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ヤマト建国の鍵は「尾張」だった? 『日本書紀』が隠蔽した意外な真実

2021年06月02日 公開

関裕二(歴史作家)

関裕二
纒向遺跡を代表する箸墓古墳

ヤマト政権のはじまりを証明する重要な遺跡である、纒向(まきむく)。そこに全国の広範囲から人が集まってきたことが、出土した外来系土器から分かっている。

驚くべきことに、外来系土器の約半数は尾張系の土器なのである。考古学界もかたくなに認めようとしない、その本当に意味することとは?

※本稿は、関裕二著『こんなに面白かった 古代史「謎解き」入門』(PHP文庫)を一部抜粋・編集したものです。

 

「東」がヤマトを建国した?

大海人皇子が壬申の乱を制した時、尾張氏が大活躍していたのに、『日本書紀』は、無視している。大海人皇子は裸一貫で吉野から東国に逃れたが、真っ先に出迎え行宮(あんぐう)を用意し、軍資金を手渡したのが、尾張氏だった。

ところが、この大切な事実を、『日本書紀』編者は歴史から抹殺してしまったのだ。『日本書紀』を、「天武天皇(大海人皇子)や尾張氏の政敵」が記したからだろう。

「尾張」は、たびたび歴史から排除される。

たとえばヤマト建国だ。纒向遺跡には、多くの外来系土器がもたらされ、尾張からやってきたものは、外来系土器の約半数にのぼっていた。ところが『日本書紀』は、ヤマト建国と尾張の関係を、まったく記録していない。だから史学者たちも、「尾張からやってきた人たちは、労働力として駆り出されたに過ぎない」と軽視する。だが、本当にそうなのだろうか。

『日本書紀』と言えば、ヤマト建国の実態をまったく知らなかったと信じられているが、神話や神武東征、崇神天皇の治政にまつわる記事と3世紀前後の考古学とを見比べると、「記事と物証がそのまま、ぴったり」という場合が少なくない。

たとえば前方後円墳の4世紀の北限は、福島県や新潟県なのだが、『日本書紀』は四道(しどう)将軍が会津若松市付近にやってきたことを記録する。このルートこそ、前方後円墳が伝わった道であり、四道将軍たちが都に戻って、天皇を「ハツクニシラス(初めて国を治めた)」と称えている。

 

纒向遺跡の遺物が証明している

神武東征以前に、ヤマトには出雲神・大物主神(おおものぬしのかみ)、長髄彦(ながすねびこ)、物部氏の祖の饒速日命(にぎはやひのみこと)がやってきていたと『日本書紀』は言う。

そして最後に、九州から神武天皇が乗り込んできたという設定だ。饒速日命は吉備からやってきた可能性が高く、この「いくつもの地域の首長がヤマトに集まって、政権が誕生した」という設定も、物証とぴったりと重なる。『日本書紀』編者は、ヤマト建国の詳細を知っていた可能性は高い。

その上であえて指摘させてほしいのだが、『日本書紀』のヤマト建国説話に登場しないのが、「尾張」「近江」「丹波」「但馬」で、筆者の言うところの「タニハ連合」の面々なのだ。

ここに、大きな秘密が隠されていたとしか思えない。すなわち、「尾張の後押しを受けてヤマトにやってきた継体天皇」を扇の要とすれば、いくつもの謎が浮かび上がり、しかもそれらすべての謎が、ヤマトの歴史を解明する上でじつに大きな意味を持っていたことに気付かされる。

鍵を握っていたからこそ、まったく記録されなかったのだろう。物証は「纒向の外来系土器の半分は尾張からやってきた」と言っているのに、無視されているのは、『日本書紀』の「印象操作」が成功したからにほかなるまい。

ヤマトを立ち上げたのは、ヤマトと西日本の諸勢力であろうと、これまで信じられてきた。しかし、きっかけを作ったのは、むしろ「東側」ではないかと思えてくる。だからこそ、『日本書紀』は真実を闇に葬り去ったのではなかろうか。

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