣になりました。

このころ、どうやら義満は宮中の女官たちと大っぴらな愛人関係があったようです。

そういう空気の中で、ときの後円融上皇が自分のお妃の一人を「峰打ち」にするという事件も起こっています。

この女性は後の後小松帝の生母です。この上皇の行為は、その生母の不倫行為を疑ってのことだと、されています。

これが本当にあったことだとしますと、後小松帝は義満との間の子という可能性もあります。

もちろん、遠い昔のことですから証拠はありませんが、そう疑える状況にあったことは確かです。

いずれにせよ、義満は当時の宮廷をも思いのままにしていたということは事実です。

義満はこのまま大権力者となり、南北朝合一という歴史的偉業を成し遂げています。

これは、今にたとえれば、アラブとイスラエルを恒久平和に導いたようなものです。

これは確かに、彼の大功績です。

このことで日本は半世紀近く続いていた戦乱に終止符を打てたのですから。

しかし、「オレはエライんだ」という彼の自信が、次第次第にふくらみ始め、「それならオレが天皇になってもさしつかえないじゃないか」というところまで、いってしまったのです。
 

義満急死のなぞ

しかし、あにはからんや、実際に急死したのは当の義満の方でした。

計画達成の寸前までいって、義満は突然死んだのです。

一応、病死ということになっています。

しかし、病気になってから死ぬまで、わずか5日しかなく、しかも、突然の発病で遺言すらなかったのです。

あやしい、と思うのは私だけではないでしょう。

私は「天皇制」を守ろうとした人々が、義満に逆襲したのだ、と考えています。

絶対的な権力者ほど往々にして、呆気なく暗殺されます。

シーザーがそうであり、日本で言えば、織田信長、大久保利通がそうです。

自分の権力を過信し、下の者を甘く見るのです。しかし、しょせん、人間は人間で、急所に短刀を10センチ突き込まれるだけで簡単に死んでしまうのです。

もっとも、義満の場合は、おそらく一服盛られたのでしょう。

毒殺はこの時代からあります。たとえば、義満の大叔父にあたる足利直義は、兄・尊氏の命令で毒殺されています。

これは「公式記録」ですが、古い時代にはもっと多くあったでしょう。一服盛ることは、今でも医師を抱き込めば可能です。ただし、検死されることがなければの話ですが。

足利天皇が成立しないわけ >

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