ホーム > ヴァーチャル産業交流展2020特設サイト > はやぶさ2プロジェクト「世界を驚かせた挑戦」は中小企業の技術が支えた
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2019年10月10日 公開
(写真撮影:まるやゆういち)
2010年、日本中を感動させた「はやぶさ」の奇跡の帰還から8年。2018年6月に小惑星リュウグウに到達した「はやぶさ2」。小惑星上にクレーターを作るという異例の実験の成功で世界を驚かせた。この快挙の陰には、日本の中小企業の技術も数多く生かされているのだという。「はやぶさ2」ミッションマネージャとして最前線に立つ吉川真氏にお話をうかがった。
※本稿は2019年10月に取材、公開したものです。
1962年生まれ。栃木県栃木市出身。東京大学大学院理学系研究科博士課程修了後、通信総合研究所(現在の情報通信研究機構)にて、人工衛星やスペースデブリの軌道などを研究。宇宙科学研究所に異動後は、火星探査機のぞみ、小惑星探査機はやぶさなどの軌道決定やプラネタリーディフェンスに携わる。宇宙科学研究所准教授。理学博士。
3億キロ先にあるわずか直径1キロほどの小惑星に到達し、物質のサンプルを回収して地球に帰還する。そんな、極めて困難なプロジェクトに挑んでいる「はやぶさ2」。現在のところ、大きなトラブルもなく順調に進んでいるという。
「これはやはり、想定外のトラブルが相次いだ前回の『はやぶさ』プロジェクトの経験を活かせていることが大きいです。やはりプロジェクトは継続することが大事だと痛感しています」
そう語るのは、「はやぶさ2」ミッションマネージャの吉川氏。
実は「はやぶさ2」プロジェクトは、「はやぶさ」帰還前の2006年にスタートした。だが、予算がなかなか通らず、実現が危ぶまれていた。
「決め手となったのは、なんといっても2010年の『はやぶさ』の帰還です。明らかに世の中の風向きが変わりました。その結果、無事に予算が通ったのです。
この経験から、情報発信の重要性を改めて感じました。ミッションマネージャには様々な役割がありますが、対外的な情報発信もその大きな仕事です。日本語はもちろん英語でも同時に発信しています」
世界的な関心を集める「はやぶさ2」プロジェクトだが、中でも注目されたのが、今年4月に行なわれた「衝突実験」。弾丸を発射して小惑星に人工クレーターを作るというものだ。
「我々のミッションの一つは『地球及び生命の起源を探る』ということです。地球は元々、太陽の周りのガス円盤の中にある小さな天体が集まり、一度ドロドロに溶けて、それが冷えて固まったもの。小惑星はいわば、惑星になる前の姿であり、地球の基になった物質があると考えられます。
そんな物質を採取するために、小惑星に弾丸を衝突させてクレーターを作るのです」
この試みは、もちろん世界初。ここで用いられるのが「衝突装置」だ。
「円錐形の容器の中に爆薬が入っており、爆発すると底の銅板が弾丸状になって飛んでいくという構造なのですが、そこには複数の中小企業の技術が用いられています。例えばケースと銅板との溶接は、溶接を専門とする中小企業が方法を開発してくれました。その他、ケースなども、別の中小企業と共同開発しています。
こうした努力が実り、当初の3mほどという予想を大きく上回る、直径15mというクレーターを作ることに成功したのです」
このように「はやぶさ2」プロジェクトには、大小問わず多くの企業が参画している。
「世界で初めてのものを作るわけですから、仕様書を書いて渡して終わり、では済みません。
お互い何度も足を運び、数々の問題点を一緒にクリアしていく必要があります。共同開発の相手は大企業もあれば中小企業もあり、技術と熱意さえあれば規模の大小は関係ありません。
実験と修正を何度も繰り返すので、レスポンスの速さが重要です。そういった意味では、小規模なチームや企業のほうが、小回りが利いてやりやすいとも言えますね」