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《水上印刷インタビュー》
衰退業種の枠を破った印刷会社の「面倒くさいを解決する」サービスとは?

2018年10月10日 公開

THE21編集部 <PR> 提供:東京都

2017年度の「東京都経営革新優秀賞」にて「最優秀賞」を受賞した水上印刷株式会社。衰退業種と呼ばれることが多い印刷業界にありながら、2ケタ成長を続けるそのビジネスモデルの秘密とは。代表取締役社長の河合克也氏にお話を伺った。

業界の状況にかかわらず、伸びる企業は伸び続ける

東京都新宿区に本社を置く水上印刷は、創業72年を誇る歴史ある会社。だが、そのビジネスモデルは斬新だ。コンビニや外食産業などをターゲットに、販促物の制作だけでなくその前後の工程まで取り組んだ「インストアプロモーションのフルサービス」を展開。具体的には、販促物を制作するにあたっての事前の市場調査や企画提案、デザインから、印刷後の販促物の配送、在庫管理まで一括して請け負うことで、顧客の「面倒くさい」を解決している。このモデルが顧客に強く支持され、衰退業種と言われがちな印刷業界の中で、2ケタ成長を続けている。

「確かに、ご挨拶の際に私が印刷会社の人間だとわかると、『大変ですね』と言われることが多いのは事実です。ただ、私は決して印刷業界が厳しいとは思っていません。そもそも業界を言い訳にしたくないですし、何よりも『成長する産業などない、成長する企業があるだけだ』と考えているからです。

印刷だってまだまだやれることはあるし、そもそも、印刷会社だから印刷だけをしなくてはいけないということもない。当社の『フルサービス』も、まさにそうした発想から生まれたものです」

ある年、突然訪れた「売上げゼロ」の危機

とはいえ、紙の印刷物が減っているのは事実だ。象徴的な例として、この20年で『少年ジャンプ』の部数は7割減った。同社を大きな改革に駆り立てたのもやはり、この紙離れだった。しかも、その大波は突然やってきたという。

「かつて、当社の主力商品は写真のフィルムのパッケージでした。ただ、ご存じのようにデジタルカメラの発達で、フィルムの需要は2000年ごろから徐々に減っていった。それが一気に加速したのが2006年で、翌2007年にはほぼゼロになってしまいました。

もちろん、いずれこうなることは前々から予想できたことですが、わかっていたのになかなか変わることができなかった。売上がゼロになって初めて、危機感を持って変わらなくてはならないと痛感したのです」

世の中全体が「面倒なことを避ける」方向へ?

では、水上印刷は何を目指すべきか。数度にわたる海外視察なども行ない、徹底的に検討を重ねた。

「当時、グローバル化で海外進出をする企業も多かったのですが、印刷業は特性上、グローバル化は難しいと考えました。むしろ、ローカルに強いパイプを作ることで、選ばれ続ける会社になるべきではないか。実際、海外の印刷会社の中には、地域との強いつながりで好業績を上げている企業がたくさんありました。

では、どうしたら選ばれ続ける企業になれるのか。世の中の流れを見ると、社会全体が『面倒くさいことを避ける』方向に進んでいると感じました。電話をしなくてもメールやSNSで交流できる。キャッシュレス化でお金を取り出さなくてもモノを変える。そもそも、外出しなくてもネットでモノが買える……。

印刷に関しても、その前後にはいろいろな『面倒』があります。販促物の作成なら、事前にどんなものを作るべきかリサーチし、コピーやデザインを考え、完成した後には各店舗にそれを送ったり、在庫の管理もしなくてはならない。印刷はあくまで、その一部でしかありません。

ならば、印刷の前後に存在するお客様の面倒をすべて請け負ってしまえば、お客様に選ばれ続ける会社になれるのではないか。そう考えたのです」

石の上にも5年、厳しい改革を支えたものとは?

方向性は見えた。だからといって、すぐに結果が出たわけではない。

「軌道に乗るまで5年かかりました。会社の仕組み自体を変えねばなりませんし、社員にはデザインやICT、ロジスティクスなど、今までやったことのない仕事に挑戦してもらわなくてはならない。しかも、世の中にほとんど存在していないサービスでしたから、お客様に説明して即採用、とはまずなりません。今でも商談に数年かかることはしょっちゅうです。

2012年頃にやっと反転に転じましたが、それまでの5年は売り上げも低迷し、本当に厳しい時期でした。特に、会社の売上が縮小していくと、社内の人間関係は顕著に悪化します。だからこそ、二度とこんな思いをしたくない、ということがモチベーションにもなっています」

この時期を乗り越えられた要因として、河合氏は「社員のオーナーシップ」の重要性を強調する。

「『社員一人ひとりに自分事として考えてもらう』ことです。たとえば前述の海外視察も、社員を大勢連れて行きました。もし、社長一人が視察に行って『これをやるぞ!』と決めたところで、社員はついてこないでしょう。自分の目で見て考えた結果ならば、一緒に取り組んでくれる。つまり『巻き込む』ことが大事なのです。

また、クリエイティブやICT、ロジスティクスなどを始めるにあたっては外部人材も採用しましたが、半分は今いる社員に仕事を変えてもらうことで対応しました。

当然、反発もありました。ただ、私がその際に社員に伝えたのは、『これだけ変化の激しい時代、一つの仕事で定年まで、ということはありえない』ということです。逆に言えば、10年ごとに新しいキャリアを積めば、20歳から70歳までに5つも新しいキャリアを手に入れることができる。その重要性を伝えるとともに、積極的なローテーションも行ないました」

経営革新優秀賞を受賞。その評価された点とは?

こうした取り組みが実を結び、2012年以降、同社は2ケタ成長を継続。さらに、その経営手法が評価され、2017年、東京都が主催する「東京都経営革新優秀賞」の「最優秀賞」を受賞した。

「やはり賞を頂くのは励みになりますし、特にブランディングという面からは非常に大きなメリットを感じています。とくに採用面での効果は大きいですね。

受賞できた理由は、もちろんビジネスモデルの変革を評価いただいたこともあると思いますが、もう一つは『すべてをオープンに』という当社の姿勢を評価いただいたこともあると思っています。

たとえば、決算書の数字はすべての社員にオープンにしています。会社全体の数字がわかれば、社員のオーナーシップも高まりますし、自部門だけ良ければいいというセクショナリズムから脱却できます。そもそも、『セクショナリズム』という言葉が出た時点で、経営者として失格。社員すべてが『二階層上の視点で判断する』ことができるようになることが重要だと思っています。

そしてもう一つは、『人づくり』へのこだわりを評価いただいたのだと思います。実際、このビジネスモデルは人がすべてと言っても過言ではありません。営業担当は印刷のことだけでなく、クリエイティブやICT、ロジスティクスのことにまで精通していなければ、お客様にサービスを説明できません。これらの知識を持ち、お客様の問題解決に対する提案ができる人材の育成に心血を注いできました。

最近は同様に『フルサービス』を標榜する企業が出てきていますが、全く心配していません。当社に「人」がいる限り、決して負けることはないと自負しているからです。

決算書の貸借対照表には『人の価値』は載りませんが、もし載ったとしたら、当社の最大の資産は『人材』ということになると思います」

産業交流展2018 では、「つなげるチカラ、つながるミライ」をテーマに、優れた技術や製品、サービス、斬新なアイディアやノウハウを持った先進的中小企業が集結します。多様な人や企業のチカラを、自社の技術やサービスとつなぎ、出会いや交流を通じて、革新的な価値の創出を目指す中小企業のミライをつくるチャンスを提供します。

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