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今さら他人に聞けない「アメリカの黒人」の歴史

2020年09月29日 公開
2022年06月16日 更新

上杉忍(横浜市立大学名誉教授)

 

晩年のキング牧師が示した「解決への道」

全世界に広がる人種差別に対する今日の抗議行動は、人種差別を生み・強化してきた「近代世界」の歴史全体に対する反省を促しており、植民地政策や奴隷制度を推進してきた人物の彫像を撤去するよう要求する、世界各地の民衆の直接行動はそれを象徴している。

アメリカの黒人差別も、その「近代世界」の歴史の一部であることは確かなのだが、ジョージ・フロイド氏殺害事件に象徴されるアメリカ黒人の苦境を、世界中の人種差別一般の問題とひとくくりにしてしまっては、その深刻さを理解することはできないし、その解決の道を見出すこともできないだろう。

最近、警察機構の解体・再編、予算の削減が提案され、話題になっている。

しかし、アメリカ黒人を日常的に苦しめているのは、単なる警察制度だけではなく、人種差別を受容し、それに頼って秩序を維持してきた社会の仕組みであり、警察改革も必要だが、それだけでは、問題解決にはならない。

人々の安心・安全は、全ての人々が、仕事、教育、医療、住宅、娯楽等を享受できる社会構築にその社会の資源を振り向けることによって、より確かなものになる。

黒人差別撤廃を訴えた公民権運動の指導者・キング牧師は晩年、アメリカには、それを可能にするのに十分な経済力があると説いた。キング牧師の主張は、今日なお真面目に議論されるべき道であろう。

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