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まず「パクる」ことから始めよ(特別インタビュー・中編)

2018年10月10日 公開

落合陽一 <PR> 提供:東京都

オリジナルに固執する必要はない

――アプリ開発を例に挙げると、たしかに新しいプラットフォームの構築そのものには莫大な費用はかからないかもしれません。ですが開発にはある程度の技術力が求められますし、そのためには研究費用も必要になります。結果、資金力に勝る大企業が有利なようにも思えますが……。

落合

私はそうは思いません。「イノベーション」というと多くの方は仰々しく考えがちですが、いまではありがたいことに、シリコンバレーで開発された技術の多くはすでにコモディティ化(一般化)されています。ならばその現状を好機と捉えて、日本企業は使える技術は躊躇なく模倣し、自社のサービスや製品に取り込んでしまえばいい。わかりやすい言葉でいうならば、「パクる」ことです。

日本人のあいだには「自分たちは高度経済成長期のように、オリジナルなものをつくらないといけない」という強迫観念が蔓延しているように思えます。しかしそれは幻想で、昭和もまた「パクりの時代」だった。たしかにソニーのウォークマンなどは革新的だったかもしれませんが、戦後復興からリスタートした当時の日本企業の命題は「便利なものをより安く、高品質に」。じつは世界的に見て完全なオリジナルはさほど多くはなく、そもそも独創の必要性もありませんでした。

――しかし、次第に日本人はオリジナルに固執し、いつしか「ガラパゴス化」してしまった、と。

落合

そうしているあいだに、独創性でも欧米企業に負け続けたのが、平成の「失われた30年」だったわけです。

いま平成が終わろうとしていますが、私は新時代を迎えるにあたり、「守破離」でいうところの「守」から再び始めることが大切だと思う。日本企業は、最初から独自のものを生み出そうとしがちですが、これはいきなり「離」から始めようとしてしまい、他の国や企業から学ぶ「守」と、それをブラッシュアップする「破」を疎かにしていることと同義です。
長年、こびりついた意識を変えるという意味においても、「離」ではなく「守」、つまり「パクる」ことを徹底すべきです。

――コモディティ化された最新技術を「パクる」として、模倣だけではシステムや製品の差別化を図れず、結局は成功を摑めないのではないでしょうか。

落合

その不安は理解できますが、これだけテクノロジーが発達していれば、もはや「技術的な差異はビジネスの勝敗に影響しない」という場合がほとんどです。

たとえば、アメリカを席捲したUber(自動車配車ウェブサイトおよび配車アプリ)と似たサービスを別の企業が始めることは技術的には簡単です。Uberと同じ技術を使い、さらにより日本人の嗜好性に合わせてローンチ(新しいサービスや製品を世に送り出す)すれば、多くの国内ユーザーがそのサービスを使い始める可能性があります。 法的規制について考慮する必要はありますが、肝心のユーザーが喜ぶのですから、日本企業が海外で開発されたリソースを使うことを躊躇う必要はない。日本という国における「ローカル・プラットフォーマー」をめざすのであれば、既存のプラットフォームを否定して力づくで乗り越えようとするのは無駄でしょう。

新しいサービスや製品を開発する限界費用が下がっており、たとえ失敗したとしてもかつてほど大きなダメージは受けない。そうした時代には、柔軟にトライ・アンド・エラーを繰り返すことが可能な高速企業にこそ勝機があるといえるのではないでしょうか。

さらにいえば、これは当然の話ですが、「パクる」ことをしたあとに、「破」と「離」に取り組むのを忘れていけない。
たんなる模倣なら、いつか淘汰されるのはいうまでもありません。「パクる」ことに成功したならば、次はそれを改良したり、ローカライズしたりして独自性を付加する。このように、「パクる」という言葉の本質や深みを理解したうえで実践すれば、自ずと他社との差別化は図れるのです。

「高速企業」の経営者がやるべきこと

――落合さん自身、企業を経営する経営者としての側面をお持ちです(ピクシーダストテクノロジーズ株式会社CEOを務める)。高速企業を経営するにあたり、意識されていることはありますか。

落合

そうですね……一つ挙げろといわれれば、「できるだけ大きなビジョンを描け」でしょうか。「そうはいってもうちは資金も技術もないので」と他社の経営者にいわれることもあるけれど、そんな方にお勧めなのが、既存企業や大学との連携です。

日本企業には莫大な内部留保が眠っており、財務省の発表によれば400兆円を超える額ともいいます(2016年度末時点)。また、大学のなかには国から100億円に迫るほどの助成金を受けているところもあり、ラボ(研究室)や実験施設なども充実している。にもかかわらず、産学連携の試みを行なう企業があまりに少なく、非常にもったいないと感じています。

――企業や大学がもつ資産を「遊休資産」にしてはいけない。

落合

そこで私自身の取り組みを紹介すると、専門とする光や音をめぐる技術について、企業や国立大学と共同でラボを開設し、研究を進めています。また、富士通の本多達也さんと「Ontenna」(オンテナ、ヘアピンのように髪の毛に装着し、振動と光によって音の特徴をユーザーに伝えるデバイス)を共同開発しています。

日本社会は負け癖がついているためか、閉塞的で新しいことが生まれないような雰囲気が蔓延しています。諦めムードとすらいえますが、「現在の社会に足りないシステムが何か」を冷静に考えていけば、活路は必ず見出せます。

日本は大変革期の最中であり、本気で探せばチャンスは無数にある。経営者は「資金も技術もない」と嘆くのではなく、自分たちの弱みを補完してくれる相手を探せばいいのです。

産業交流展2018 では、「つなげるチカラ、つながるミライ」をテーマに、優れた技術や製品、サービス、斬新なアイディアやノウハウを持った先進的中小企業が集結します。多様な人や企業のチカラを、自社の技術やサービスとつなぎ、出会いや交流を通じて、革新的な価値の創出を目指す中小企業のミライをつくるチャンスを提供します。

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