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パックン流・相手の心をつかむ話し方

2015年05月14日 公開
2023年02月01日 更新

パトリック・ハーラン(タレント/お笑い芸人)

パックン

印象に残りやすいストーリーを組み立てる

続いて欠かせないのが、相手の気持ちをツカむ「パトス」だ。

「パトスは、感情に訴える説得要素です。たとえば、相手または集団の同情、怒り、憧れ、笑い、恐怖などがキーワード。これらを引き出すことで、論理とは関係なく受け入れて動きたくなるような効果があります」

「人の心に残る話し方」として、「ストーリー」を構成することも効果的だと話す。ストーリーとは、登場人物・設定、そして転換で変化を作ったのちに、結論へと導くことだ。

「たとえば、皆さんはニュートンが万有引力を発見した年を覚えていますか? また、そのときの地名を答えられますか?
ほとんどの人は、答えられないのではないでしょうか。しかし、そのときのエピソードならば、誰もが覚えているはずです。『ニュートンが庭で考え事をしていたとき、リンゴが木から落ちてきて、それを見て万有引力についてひらめいた』。委細を覚えていないのに、エピソードは記憶に残っている。これこそ、ストーリーの力です」

こうしたストーリー性を持たせた話をするのが、多くの日本人はあまり得意ではない。なぜなら、このような話を構築する訓練をしていないからだ。

「ストーリーを構成して話すためには、日頃から、ストーリーを作る練習をしておくと良いと思います。大学の講義では、そうした課題を出します」

 

困ったら「時間稼ぎ」の言葉を使おう

テレビに出演しているときには、とっさにコメントを求められることも多い。言葉に詰まってしまったときはどうすれば良いのだろうか。

「コメンテーターとして出演しているときなどは、突然、専門外の話を振られることもあります。
そんなときには焦らず、『数秒の時間稼ぎ』のための言葉を言いながら、次に言うことを考えます。僕がよく使うのは『不思議なことに』や『以前から思っていたのですが』といったフレーズです。
わかりやすい説明の達人として知られる池上彰さんは、『それはいい質問ですね』とよく言いますよね。あれも実は、そう言いながら質問の答えを考えるための時間稼ぎの役割があるのではないかと思います。池上さんが時間稼ぎのつもりで使っているかどうかはわかりませんが」

伝わる話し方の3つ目の要素として、「ロゴス」がある。

「ロゴスとは、知性に訴える説得要素です。具体的には、三段論法や比喩、例示などのテクニックです。ただし、ロゴス=論理というわけではなく、ジョークや言葉遊びなど、言葉の力そのものでインパクトを与えることも当てはまります。
ロゴスを高めるためには、簡潔な言葉で言い切ること、論理的な話し方を心がけること、言葉遊びができるよう語彙を増やすことなどが大事です。
これは少し高等テクニックだと思われる人もいるでしょう。実際、『あの人は話が上手い』と思うような人は、ロゴスに長けていることが多いですね。
実は、エトス・パトス・ロゴスは同等の力を持つものではなく、一番にエトス、二番目にパトス、最後にロゴスです。どんなに正しい言葉遣いで論理的に話しても、エトス(信頼度)とパトス(感情)が伴わなければ伝わらないのです。話し下手と自覚している人ならば、まずはエトスとパトスを組み込んだ話し方を目指しましょう。
練習すればできるようになります。自分の周囲にいる話が上手な人をよく観察して、真似してみるのも良いでしょう。何もしないで話し上手にはなれません。練習と実践あるのみです!」

《『THE21』2015年5月号より》

パトリック・ハーラン
Patrick Harlan
タレント

1970年、アメリカ・コロラド州生まれ。ハーバード大学比較宗教学部卒業。93年、来日。97年、吉田眞氏(マックン)とお笑いコンビ「パックンマックン」を結成。テレビ東京『7スタライブ』、NHK『実践!英語でしゃべらナイト』をはじめ、多くのテレビ番組に出演。2012年より、東京工業大学非常勤講師として「コミュニケーションと国際関係」を担当。

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