歴史街道 » 本誌関連記事 » 刀よりも神聖とされ、神話にも登場する武器「剣(つるぎ)」

刀よりも神聖とされ、神話にも登場する武器「剣(つるぎ)」

2019年10月11日 公開
2022年08月15日 更新

山田勝監修『武器で読み解く日本史 』(PHP文庫)より

古代は刀よりも神聖とされた剣

「国譲り神話」には天之尾羽張という剣が登場するが、「記紀神話」には、そのほかにもさまざまな剣が登場してくる。

高天原を追い出された男神スサノオが、怪物ヤマタノオロチを退治したときに用いたのは天羽々斬という神剣だ。そしてヤマタノオロチの死体から出てきたのが天叢雲剣である。

天叢雲剣はのちに天皇家に伝わり、景行天皇の皇子であるヤマトタケルが東征した際、この剣で火のついた草を薙ぎ払って難を逃れたことから、草薙剣とも呼ばれるようになった。天叢雲剣(草薙剣)はいまも、三種の神器のひとつとして天皇家が所持している。

ほかにも、神武天皇が東征した際、ナガスネヒコの反抗にあって苦戦したときの逸話に剣が出てくる。神武天皇のもとに、高倉下という人物が布都御魂という霊力を持つ剣を持って現われ、その力でナガスネヒコを打ち倒すことができたという。

じつは、大陸から日本に鉄剣が伝来したときには同時に鉄刀も入ってきている。だが、神話に登場するのは剣ばかりで、刀の存在感はきわめて薄い。

古代の日本人にとっては、刀よりも剣のほうが価値が高く、神聖なものだったようだ。

古墳時代、刀は一般兵が持つものであり、剣は身分が高い者だけが持つことを許されていたと考えられている。

当時、実戦で使われた剣の平均的な大きさは、全長が70~80センチ、刀身が55~65センチである。また、用いられ方としては、片手で握られ、刺突が中心だったとされている。

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