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定年後「残ってほしい」と言われる人、お荷物になる人

2015年07月14日 公開

榎本雅一(経営人事コンサルタント)

定年後も評価される能力とは?

「高年齢者雇用安定法」の改正により、65歳までの雇用が会社に義務付けられた。しかし、だからといって「何もしなくても65歳まで安泰」と考えていては大間違い。40代、50代のうちから準備をしておかないと、会社のお荷物と言われてしまうかもしれない。
定年後雇用の現場を知り尽くす、経営人事コンサルタントの榎本雅一氏にうかがった。

 

実は「定年が65歳になった」わけではない

2013年4月から「高年齢者雇用安定法」が改正施行され、65歳までの希望者全員を雇用することが企業に義務づけられました。ご存知のとおり、従来は多くの企業で60歳が定年でしたが、厚生年金(報酬比例部分)の受給開始年齢が2025年度までに65歳へ段階的に引き上げられることなどを背景に、「生涯現役社会」を推奨する国が、5年間の雇用延長を企業に課したかたちです。

老後の家計に不安がある雇用者側にとって、雇用延長は大歓迎でしょう。ただし、法律が改正されたからといって、「それまでと同じように65歳まで働ける」と考えるのは大きな誤解。現状はそれほど楽観的ではありません。

まず理解していただきたいのは、この改正で「定年制が65歳に移行したわけではない」ということ。中には定年を65歳以上に延長したり、定年制そのものを廃止する企業もありますが、極めて少数。大多数の企業が導入しているのは、「65歳までの再雇用」です。つまり、入社時に結んだ無期雇用契約は60歳で終了し、いったん定年退職した後、労使間で話し合いをしたうえで、新たな雇用契約を結ぶということ。その場合、再雇用後は正社員ではなく、有期雇用の契約社員や嘱託社員に変わる企業が大半で、その契約も半年から一年ごとに結び直すケースが大多数です。

契約社員や嘱託社員になれば、賃金も正社員時代より低くなります。実際はあまりに安いと本人のモチベーションが下がるので、正社員時代の6割から7割を目安に賃金を設定する企業が多いようです。とはいえ、定年前の賃金が高額だった人ほど削減率は大きくなるため、大企業では賃金が半分以下に下がったという社員も少なくありません。

 

定年前と同じ仕事ができる人はむしろ少数

また、現在段階的に年金受給年齢が引き上げられていますが、年金受給後については、すでに労使協定で有期契約更新の要件を定めている会社の場合、ハードルが立ちはだかります。人事考課や出勤率、健康状態など、更新の設定基準は会社により異なりますが、いずれにしてもその基準を満たさなければ契約を更新できません。

法律では「希望者全員」としていますが、実質的にはその後ろに「会社側の提示した労働条件を了承する者」という但し書きが続くのです。この点を理解せず、「65歳までは安心だ」とのんきに構えていると、「あなたは会社の基準を満たしていません」といった理由で雇い止めになる可能性もゼロではないのです。

そして、再雇用の前後で最も大きく変わるのが、仕事の内容や社内での役割です。

再雇用後の高齢者には、責任の重い仕事や難易度の高い仕事は与えない。それが企業の原則的な考え方です。どの企業でも、若手の育成を優先したいからです。あと5年で職場からいなくなる高齢者に責任ある仕事を任せるよりも、若手に経験を積ませたいと考えるのは自然なこと。とくに大手企業の場合、50代のうちに役職を退いてもらう「役職定年制度」を導入している会社が半数近くありますから、60歳以上の社員は肩書きがなくなるケースがほとんどです。

 

好かれる高齢社員、嫌われる高齢社員

高齢者雇用の現状が、それほど楽観的なものではないことがわかっていただけたでしょうか。とはいえ、60歳以降も会社から高く評価され、重宝されている高齢者ももちろん存在します。そんな人材になれれば、会社も積極的に雇用を継続したいと考えるでしょう。

では、「会社から評価される(好かれる)高齢者」と「会社から評価されない(嫌われる)高齢者」は何が違うのか。私は高年齢者雇用アドバイザーとして、約300社の経営者や人事担当者からヒアリングをしてきましたが、その分岐点を図にすると〝凹〟の形になります。

凹みの下辺にいるのが、職能習熟度で言えば中間管理職レベルに当たる人たちです。自分の部下を指導・教育する力(指導職能)や担当するチームをマネジメントする力(監督職能)、部課長レベルでの意思決定をする力(判定職能)などを備えた人たちですが、実は中間管理職世代を越えて50代、60代になっても、ここから能力やスキルが上がらず、下辺に留まっている人が非常に多い。このように、職能習熟度は中途半端なのに年齢や社歴だけ上がってしまった人たちが、残念ながら「会社から嫌われる高齢者」となります。

もし「会社から好かれる高齢者」になりたいのなら、選択肢は二つしかありません。一つは、より高度な専門性やスキル、マネジメント力を身につけること。税務や法務など専門職能を極めるとか、新規ビジネスを生み出し、成長させる経営能力を備えた人なら、会社は高い賃金を払ってでも雇いたいはずです。

ただし、こちらの道を選択するには、相当な努力や勉強が求められます。それができない人はどうすればよいのか。残るもう一つの選択肢は、難易度が低い仕事や、マニュアル化された定型的な仕事への異動を受け入れることです。部長や課長だった正社員時代のプライドを捨てて、時にはパートやアルバイトと同じ職能レベルの仕事を黙々とこなす人材になるのです。

会社にすれば、たとえ単純作業でも、新たな人材を雇って一から教育するより、長く勤めてきて会社や業界のことをよく知っている人に任せたほうがコストもかからないし安心です。よって、こちらを選んでも、「会社から評価される高齢者」になることはできます。

その大前提として、新たな職場で同僚になった人たちと円滑にコミュニケーションを取ることが求められます。時には、正社員時代に部下だった人が上司になることもありますから、そうした環境の変化に柔軟に対応できる力が必要です。

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どこでも成果を出せる「仕事人」が評価される >



著者紹介

榎本雅一(えのもと・まさかず)

経営人事コンサルタント、中小企業診断士

1951年、東京都生まれ。法政大学法学部卒業。日本経営協会、日本マネジメントスクールを経て、ジェムコ日本経営、東海総合研究所(現・三菱UFJリサーチ&コンサルティング)などで企業内コンサルタント業務を手がける。90年に独立。2010 ~ 13年、高年齢者雇用アドバイザーとして都内300社の調査・相談を担当。著書に『60歳までに知らないとヤバイ定年再雇用制度の現実』(角川SSC新書)など。

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