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アメリカの分岐点...独立戦争後「経済大国」になれた決定的な理由

2021年07月27日 公開

宇山卓栄(著作家)

宇山卓栄

どんな国においても、分岐点が存在する。いかにしてその国は出来て、発展したのか。今回は世界を牽引する超大国・アメリカを取り上げ、「国家台頭」と「近代化」の時について解説しよう。

※本稿は、『歴史街道』2021年8月号の特集「日本史と世界史の転換点」から一部抜粋・編集したものです。

 

イギリスからの"独立"は得か損か

17世紀から、イギリス人のアメリカ移住が進み、18世紀後半、アメリカ独立戦争が起きた時には、アメリカ移民の人口は300万人に達していました。

アメリカ移民は、イギリス本国の支配を排除するべく立ち上がりましたが、当初は本国の横暴に対し、抵抗し、小競り合いをするだけという軽い考えでした。彼らは、「独立戦争」という大仰な考え方を持っていなかったのです。

移民の中には、イギリス本国と商売上の取引きをする業者も多く、イギリスとの関係が絶たれることで、損害が生じます。本国の行政支援が絶たれることに対する懸念もありました。

彼らは未だイギリスの一部という意識のままで、「アメリカ人」や「アメリカ国家」との意識を持っていなかったのです。移民たちの意識を大きく変えたのは、思想家トマス・ペインです。

ペインは1776年、『コモン・センス』を著し、イギリスからの独立とアメリカ国家の樹立の必要性と大義名分を唱えました。また、イギリスとの関係を切ったとしても、アメリカは自由貿易により、大きな利益を獲得できるとして、人々の懸念を払拭し、「独立は得か損か」という議論に決着を付けました。

こうして、一気に独立気運が高まり、イギリスとの戦争が本格化し、アメリカ側はジョージ・ワシントンの指揮のもと、総力を挙げて戦いました。

戦争中、アメリカの外交を担ったベンジャミン・フランクリンは、植民地軍の優勢をヨーロッパ各国に説き、巧みな外交を行ないました。その結果、フランス、スペイン、オランダがアメリカを支持し、イギリスを孤立させることに成功しました。フランクリンは100ドル紙幣の肖像にもなっている人物です。

イギリスは外交的孤立に加え、アメリカ軍のゲリラ戦法にも悩まされました。アメリカ軍は、各地における自発的な志願兵によって構成されており、それぞれの地の利を活かした陽動作戦をとり、イギリス軍を翻弄しました。

この時代のアメリカは未だ行政機能を集約したような中核都市が各地にできておらず、イギリス軍は攻撃ターゲットを定めることができませんでした。アメリカ軍は広大な領域に散在しながら、局所的かつ散発的にイギリス軍を奇襲攻撃し、追い詰めました。

1781年、 ヨークタウンの戦いでアメリカ側の勝利が確定し、1783年、 パリ条約でイギリスが独立を承認し、正式にアメリカという国家が誕生します。

新しい国のかたちを決めるため、憲法制定議会が開かれます。1787年、合衆国憲法が制定され、初代大統領にワシントンが選出されました。

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