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第45代・聖武天皇への皇位継承~藤原四兄弟と長屋王の変

2019年11月01日 公開

吉重丈夫

東大寺
 

知っておきたい皇位継承の歴史

令和改元という節目の年に、歴代天皇の事績をふりかえります。今回は聖武天皇をお届けします。

※各天皇の年齢等については数え年で計算して記しています。
※即位年、在位年数などについては、先帝から譲位を受けられた日(受禅日)を基準としています。
※本稿は、吉重丈夫著『皇位継承事典』(PHPエディターズグループ)より、一部を抜粋編集したものです。
 

第45代・聖武天皇

世系33、即位24歳、在位26年、宝算56歳

皇紀1361年=大宝元年(701年)、文武天皇の第一皇子として誕生された首皇子で、母は藤原不比等の娘・宮子である。慶雲4年、7歳の時に父・文武天皇(25歳)が崩御され、母の宮子は首皇子を産まれてから心的障害に陥り、首皇子に長く会われることはなかった。

首皇子はまだ7歳で幼く即位は出来ないということで、慶雲4年7月17日、第42代文武天皇の母(首皇子の祖母)である元明天皇(天智天皇皇女で草壁皇子の妃)が首皇子への中継ぎとして即位された。

皇紀1374年=和銅7年(714年)6月25日、首皇子が14歳になられ立太子される。異母弟に高円広世親王(母は石川朝臣刀子娘)がおられたが、この親王は首皇子の立太子の障害にはならなかったようである。高円広世親王は後に天平宝字5年5月9日、淳仁天皇の御世、従五位下・摂津亮に任じられている(『続日本紀』)。摂津亮は摂津大夫に継ぐ地位で、副知事に相当する。

ところが、皇位継承の強力な候補としては別に長屋王がおられた。父は天武天皇の皇子の高市皇子、母は天智天皇の皇女の御名部皇女(元明天皇の同母姉)であり、皇孫として嫡流で、父・高市皇子は18年前の皇紀1356年に薨去しておられるが、皇位継承候補者としては最右翼であられた。

首皇子は天武天皇の曾孫であり、長屋王は天武天皇の孫である。そこで藤原一族は首皇子の立太子を急いだと考えられる。

しかし皇親勢力と外戚である藤原氏との対立もあって、首皇子の即位は先延ばしにされた。藤原家から文武天皇に宮子が入内し、皇紀1361年=大宝元年(701年)、宮子が首皇子を産んで、藤原不比等が首皇子の外祖父になり、皇親勢力と藤原家の争いが熾烈になる。

皇紀1376年=霊亀2年(716年)、皇太子・首皇子は立太子されて2年後、16歳でやはり不比等の娘である安宿媛(あすかべひめ、光明子)を妃とされた。この安宿媛は首皇子の実母・宮子の異母妹である。

皇紀1379年=養老3年(719年)、皇太子・首皇子(19歳)は「未だ政道に閑(なら)はず」(『続日本紀』)として「宗室の年長」たる舎人・新田部親王の輔翼に期待する詔(元正天皇)が発せられる。

ここで皇位継承候補として長屋王の存在が大きくのしかかっている。

皇紀1384年=神亀元年(724年)2月4日、24歳でようやく同母姉の元正天皇より譲位を受け首皇子が聖武天皇として即位された。この日、元号が養老から神亀に改元される。

聖武天皇の御世の初期は皇親勢力を代表する長屋王が政権を担当され政務を執られた。長屋王は天武天皇の内孫で、天智天皇の外孫に当たり、皇親勢力の巨頭として皇親政治の中心的存在であられた。

一方、藤原氏は首皇子が皇太子時代に入内した藤原光明子(父は藤原不比等、母は県犬養三千代)の立后を願っていた。しかし皇后は夫となる天皇の亡き後に、中継ぎの天皇として即位される可能性があり、これまでは皇族しか立后されないことになっていたので、長屋王は光明子の立后には反対していた。

これより前2月6日、天皇は勅して藤原夫人(宮子)を尊び、大夫人と称することにされた。しかしその後、聖武天皇は神亀元年3月22日、詔「長屋王等の上表に答え藤原の夫人の称号を定め給ふの詔」を発せられ、母・宮子は大夫人(これまで使っていた敬称)ではなく皇太夫人とされた。これも藤原氏の長屋王に対する怨みとなって後の「長屋王の変」の悲劇に繫がることになった。

なお、皇太夫人・光明子は聖武天皇の母・宮子の異母妹であり、聖武天皇の母と夫人がともに不比等の娘で異母姉妹の関係にある。

11月23日、大嘗祭(即位後の最初の新嘗祭)を催行される。

皇紀1387年=神亀4年(727年)11月2日、詔「皇太子を立て給ふの詔」を発せられ、この年閏9月に聖武天皇と夫人・藤原光明子との間に誕生された基王がわずか誕生2ヶ月で皇太子に立てられた。しかしこの皇太子・基王(2歳)は翌神亀5年9月13日、2歳で幼くして薨去される。

そして皇紀1388年=神亀5年(728年)、聖武天皇と県犬養広刀自との間に安積親王が誕生される。

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