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猪子寿之が語る スティーブ・ジョブズの言葉

2015年08月06日 公開

猪子寿之(チームラボ代表)

 

デジタルで人類を変えた天才

 

「信者」とも呼ばれる熱狂的なファンをつかんでいるアップル製品。それらを世に繰り出したのがスティーブ・ジョブズだ。しかし、ジョブズのすごさは製品にあるのではないとチームラボ代表の猪子寿之氏は言う。ジョブズの思想と、それを表明した「言葉」を、猪子氏にうかがった。

 

ジョブズは人間の手で人間を変えた

 

「ジョブズの言葉」については語録も出版されて、いろいろなものが世の中に出ていますが、僕の好きな言葉は「Here's to the crazy ones.」から始まるアップルの広告コピーです(後掲)。この言葉の中に、ジョブズが感じていたことがよく表われていると思います。

 しばしば、ジョブズが成功したのはテクノロジーとデザインの両方をよくわかっていたからだという評価がされますが、それは見当違いでしょう。彼が考えていたことは、「美しい製品を作ってたくさん売れたらいい」というビジネスマンの発想とは根本的に違います。

 彼は人間の脳を拡張することで人類を前進させようとした。そして、実際に前進させたと僕は思っています。

 脳を拡張するとは、どういうことか。

 そもそもパーソナルコンピュータというものは、デジタル領域によって記憶を増やしたり計算速度を上げたりする、脳を拡張させるものです。インターネットによって、デジタル領域は、手元のデバイスからネットワークの向こう側へと、さらに拡張しました。ジョブズをはじめ、シリコンバレーの人たちは、さまざまな方法で脳をデジタル領域へと拡張しようと、ずっと考えてきたわけです。

 その中でジョブズが独特だったのは、人間のための道具を作ろうとしたのではなく、人間そのものを変えようとしたということでしょう。たとえ神に歯向かうとしても、人間の手によって人間を変えていこうとしたのです。

 

存在感をなくすため「やむを得ず」美しかった

 

 デジタル領域へと脳を拡張するといっても、人間が物理的な世界にいる以上、デジタル領域と物理的な世界とをつなぐインターフェイスとして、デバイスはどうしても必要になります。つまり、デバイスは仕方なく存在するもの。ジョブズにとってデバイスは、言ってみれば、物理的な「汚物」だった。

「汚物」だから、できるだけ存在感をなくしたい。できる限り、小さく、薄くしたい。iPhoneは、ほとんど画面だけという、従来のプロダクトデザインではあり得ないものです。それは、ジョブズにとって、画面が存在するのは仕方がないけれども、それ以外はなくしたかったからです。可能な限り違和感なく、物理的な世界にいる人間がデジタル領域につながれることを目指したのです。

 デバイスの美しさというのは、あくまで手段。美しい製品を作ろうとしたわけではなく、「汚物」だから、せめて美しくした。デバイスなしにデジタル領域につながれるのなら、それに越したことはないと考えていたでしょう。

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著者紹介

猪子寿之(いのこ・としゆき)

チームラボ代表

1977年、徳島県生まれ。2001年、東京大学卒業と同時にチームラボを創業。大学では確率・統計モデルを、大学院では自然言語処理とアートを研究。チームラボは、プログラマ、エンジニア、数学者、建築家、CGアニメーター、Webデザイナー、グラフィックデザイナー、絵師、編集者など、スペシャリストから構成されているウルトラテクノロジスト集団。アート、サイエンス、テクノロジーの境界線を曖昧にしながら活動中。

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