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中小企業は「高速企業」(特別インタビュー・前編)

2018年10月10日 公開

落合陽一 <PR> 提供:東京都

毎年11月に開催され、「中小企業による国内最大級のトレードショー」として大きな話題を呼んでいるイベント「産業交流展」(主催:東京都他)。21回目を迎える今年は11月14日(水)~16日(金)の3日間、有明の東京ビッグサイトで行なわれる。初日に特別講演を行なうのが、メディアアーティストとして注目を集める落合陽一氏だ。

同イベントに先立ち、落合氏に中小企業が生き残るためのイノベーション(変革)のヒントや具体策、さらには日本社会が解決すべき課題を伺った。

「大企業」「中小企業」という分類の弊害

――落合さんは今年(2018年)初めに上梓された『日本再興戦略』(幻冬舎)で「次の一手で未来は好転する」と、日本の希望のグランドデザインを描かれました。では、中小企業の未来については、どうお考えでしょうか。

落合

テクノロジーが急速に発達する社会で、中小企業に大きな可能性があるのは間違いありません。
なぜそう考えるかをお話しする前に、まず提案したいのが、「中小企業」という呼び方を改めましょう、ということです。

そもそも、「大企業」「中小企業」という分類の定義は資本金の額や従業員の数によるものにすぎず、生産性や利益の多寡は関係ありません。にもかかわらず、「中小」という言葉だけで私たちはネガティブなニュアンスを連想しかねない。じつにもったいない話で、企業のイメージを不必要に下げ、ポテンシャルの発揮を阻害する要因となりえます。

そこで、従来の大企業と中小企業という分類ではなく、「低速企業」か「高速企業」か、という軸で企業を捉えてみてはどうでしょうか。
この分類における本質は、「意志決定の速さ」です。いま、社会にイノベーションを起こす重要な条件にスピードが挙げられる。そのとき、大企業は比較的「低速企業」に分類されるでしょうし、中小企業は「高速企業」であることが多いでしょう。

ただし誤解してほしくないのは、従来の「大企業は速やかに意志決定できないからダメだ」という手垢の付いた議論をしたいわけではない、ということです。

――どういうことでしょうか。

落合

規模の大きい企業は基本的には社会的信頼性があり、人数もコストもかけている分、生み出す製品の品質も保証されています。ただし、意志決定は往々にして稟議制で現場に予算の権限はなく、臨機応変な動きはできません。

一方、規模が小さい企業は人事的な階層も少ないでしょうから、持ち前の機動力を活かして新しい製品やサービスをスピーディーに投入すればよい。
大企業と中小企業が互いの特性を発揮し、弱点を補い合えば、その分だけ企業も国も栄えていくでしょう。時代が劇的に変化し、情報が氾濫するいまこそ、柔軟に対応できる高速企業が求められるのです。

――では、そんな高速企業を取り巻く状況についてはどうお考えでしょうか。

落合

注目すべきなのは、テクノロジーの発達によって、新しいサービスや製品を開発・展開する「限界費用」が確実に下がっている、という事実です。
とくに近年の製造業の特徴として、「マス・カスタマイゼーション化」が挙げられます。現在の市場は効率性を求める大量生産・大量販売ではなく、顧客それぞれのニーズを反映することが求められます。より簡単にいえば、一から十まで同じ工程で製品をつくることをやめてユーザーに合わせて仕様を変えたり、部分的にオプションをつけたりする、ということ。

この変化は製造業だけではなく、サービス業にもいえることです。一例として、顧客対応のコールセンターを挙げましょう。
皆さんも、一度はクレジットカードや電気・ガス、携帯電話の会社などに問い合わせの電話を掛けたことがあるでしょう。まず流れるのは「◯◯についてのお問い合わせは1、◯◯についてのお問い合わせは2……を押してください」という自動音声ガイダンスではないでしょうか。

――最後まで人間と会話をすることなく、自動音声とのやりとりだけでこちらの用件が済むこともあります。

落合

オペレーターに繋がるのは自動音声ガイダンスでは解決しない場合だけで、基本的に人力を省略する仕組みが構築されているわけです。
ただし、このレベルのマス・カスタマイゼーションの競争はすでに時代遅れで、終盤戦となっています。

規模が小さい企業は恒常的に人手不足状態にあります。そうであるならば、被雇用者の数に対して限界費用を計算し、人間の力で処理せずに済む領域をいかに構築して増やすかが、生き残りの条件といえるでしょう。そのときに注目すべき条件が、まさに先ほど述べた「限界費用の低さ」にあります。

自動化・省人化が鍵を握る

――テクノロジーを活用し、少ない人数でいかにより多くの利益を上げるかが、日本の高速企業が考えるべきトピックスというわけですね。

落合

「小規模な企業こそ自動化・省人化を」というと、ニッチなサービスを提供する町工場を想像するかもしれません。しかし、自動化・省人化はむしろ士業(弁護士や公認会計士に代表される専門資格職業の俗称)のような分野が最大の恩恵を受けると考えています。

属人的な専門知識によって成り立っていて、かつ人手不足な産業ほど、ひとたびプラットフォームが構築されれば自動化で得られるメリットは大きいのではないでしょうか。
代表格が医療業界でしょう。現在、東京では医師の数が飽和気味であり、一方で地方は医師不足で悲鳴を上げているといいます。

――日本全体で見れば、いくら医師一人当たりの稼働率を上げても、患者の需要に追いつけないほど足りない、と問題視されています。

落合

多忙を極める医師が、手数をかけずに効率よく医療を施すにはどうしたらよいか。ある程度のところまでは、自動化で賄う仕組みを考えればよいのです。

たとえば、引き始めの風邪であれば医師に直接、診てもらう必要はないかもしれない。そこで医師がスマートフォンのアプリを開発し、いくつか質問項目を用意して患者に選択してもらう。すると自動診断に基づいて画面に処方箋が表示され、患者は薬局に行ってスマホを見せ、症状に合った薬を受け取る……。
もちろん法規制の問題をクリアする必要はありますが、技術困難自体は現在のテクノロジーを使えば明日にでも解決できます。

――いまやアプリの開発も安価でできる時代。初期投資を含めて大きな費用はかかりませんね。

落合

限界効用は変わらない半面、限界費用が劇的に下がっている現状に対して、どのようにコスト削減を実践するか。人に依存している部分をAI(人工知能)などの最先端技術で代替できるもの、できないものに切り分け、前者を自動化・省人化することで、ビジネスチャンスを広げられる産業やサービスは士業のほかにも相当数、あるはずです。

産業交流展2018 では、「つなげるチカラ、つながるミライ」をテーマに、優れた技術や製品、サービス、斬新なアイディアやノウハウを持った先進的中小企業が集結します。多様な人や企業のチカラを、自社の技術やサービスとつなぎ、出会いや交流を通じて、革新的な価値の創出を目指す中小企業のミライをつくるチャンスを提供します。

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