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北条氏規の韮山籠城戦~北条五代、最後の光芒

2021年12月22日 公開

鷹橋 忍(作家)

韮山城址

天正18年(1590)、豊臣秀吉の大軍が小田原城を包囲した。関東各地にある北条方の城が次々と落ちるなか、10倍以上の敵を相手に、3ケ月の間、戦い抜いた男がいる。伊豆・韮山城の北条氏規──。その見事な戦さぶりと、数奇な人生を紹介しよう。

鷹橋 忍(作家)
神奈川県生まれ。洋の東西を問わず代史・中世史の文献について研究している。著書に『城の戦国史』『滅亡から読みとく日本史』などがある。

 

小田原北条氏と韮山城

伊勢宗瑞にはじまり、北条氏綱、氏康、氏政、氏直と、5代100年にわたり、関東の覇者として君臨した戦国大名・北条氏。

韮山城(静岡県伊豆の国市)は、北条氏の始祖・伊勢宗瑞が初めて自らの領地に築き、本拠と定めた城だ。本城となる龍城山、標高128メートルの天ケ岳、本城を取り囲む「御座敷」「大手」などと呼ばれる低地部の、3つの区域から構成される広大な平山城である。

宗瑞はこの韮山城を足がかりとし、北条五代の繁栄の基盤を作り上げていった。

やがて北条氏は相模国、武蔵国へと勢力を拡大していき、本拠地は韮山城から小田原城に移っていった。それでも、宗瑞が韮山を離れることはなく、永正16年(1519)に没するまで韮山城を終生の住処とした。宗瑞の法名「早雲寺殿天岳宗瑞」は、韮山城を築いた天ケ岳にちなむという。

このように、韮山城は北条氏の歴史のはじまりを飾った城であるが、その終焉においても、非常に重要な役割を演じている。

小田原合戦において豊臣秀吉軍の圧倒的な戦力を前に、北条方の城が次々と落城していくなか、韮山城将・北条氏規は10倍以上の敵を相手に奮戦した。

北条氏規とはどのような人物で、韮山城ではどのような戦いをみせたのだろうか。

 

人質として過ごした駿府で、家康との知己を得る

北条氏規は、天文14年(1545)に、3代・北条氏康の四男(または五男)として誕生した。

氏規は、数え年で8歳となる天文21年(1552)頃に北条氏の領国を離れ、10年以上の日々を、今川氏の本拠である駿府で過ごした。

なぜ、氏規は駿府で暮らさなければならなかったのか。それは、駿甲相三国同盟の一環によるものだとみられている。

駿甲相三国同盟とは、駿河の今川氏、甲斐の武田氏、相模の北条氏の三者間で結ばれた同盟だ。この同盟により、氏規の妹・早川殿が義元の嫡男・今川氏真に嫁ぐことが決まっていた。だが、早川殿は当時まだ幼年であったため、妹の代わりに氏規が、今川氏のもとに送られたという。事実上の人質である。

駿府で氏規は、松平元康──のちの徳川家康と出会い、知己を得ている。

氏規より3歳年上の家康とは、相婿(姉妹の夫同士)だったともいわれる。つまり、氏規の妻と家康の妻・築山殿は姉妹であった。屋敷が隣同士だったとも伝えられているが、それも相婿の関係だったからだとみなされている。

しかし、永禄3年(1560)の桶狭間の戦いで今川義元が敗死すると、氏規は今川家御一門衆の出であった妻と離縁し、小田原に帰還したという。

氏規は永禄7年(1564)6月のはじめまでには小田原に帰還したようで、永禄7年6月8日付で氏規が発給した朱印状が存在する。これが氏規の初見文書である。

北条氏の朱印というと「虎朱印」が有名だが、この文書に捺された氏規の朱印に刻まれていたのは、「真実」の文字であった。印文は、いわばスローガンであるという。当時20歳の氏規は、戦いに明け暮れる戦国時代にあって、真実を貫こうとしたのだろうか。

 

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