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中小企業が世界を変える!
――松下幸之助が唱えた中小企業最強論

2018年10月10日 公開

渡邊祐介(PHP研究所経営理念研究本部 本部次長) <PR> 提供:東京都

松下幸之助の理想の経営は中小企業時代

パナソニック(元松下電器産業)創業者・松下幸之助(以下、幸之助)が94歳で亡くなったのは平成元(1989)年4月27日のこと。その死は昭和の終わりを象徴するものとして報道されたものである。けれども、平成最後の年となる今年でさえ、日本史上で最も優秀な経営者ランキングを種々のメディアでリサーチすると、幸之助の名が筆頭に上がる。

その理由は二つあろう。一つは、学歴もなく、健康にも恵まれず、資本もない状態から、一代で世界的なエレクトロニクス企業を築きあげた立志伝中の人物として、時代を超越して評価されていること。もう一つは、その経営哲学・理念の体系が現在の経営者にとっても示唆に富むものとして支持されていることである。

それは幸之助の人生書『道をひらく』が累計530万部のベストセラーであることや、経営書『実践経営哲学』『経営のコツここなりと気づいた価値は百万両』等を多くの経営者が愛読書に挙げていることからも窺えよう。

その幸之助が大企業の経営者のみならず、むしろ中小企業経営者からの評価が高いことは際立った特徴である。それは財閥出身の専門経営者といった類ではなく、正真正銘、零細企業の創業経営者であったからであろう。幸之助は中小企業経営者の一つの理想として受け入れられているのである。

ここで、〝理想″という表現を使ったが、実は幸之助自身、〝理想の経営″について重要な発言をしたことがある。昭和37(1962)年11月22日、京都経済同友会における講演で、幸之助はみずからの経営をふりかえって、「いちばんよかったのは、二、三百人のときでした。(中略)もし許されるならば、私は二、三百人程度の中小企業のオヤジになりたいです」と述べている。すなわち、幸之助の考える〝理想の経営″において重要なのは、組織の「大きさ」ではなく、組織の「強さ」なのである。

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中小企業の最大の強みは何か

幸之助の中小企業論は、昭和36(1961)年に松下電器の社長を辞し会長に退いた頃から、強く発信されている。現場の経営から離れ、社会のリーダーとして、政治・経済に積極的な提言を始めた時期である。

幸之助の中小企業論の主張はくだけた表現を使えば、中小企業最強論である。先の京都経済同友会における講演では、次のように述べている。

「私は中小企業ほど強いものはないと思います。なぜ中小企業が強いかといいますと、中小企業というものは、ある程度適性をもった経営者であれば、人を十分に生かすことができると思うのですよ。今日大企業といわれる会社は、だんだんと官僚的になってきて、百の力のある人を七十にしか使っておりません。これは事実です。そこの社長が非常に偉い人であっても、やはり限界がありますから、大会社になればなるほど、一人あたりの力が低下するのが、これはもう原則ですね。

二、三十人から二、三百人という中小企業であれば、その主人公の一挙手一投足によって、全部の人が働く。七十の力の人が百五十にもなって働くのですよ。だから私は、中小企業がいちばん強いということを知っている。というのは、私は極小からズーッと今日まで経営してきましたが、大企業となった今がいちばんむずかしいと思うからです」

一般的に、幸之助の経営が最も評価されている点は、一言でいえば、「事業は人なり」の実践である。病弱だった幸之助は日常、いかに部下に仕事を任せるかに心を砕いていた。ただ、任せるだけではない。いかに部下の能力を見極め、モチベーションを高めるか。任せられた仕事を社員それぞれが自身の経営感覚でもって処することに喜びを感じられるか。幸之助が「産業人の使命」という経営理念を打ち立てたのも、独自に製品別事業部制という組織を採用したのも、「社員稼業」「自主責任経営」という言葉で、各人が独立した経営体であることを社員に主張したのも、その一点だったといってもよい。

一方で、幸之助は人員がふえ、組織が大きくなると、スピード感がなくなり、仕事がやむなく細分化され、官僚化の弊害が現れるのを肌で感じていた。だからこそ、すでに紹介したように、自分の経営で最良と感じたのは、戦前のまだ従業員が二、三百人の頃だと述懐したのである。その時代は、すべての従業員の顔や性格が分かり、〝打てば響く″経営の姿があった。

その状態を〝経営の醍醐味″という表現もしている。

「大きな会社やったら、経営の醍醐味というのは分からないですよ。『こうしなさい』と言っても、下までいくのにひま要るし、ぼけてしまうわけですわ。中小企業のオヤジさんは、十人とか五十人やったら、『うちはこうするのや、頼むで』『ほいきた、社長やりましょう』てなもんで面白いですがな、そのほうが」(昭和40 [1965]年11月17日・共同通信社記者との会見)

このように幸之助は、中小企業の強さを信じて疑わなかった。

そして、忘れてはならないのは、中小企業の存在意義の認識である。数の多さと多様さを誇る中小企業群が大企業と協力すればこそ、日本経済の基盤を保ち得ることを幸之助は強調している。

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さて、グローバル化やITがいっそう進化するなかで、中小企業は戦略次第では短期間で大企業になることも比較的可能になった。無論、強い中小企業でいることも戦略である。これについて幸之助は、総合化していくよりは、専門化に徹するほうがよいとしている。

「現在、二つの仕事をもっているのであれば、思い切ってそれを整理して一つにしていく。一つは捨ててしまうわけである。そのかわり残った一つについては、これを徹底的に深めていくというやり方をとるべきではないかという感じがする。それによって、人手も技術もそれに集中することができるし、資金のより効率的な運用も可能になってくるであろう。そこから非常にすぐれた製品、高い成果というものが生み出されてくると思う。(中略)

一品に徹していくならば、決して競争に後れをとるということはない」(『オール生活』昭和44[1969]年2月号)

幸之助は、多少余力があるからと、業容を大きくしていこうとすると、かたちの上では立派になっても、内容はかえって弱体化し、競争に後れをとることにもなりかねないと考えていた。すなわち、組織の大きさよりも強さ(=専門性)を追求するほうがよく、「一品をもって世界に雄飛する」(同上)方針を堅持すべきだという。

たとえ大企業が市場に参入して競合が生じても、中小企業としての強みに徹する。そうすれば、いずれ大企業でなければできないものだけを大企業がやるという自然な棲み分けが可能になるはずだと述べている。

こうした幸之助の考え方は、実際に一品をもって、世界に冠たるグローバルな中小企業が多数あることからも基調としてよい考え方であろう。

以上、述べてきたように、幸之助の中小企業最強論は、すべて組織の質にこだわる考え方だといえよう。これは経営学でいう「組織のケイパビリティ(組織としての総合的な能力)論」の課題を指摘するものかもしれない。幸之助は、長年の事業体験から、経営学における組織論の本質を見抜いていたとも考えられるのである。

組織の可能性を高めることと、多彩なコラボレーションを図ることを意識すれば、中小企業はたしかに世界を変えられるであろう。

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事業承継は運命

最後に、中小企業経営において最も重要な要素なのが、事業承継をどうするかである。これについて、幸之助自身は2回、対照的な判断をしている。1度目は自身が社長を退いたときに、婿養子を次期社長においた。2度目は2代目社長が長期経営を担ったあと、26人の役員の中から下から2番目の役員を3代目社長に抜擢するという人事を断行して世間の話題をさらったときである。

では幸之助には事業承継に関して何らか原理原則があるのかというと、実は思いのほか大らかだ。60パーセントの可能性を確信すればそれでよいというのである。その真意は、人というものは、「使ってみないことには分からない」(昭和38[1963]年2月21日・第六回住友講演会)ことにあった。これも真理なのは間違いない。したがって、「後継者というものはもう運命です。だからそれは自然に任せないとしかたがない」(昭和41[1966]年5月20日・日本YPO[青年社長会]講演)ともけれん味なく言うのである。

つまり、自然な流れで幸之助は保守的な事業承継を行い、同じ感覚で日本の経営史上最もドラスティックな抜擢人事を断行したのである。

ただ、オーソドックスな子どもへの事業承継に関して、幸之助は一つ条件を付けている。それは、後継社長が最高の熱意をもっていなければいけないというものだ。「熱意というものは、人から教えてもらって出てくるというものではありません。それはやはり、自分の腹の底から生まれてくるものです。そういうものがなかったら、どんなに頭がよくても、口でうまいことを言っても、小手先だけになってしまって、人の信頼も協力も得られない」(『経営のコツここなりと気づいた価値は百万両』)と言うのである。

これまた至言であろう。昨今の経営環境や戦略によっては、事業継承のスタイルはあらゆる可能性をはらんでいるのではないか。とすると、幸之助のいう「60パーセント主義」と「運命」と「熱意」が中小企業事業承継のキーワードになるのかもしれない。

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