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空飛ぶクルマが「当たり前」になる日

2019年10月21日 公開

宮内純枝 SkyDrive取締役・事業責任者

車が空を飛ぶ日は、果たして来るのか――。誰もが、一度は想いを馳せたことがあるはずだ。とくにここ数年、自動運転やEV(電気自動車)、ドローンなどの発達により、「移動」への変革の期待が高まっている。そうしたなかで、「空飛ぶクルマ」の開発に邁進するのが「SkyDrive」である。
SkyDriveは今年9月、IT先進国・ドイツにおいて、次世代イノベーションを提案する総合技術エグジビション「IFA NEXT 2019」へ出展するなど、いま最注目のスタートアップの1つだ。今回は同社で事業責任者を務め、11月14日(木)、東京ビッグサイト青海展示棟で行なわれる「産業交流展」で講演を行なう宮内純枝氏に話を聞いた。

市場は「生まれるもの」ではなく「つくるもの」

2050年までに誰もが空を飛べる時代をつくる――。それが、SkyDriveが掲げる目標だ。まずは同社の歴史を紐解くと、2012年に、航空機・車・ヘリコプターなどモビリティのエンジニア、起業家など、さまざまなキャリアをもつメンバーが集まった「CARTIVATOR」の発足から始まった。

CARTIVATORとは、「モビリティを通じて次世代に夢を提供する」をミッションとする組織であり、株式会社SkyDriveは、昨年(2018年)7月に、そのメンバーを中心に設立した。現在は東京都新宿区に本社を置き、愛知県豊田市で「空飛ぶクルマ」の開発を行なっている。

2012年といえば、市販のドローンが発売されたばかりの頃だ。「空飛ぶクルマ」はいま以上に現実性を感じられない時代だったようにも思えるが、宮内氏は次のように語る。

「CARTIVATORが発足した当時は、たしかにドローンすら一般的な認知度はありませんでした。だからといって、『空飛ぶクルマ』をつくることにネガティブな雰囲気はなかったと聞いています。そもそもCARTIVATORは、新しいモノをつくることが好きな人が集まり、『新しいモビリティをつくろう』というシンプルな想いからスタートした組織です。いくつもの次世代モビリティのアイディアを検討し、やがて、『空飛ぶクルマをつくろう』となり、徐々に活動が具体化していきました」

とはいえ、当時から「空のモビリティ」には市場があると確信していたからこそ、「空飛ぶクルマ」をつくるという発想になったのだろうか。

「CARTIVATORは、あくまでも有志団体での活動であって、目標は2020年のデモフライトでした。事業化の議論は、株式会社の設立の検討と同時に始まりました」

「少なくとも私個人は、『市場性が見えている』という前提で、このビジネスを始めたわけではありません。いまならば、たとえばAIは工夫次第でさまざまな可能性があると想像できます。しかし、エアモビリティにおいては、『いかに市場を創るか』という視点です。確度が高いビジネスなら、競合他社が国内に存在しているはずですよ」

たとえばVRなどは、一時期の期待と比べると市場の盛り上がりはエンタメ業界など限定的になっている。予想以上に市場が膨らまないケースは少なくないのだ。その意味では、「誰が」「何を」をやるかが、空のモビリティを成功させる鍵となるが、宮内氏は、「『誰が』に関しては、SkyDriveのメンバーは自分たちが担うつもりで取り組んでいます」と言葉に力を込めた。

「後がない」中小企業ゆえの覚悟

「空飛ぶクルマ」が普及すれば、都市部の渋滞を避けた通勤や、離島・山間部での新しい移動手段となる。さらには災害時の救急搬送や迅速な物資輸送など、利点を挙げればキリがない。一方、開発に際して現時点で直面している課題は何か。

「大きくは3つあって、1つは純粋に『技術』です。『空飛ぶクルマ』は、誰もが安全に操縦ができることはもちろん、軽量化を進めて一定の飛行距離を可能にしなくてはサービスとして成立しません」

「2つめの課題は、社会受容性です。新しい製品やサービスには、心の壁が必ずあると思っています。なかでも、飛ぶモノに関しては、その抵抗は強いと思います。『空の移動』が、いかに安全で、生活を豊かにする産業なのかを、世の中に示せるか、が重要と考えます。最後は、法整備です。たとえば、空飛ぶクルマは何の免許で操縦できるのか? 離着陸場、飛行の高度など、整備すべき事項は多くあります」

この三つの課題を解決していくためには、各方面のステークホルダーと協力していく事が不可欠という。

「“空の産業革命”と経済産業省、国土交通省が発表している通り、ライフスタイルを変えるチャレンジなので、既成概念に囚われない発想が求められます。前例がないからといって躊躇(ちゅうちょ)ばかりしていたら、文字どおり一歩も前に進まない。いかに早くPDCAを回せるかが重要です。そう考えると、大所帯ではない中小企業だからこそ、意志決定をしやすいというメリットを活かせているかもしれない」

つまりは、SkyDriveは身動きが取りにくい大企業ではないからこそ、彼らが足踏みするようなリスクある決断を下せる強みがある……。そう早合点していると、「もちろん、実際はそんな簡単な話ではありませんけどね」との言葉が返ってきた。

「先ほど、『PDCA』という言葉が出しましたが、もしも致命的な失敗をしてしまえば、私たちは、経営が難しくなるリスクがあります。その意味では、当然ではありますが、中小企業は大企業よりも『後がない』のは確かです」

だからこそ現実をしっかりと見据えたうえで、ギリギリのリスクをとることが大切です――。宮内氏の明瞭な語り口に、SkyDriveをはじめ日本を支える中小企業の「強(したた)かさ」を見た思いがした。

多くの自治体から寄せられる期待の声

大きな目標を成し遂げるには、いかに「周囲を巻き込むか」が大切である。SkyDriveはその点、国や自治体との連携はもちろん、多くの企業とも連携を行なっている。たとえば、今年5月には愛知県豊田市と「新産業創出へ向けた『空飛ぶクルマ』開発に関する連携協定」を締結している。

先ほど、宮内氏は取り組みの三つの課題一つして「技術」を挙げたが、豊田市との連携協定には、「開発や実証実験の場の提供」などを市側が行なうことが明記されている。自治体との提携は、開発に際して広い敷地を必要とする「空飛ぶクルマ」実現に向けて必要不可欠だ。

ここで頭に浮かぶのが、一般的なビジネスの現場でしばしば聞く「国や自治体は、もっと柔軟に対応してほしい」という声だ。SkyDriveは、どのように自治体と連携しているのか。

「ほかの企業のケースは分かりませんが、少なくとも私たちの取り組みにはご理解いただき、有難いかたちでお付き合いさせていただいています。それは国や自治体が、これまで大きなイノベーションが起こらなかった『空の産業』に対して期待を寄せているからでしょう」

「『空飛ぶクルマ』『空の移動の市場』の誕生は、雇用が発生し、サプライヤーも、利用者も生まれる、大きな経済効果へと結びつくことでしょう。大事なのは、1つの目標を軸に、いかにお互いが良い循環を生むことができるか。ポジティブな大きな気運を創ることだと思います。現時点では多くの自治体から『空飛ぶクルマ』について期待のお言葉をいただいています」

大きな目標を成し遂げるには、いかに「周囲を巻き込むか」が大切となる。その点、SkyDriveは国や自治体に留まらず、多くの企業と連携しているからこそ、これだけ大規模なプロジェクトを進められているのだ。

「未来の当たり前」となるモビリティを創る

海外に目を向ければ、Airbus(フランス)やBoeing(アメリカ)が同じく「空飛ぶクルマ」の開発を進めている。彼らと比べたとき、SkyDriveの現在地はどのあたりなのだろうか。宮内氏が具体的に語ってくれた。

「世界のほうが進んでいるのは事実です。しかし、その差はまだ十分に差を取り戻せる範囲だと捉えています。まず、既存の航空機メーカーが開発する大型の機体と、スタートアップの参入が多い小型の空飛ぶクルマの2つのセグメントがあります。SkyDriveは後者です。後者のプレイヤーについて、安定的なフライトが実現してきたのは、2016年以降のことです。私たちが昨年末に経済産業省とともに発表したロードマップでは、今年中に試験飛行や実証実験等を行ない、2020年代半ば、とくに2023年を目標に事業をスタートさせて、2030年代から実用化をさらに拡大させていくこととしました」

「そのほかでいえば、飛行距離に影響するバッテリー、あるいは消音技術については、まだ大きな差は出ていない。空飛ぶクルマの実現に向けて、ロードマップを発表した国は日本以外に例はなく、メーカーにとって恵まれた環境にあります」

最後に、あらためて「空飛ぶクルマ」の開発に懸ける想いを伺った。

「会社として掲げているのは、空で移動することで得られる『利便性』という価値と、空を飛ぶことによって得られる楽しさなど『感情』の価値、その両方を提供するモビリティをつくることなんです。いまは存在しない未来の当たり前を創るため、多くの課題に向き合っていきたいと思っています」

◆講演情報◆

11月13日(水)~15日(金)に東京ビッグサイト青海展示棟で「産業交流展2019」というイベントが開催される。宮内氏が登壇するのは11月14日(木)13時~14時、テーマは「日本発 空飛ぶクルマのある未来」である。入場無料。『空飛ぶクルマ』への想いと未来をより詳しく知りたい方は、足を運んでみてはいかがだろうか。

産業交流展2019 では、「つなげるチカラ、つながるミライ」をテーマに、優れた技術や製品、サービス、斬新なアイディアやノウハウを持った先進的中小企業が集結します。多様な人や企業のチカラを、自社の技術やサービスとつなぎ、出会いや交流を通じて、革新的な価値の創出を目指す中小企業のミライをつくるチャンスを提供します。

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