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ニュータイプの中小企業(後編)

<PR>提供:産業交流展2020実行委員会

2019年10月10日 公開

山口 周(独立研究者)

中小企業だからこそ、
「意味がある」商品づくりやサービスを生み出せる

中小企業こそ不確実な時代に強い

――大企業と中小企業とを比べたとき、どちらが「意味がある」を追求して、不確実な時代に対応できるニュータイプの企業に適しているといえますか。

山口

私は中小企業だと思います。いま、好調を維持する日本企業の多くは、規模がさほど大きくない専業メーカーです。たとえば家電メーカーのバルミューダ(従業員数約110人)は、この10年間で売上を1000%アップさせている。対する総合系の大手メーカーのなかで、平成の30年で売上高を倍以上にした企業を挙げられるでしょうか? 旭化成などはわずかな例外ですが、その他は軒並み衰退しています。さらにいえば、同期間の東証一部と東証二部の株価をそれぞれみると、後者のほうが伸び率は高い。大企業はもはやプレゼンス(存在感)を失っている。

――中小企業の強みはどこにあるでしょうか。

山口

大企業では一つのプロジェクトに関わる人が多く、何がしかの意志決定を行なう際に分かりやすいモノサシが必要になります。そのモノサシの最たる例が「数字」です。従来を超えるスペックの製品をつくるといえば、それ自体は間違いではないから、異論を挟みにくい。結果、すでに飽和状態にあるはずの「役に立つ」製品が量産されるのです。 一方の中小企業は、少人数でディスカッションをしながら意志を決定できます。じつは、これが「意味がある」製品づくりやサービスを行なう上では重要となります。「意味がある」とはつまり、「世の中をこう変えたい」「こういうものをつくりたい」など主体的かつ抽象的な想いですが、そうしたイメージは関わる人数が少ないほど共有しやすいからです。その意味で、中小企業に大きな可能性があるのは間違いない。

――とはいえ、いまだにオールドタイプから脱却できていない中小企業が存在するのも事実です。

山口

たしかに、「役に立つ」から「意味がある」の領域にシフトすることは容易ではありません。これまで論理やスキル、市場調査やデータで経営を行なってきた企業が、アートやセンス、直感を重視しなくてはならないのですから。リーダーに大きな権限を渡して、センスを委ねるガバナンスでなければ、ニュータイプの企業にはなりにくい。その意味でも、中小企業のほうがニュータイプにシフトしやすいのです。

「不退転の覚悟」はもっとも不必要な価値観

――「意味がある」製品づくりやサービスを行なう上では、何を意識すべきでしょうか。

山口

難しいのは、実際に市場に出してユーザーのリアクションをみる必要があるということです。スペックなどの明確な判断軸がない以上、プロジェクトを始めた段階で、「必ず世間に受け入れられる」というエビデンスはありません。そこで重要になるのが、トライ&エラーを繰り返すことです。しかし日本社会では、そうした空気が絶対的に足りていません。
先日、ある会議で興味深い資料を目にしました。国内の有力シンクタンクが発表したものですが、日本の経営者が大切にしている価値観トップ5の一つに「不退転の覚悟」が挙げられていました。その資料を見て、私は愕然としました。GAFAの経営者に、不退転の覚悟を大事にしている人など一人もいません。 たとえば、Amazonは上場して以降、70もの事業を始めて、3分の1はすでに撤退しています。彼らには、一度始めた事業はやり抜くという思想など露ほどもありません。典型例はスマートフォン事業で、2014年夏にFirePhoneを発売しましたが、1年後には事業撤退を発表。利用していた多くのユーザーが「サービスはどうなるのか」と聞いても、Amazon側は「残念ながら続けられない」の一言です。

――なんとも無責任な話です(笑)。

山口

日本人の倫理観ならばそうでしょうが、トライ&エラーの連続で拡大してきたのがGAFAです。不確実な時代では、どんな予測を立てても上手くいく保証はありません。計画など、もはや何の意味も成さないのです。そこで採るべき方策は、とにかく手数を増やし、いくつものチャレンジをするに他ならない。Amazonは、スマートフォン事業で成功する可能性がないと見通したら、その資源を無駄遣いせずに他の事業に回すべきだと考えた。同社のジェフ・ベゾスCEOにとって、目標とはあくまでAmazonという企業を成長させることであり、始めた事業全てをやり抜くことは、そのための手段の一つに過ぎないのです。

――日本人は「手段」と「目的」を混同しがちなのかもしれません。冨山和彦氏は、『Voice』2019年8月号で「利益を稼ぐことよりも、『一括採用』『終身雇用』『年功序列』といった制度を守ることが優先されている」と指摘しました(「GAFAに怯えている場合ではない」)。

山口

繰り返すようですが、社会全体がいまだに昭和的価値観を守るべきという「空気」に侵されています。
勝ち目がないと分かっていながら、誰も止められなかった先の大戦から何も変わっていない。「不退転」を掲げてしまえば、周辺状況がどれだけ変わっても撤退できないことになる。そんな不合理な話はないでしょう。

――さらに言えば、あとで撤退できないと分かっていたら、スタートに必要以上に慎重になります。それでは大胆な発想やアイデアは生まれません。

山口

まさしく負のスパイラルです。不確実な世界のなかで、保証ある事業を始めようなどと考えれば、その企業は何も成せないまま生涯を閉じます。

1%の相手に刺さるビジネスを

――山口さんが注目する日本の中小企業はありますか。

山口

よくお話しするのは、広島の家具メーカー・マルニ木工の例です。同社は1928年創業の老舗ですが、21世紀に入ると東南アジアから入ってくる家具に押されて業績が悪化しました。山中武社長は大いに苦悩したといいますが、そこでたどり着いたのが「HIROSHIMA」という一脚10万円以上する椅子の製作・販売でした。「本気で自分が欲しいと思う椅子で勝負したい」と考えた末での決断ですが、やがてAppleのチーフ・デザイン・オフィサー(当時)を務めるジョナサン・アイブの目に留まり、同社へと大量納品するようになりました。いまや国内のみならず、海外での販売も好調です。

――オールドタイプの中小企業がマルニ木工の例から学ぶべきは何でしょうか。

山口

刮目すべきはモノサシをシフトした点です。かつての彼らは流通業者などの意見や要望を重んじていましたが、「HIROSHIMA」では自分たちの喜怒哀楽や好き嫌いを制作に活かして、人の感性に訴えかける椅子を生み出しました。そうした商品は、かつてならば人知れず埋もれていたかもしれませんが、いまではSNSを用いればいくらでも拡散できます。

――まさしく、限界費用ゼロで世界中にアピールすることができる。

山口

現代では、そうして情報を受け取った人のうち、1%でも強く共感すればビジネスになり得ます。顧客は世界中にいる時代であり、彼らは本当に良いと感じたものであれば、無料かつ自分たちの意志で情報を拡散してくれます。だからこそ、十把一絡げの人びとの好みに合わせた挙句、結局は誰の心にも刺さらない商品ではなく、1%の相手でも深く刺さる製品が強いのです。
さらにいえば、マルニ木工には世界に通用する技術がありました。ここで「マルニ木工は特別な技術をもっていたから成功した」と考えるのは間違いです。これだけ厳しい時代に存続できている企業は、規模の大小に関係なく、他者が真似できない中核的な能力を一つはもっています。そうでなければ、すでに淘汰されていたはずだからです。ならば、やるべきことは明確です。自分たちがもつ能力を市場にマッチさせて、「意味ある」製品づくりやサービスに繋げていく。それこそが、新時代の企業に求められる姿勢です。

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