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悩まず慌てず業務をこなす4つの技術とは

2015年08月19日 公開
2023年05月16日 更新

三谷宏治(金沢工業大学虎ノ門大学院教授)

 

「分ける」とは?
 スタンスを決めて、ムダに悩まない・行動しない

 ヒトはどれくらい自覚しているでしょう。自分の思索や行動の、どれくらいがムダで、どれくらいがそうでないかを。

 多くのムダはシゴト的渋滞から生まれています。流れえない量を流そうとすれば、道は必ず渋滞し永遠にそのままです。

 まずはすべてのテーマ(仕事でも私事でも)を「分ける」こと。

 何を高速道路に流し、何を流さないのか、どのテーマにまじめに取り組み、どれは放っておくのかを決めましょう。

 それを徹底することは、実は大富豪への道であったりもします。

「分ける」ための視点は、次の3つです。

(1)「こだわるもの」と「こだわらないもの」に分ける。

(2)そのための「決め方」を決める。

(3)「コミュニケーションルート」を分ける。
 

 この3つの視点で、悩みや渋滞というムダな時間は大幅に省かれます。

 そして、そこでできた時間の余裕を、まずはシゴトに再投資して好循環を生むのです。

 

「減らす」とは?
 やること自体を減らす

 整理術の王道は、整理の対象、つまりシゴトそのものを減らすことでした。

 でもこれが結構、難しい……。

 特にこのご時世、失職や減収につながらないように仕事を減らすのは、まったくもって簡単ではありません。私事だって、恋愛・結婚・子どもの教育・実家の整理と複雑になるばかり。

 それでも、手に余ることを抱えてシゴトを大渋滞させて、自爆するよりはマシです。ここではそう考えて、シゴトを減らすことを頑張りましょう。
 

 シゴトそのものを「減らす」ための3つの視点は、

(1) 安請け合いせず、上司や親にシゴトを「打ち返す」。

(2)「みなが困るまで待つ」ことで余計な障害を減らす。

(3)「メールの仕方に注意」して無用なコミュニケーションを減らす。

 です。これらは「ちょっと面倒な部下になる」ということでもあります。

 だからこそ、そこで生まれた余裕時間は、まずは私事でなく仕事につぎ込みましょう。

 仕事の質を上げ、上司や同僚、顧客の信頼を勝ち取るのです。そうすれば、きっと不要なチェックが減って、もっと時間が生まれるでしょう。

 

「早めにやる」とは?
 生産性の高いときだけそのシゴトに取り組む

 シゴトでも何でも、「早めにやる」といいことが一杯あります。

 早めにやる、とは実際には次のようなこと。

(1) 精神状態に合わせてシゴトをする。(→生産性が上がる)

(2)ムリそうなものを把握する。(→スタックしなくなる)

(3) 答のカケラや道筋が見えるところまで頑張る。(→後工程が楽になる)

(4) 初日頑張って1日分の余裕を持つ。(→保険ができる)

 逆に、〆切ギリギリにやることには、3つの大罪があります。

 その最大の罪は「ムリにやる」こと。
 そのシゴトに対して調子のでないときや気分が向かないときに、ムリに頑張ることほどムダなことはありません。

 次が「見えないままやる」こと。
 やればすぐわかる致命的な障害があるのに、それを見極めずに突っ込んでしまうことや、大体の答の方向性が見えていないのに進んでしまうことで、致命的な遅れは発生するのですから。

 最後が「バッファーのなさ」です。
 余裕がないから、たった1日分の遅れが致命傷になってしまいます。
 

 これらを避けるために「早めにやる」を実践しましょう。まずは「1日早めに手をつける」からで十分です。

 

「習慣にする」とは?
 習慣を戦略的に少しずつ身につける

 なんにせよ、これら「分ける」「減らす」「早くやる」を、日々実践しなくては意味がありません。でも、その実践があまりに苦痛であっては、長続きはしないでしょう。だから、無意識にできる「習慣」にしてしまうのです。

 元経営コンサルタントらしく、習慣の「戦略的」な身につけ方を考えてみました。「アンゾフのマトリクス」、「5フォース分析」(本で説明しています!)と『孫子』がお手本です。

「習慣にする」ための3つの視点は、 

(1) 身につけやすいものから手をつける。

(2) その新習慣に、自分が「入りやすく」かつ「出にくく」する。

(3) 各々の習慣化ツールを使う。

 です。

 新しい習慣を、自分にとって身近なものから、トライしやすく継続しやすくすると同時に、途中でやめたら大変な状態にしてしまうのです。

 そして「田の字(2×2マトリクス)」や、自分を科学し記録する「自己記録ノート」、指輪などの各種「リマインダー」、「行動チェックリスト」といった習慣化ツールを使うこと、です。

 それらを駆使して、「勢い」をつけながら習慣化の壁に挑みましょう。

 さて、「分ける」「減らす」「早めにやる」のどれから手をつけ、それをどう「習慣」づけしていきましょうか。焦ることはありません。でも、ここでの決断が、みなさんを人生(シゴト)の渋滞から救う、かも。

 詳しくは『シゴトの流れを整える』(PHP文庫)で!

著者紹介

三谷宏治(みたに・こうじ)

K.I.T.〔金沢工業大学〕虎ノ門大学院教授

1964年大阪生まれ、福井育ち。東京大学理学部物理学科卒業後、外資系コンサルティング会社に就職。以来19年半、ボストンコンサルティング グループ、アクセンチュアで戦略コンサルタントとして働く。2003年から06年までアクセンチュア 戦略グループ統括。途中、INSEAD(仏フォンテーヌブロー校)で経営学修士(MBA)修了。
仕事と並行して28歳頃から社会人教育に携わり始め、32歳からグロービスで「経営戦略」などの講師を務める。06年から教育の世界に転じ、地元小学校でのPTA会長などを経て、07年からK.I.T.(金沢工業大学)虎ノ門大学院教授を務める。同時に、「決める力」「発想力」と「生きる力」をテーマにした授業や講演で全国を飛び回る。年間7,000人以上の社会人・子ども・保護者・教員に接している。現在K.I.T. 虎ノ門大学院教授の他に、早稲田大学ビジネススクール客員教授、グロービス経営大学院 客員教授、放課後NPOアフタースクール 理事、NPO法人3keys理事、永平寺ふるさと大使を務める。

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