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「足軽vs.足軽」雑兵同士の戦いがここまで面白い理由



2020年09月17日 公開

黒澤はゆま(歴史小説家)

 

足軽が持つべき仁義とは?

彼のこうした振る舞いの根本には何があるのだろうか?

フランス外人部隊に所属していた元傭兵、柘植久慶氏のエッセイで知ったことだが、リアルの戦場では、死線を幾度も乗り越えたはずの勇者でも、土壇場で別人のように見苦しい真似をすることが多々あるそうだ。

 そして、そうした⼈物について柘植⽒は「孤独。友⼈のいない奴に弱気の⾍が襲いやすい。部隊のなかに何でも話し合えるような戦友がいれば、自分一人が戦わない真似など出来っこない」『グリンベレー 戦場の人間学』(柘植久慶著、祥伝社)と評していた。

我々、歴史小説家は、戦争という、結局は集団殺人でしかないもののなかに、たまさかの美(という言葉を許されるのだとしたら)を見出し、それをつなぎ合わせて物語にするという因果な商売である。

だが、その美も元をたどれば、友人のため、要は「みっともない真似をしてあいつに笑われたくない」という思いに尽きるのではなかろうか。

そして、茂兵衛たち雑兵・足軽が持つべき仁義、人が踏み行うべき道もまたそれに則ったものとなるのは間違いない。

茂兵衛という、具足の隙間ができやすい下腹に槍を突き立てて捻ることが上手なこの男の言動に、不思議な涼やかさを感じるのは、彼が作中結んできた丑松との、辰蔵との、夏目次郎座衛門との、本多平八郎との、部下たちとの、そして時には自身が命を奪ってきた男たちとの友情のためなのだろう。

綿密な調査・考証に基づく、雑兵達のリアルな生態描写にばかり気を取られそうだが、『足軽仁義』の本質は友情の物語なのである。

ところで、赤米の味についてだが、拙著のネタバレになるので、あんまり言いたくないけど、やっぱり少しだけ話しておこう。丹念に精米すると、案外悪くない。もっとも米屋から精米を断られたため、一升瓶に菜箸という『はだしのゲン』スタイルを十二時間やった後でのことだが……

次巻以降10⽉の最新刊では、茂兵衛、丑松、辰蔵にどんな未来が待っているのだろうか。どうか、彼ら雑兵たちの人生が飲み込めないほどまずくはならず、多少外見はみっともなくても案外悪くないものになりますように。

参考文献:『戦国、まずい飯』(黒澤はゆま著、集英社インターナショナル)

『グリンベレー 戦場の人間学―極限状況で、どんな男が生き残ったか』(柘植久義著、祥伝社)



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