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トップ営業マン直伝! セールスの4つの手順

2015年05月19日 公開
2023年05月16日 更新

川田修(プルデンシャル生命保険エグゼクティブ・ライフプランナー)

「知らない」「ほしくない」をあえて引き出す質問をする

生命保険会社のトップセールスとして知られる川田修氏。
多くのお客様の心を掴んでいる川田氏が大切にし、実践していることとは──。
生命保険だけでなく、どんな業種の営業マンも活用できる「4つのプロセス」と、その際に使える「ひと言」を教わった。

<取材・構成 塚田有香 写真撮影:鶴田孝介>

 

初対面の際は、商品ではなく、「理念」を伝える

 売れる営業マンと売れない営業マンの違いは、理念があるかどうかです。なぜ自分はこの仕事をしているのか、自分が扱っている商品が世の中にどのような良い影響を与えられるのか。それを自分の言葉で語れる営業マンは必ず売れています。
 私の場合、このように理念を語っています。初めてお会いしたお客様には、まず「プルデンシャル生命をご存知ですか?」とうかがいます。相手が「知らない」と答えたら、「なぜ知られていないのだと思いますか?」とお聞きするのです。多くのお客様は「なぜだろう?」という顔をされるので、「テレビCMを流していないからです」と答えたうえで、こんな話をします。
「弊社の創業者である坂口(陽史氏)は、社員たちにこう話したことがあります。『テレビCMを流せば、その費用はお客様にご負担いただくことになる。10年や15年でこの会社を日本一にしたいなら、お金をかけてテレビCMを打てばよいだろう。しかし私が作りたいのは、100年後に日本一になる会社だ。そのために必要なのはただ1つ、お客様に支持され続けることだ』と。そして『自社の商品を売ってくれとは言わない。お客様に正しい保険の考え方を広めてほしい。そうすれば、おのずと100年後には日本一の会社になっているはずだ』と言ったのです。その言葉が私の芯にずっとあります」
 そう私の理念をお伝えしたうえでこう続けます。
「もし私がお客様を優先していないとお感じになったら、すぐに席をお立ちください」
 こう話すことで私の人となりを知っていただくのです。初回の訪問では、保険の話は一切しません。そして最後に「もう一度だけ、今度は保険のお話をするお時間をいただけませんか?」とお願いすると、ほとんどの方は「一度くらいならいいよ」と言ってくださいます。これも最初に「自分よりもお客様を優先します」という私の理念を伝えてあるからです。

 

「ニーズはない」と言われてからが勝負

 セールスのプロセスは「初回訪問」「ニード喚起」「解決策の提案」「クロージング」の4段階に分かれます。人間の消費行動は、すべてこのプロセスで推移すると考えていいでしょう。そして初回訪問の目的は、前述のように自分や自分の会社に興味を持ってもらうこと。それをせずにいきなりヒアリングや商品の提案をしても、お客様が「この営業マンから買おう」と思うことはまずありません。
 私の場合は、2度目の訪問から「ニード喚起」の段階に入ります。その目的は、お客様が抱える現状の不満や不安を掘り起こすこと。とはいえ、いきなり「現在どのような保険にお入りですか?」などとは聞きません。次にお客様にお会いしたとき、私はまずこう言います。
「今どうしても生命保険に入りたいニーズはありますか?」
 すると95%の確率で、お客様は「ない」と答えます。ただし、これは想定内。むしろ「ニーズはない」と言ってほしくて、この質問をするのです。そこで私が「そうですよね」と賛同の相づちを返すと、その場の空気感が変わります。お客様は営業マンに対して、「商品を売り込もうとする人」というイメージを持っているのが普通です。しかし、このやりとりをすれば、「私はあなたに無理に商品を売るつもりはありません」という意思表示になりますし、同時に自分自身への宣言になるのです。するとお客様は警戒心を解いてくれ、何も聞かなくても「実は随分昔に入った保険があるんだけど、内容がよくわからなくて」と自分から話してくださる方もいます。
 先ほどの4段階のうち、最も重要なのがこの「ニード喚起」です。ここで必要なのは「話す」ではなく「聞く」行為。だからこそ、お客様の素直な気持ちをお聞きするためには、まず警戒心を解くことが不可欠なのです。
 さらに、話をよく聞く理由はもう1つあります。それは、自分がお客様に関心と愛情を持つということ。そうでないと真剣に話を聞けないし、その方への最善の提案もできないのです。
 ただし私の場合、「聞く」といっても、保険とは直接関係のないことがほとんどです。私が聞くのは、お客様の「現在・過去・未来」について。現在どのような仕事や生活をしていて、過去にどこで生まれ育ってどんな体験をしてきたのか、そして未来の人生設計をどう思い描いているのか。こうした相手の背景を知れば、おのずとその人が何を大切にし、何を守りたいと思っているのかが見えてきます。それがお客様のニーズなのです。
 ニーズに合致したものがあれば人はものを買います。ですからニーズをきちんと把握できれば、次の「解決策の提案」では高度な話術やプレゼンテクニックは必要ないのです。「あなたのお望みに合うのは、この商品です」とごくシンプルに商品説明をするだけで十分。営業が苦手な方は、ここの「話し方」の部分を練習するケースが多いですが、実はそれよりも大切なことが“聞く”ことです。ただ聞くだけではなく、関心や愛情を持って聞くことができるかどうかが重要なのです。

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