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ドラマ『しんがり』主演で感じた組織に生きる光と闇

2015年09月17日 公開

江口洋介(俳優)

「カリスマ社長」の時代は終わった

山一證券の経営破綻は18年前のことだ。しかし、「昔の話だから自分たちとは関係がない」とは言えない、というメッセージが込められている。

「今回のドラマの中に『証券会社に入れば一生安泰』というセリフが出てきます。たしかに、高度成長期やバブルの頃は、大手企業に入社さえすれば、定年まで安心して働けたのでしょう。
しかし、山一證券の破綻をきっかけに、それまでの常識が変わってしまった。山一以降、他の業種、他の大企業でも経営破綻する企業は珍しくなくなりました。入口のところで同じバスに乗れば、定年まで確実に連れて行ってくれる時代は、すでに終わったのです。

そういう意味では、山一の社員が経験した苦境を、今のサラリーマンが再び経験する可能性は十分にあります。今回のドラマは、今に通じる話でもあるわけです。
もちろん、大企業でも安心できない時代が今も続いているからといって、すべての企業がそうというわけではありません。山一破綻以降の厳しい時期でも、ちゃんと伸びている企業はありますよね」

それならば、一体これからの時代、伸びる企業の条件とは何なのだろうか。江口さんなりの考えをうかがってみた。

「僕はあくまでも『ガイアの夜明け』などの番組で、企業の現場を傍から見ているだけです。経営に詳しいわけではないし、ずっと俳優をやっていて組織に勤めた経験もないから、こんな難しい質問に答えられる資格はないですよ。

ただ、その立場であえて言わせていただくなら、これからはカリスマ的な経営者が一人で君臨する時代ではないという気がします。

それよりも、腹を割って話せる仲間が周りにいて、自分と違う意見が出ても、それを面白がって吸収できるリーダーがいる会社が強いと思います。
たとえば社長室のドアがいつも閉まっていて近寄りがたい雰囲気があるよりも、ドアがオープンで、いつでもウェルカムという会社がいいのではないでしょうか。理屈では説明できませんが、元気な企業にはそうした会社が多い気がします」

 

好きなことだけ
やると成長しない

しんがりのメンバーに限らず、誰しも少なからず、自分の仕事に対する誇りやこだわりを持っているものだ。江口さんは俳優の仕事の中でどういったことを意識しているのだろうか。

「僕が仕事で強く意識しているのは時代性です。映画やドラマは歌謡曲と同じで、その時代だから生まれるものが必ずあのます。それをどうやって表現するかが、役者としてのこだわりの一つです。

たとえば、時代劇を作るとします。かつて三船敏郎さんがやっていたものを焼き直ししても、三船さんにはかないません。それよりも、今だからこそできることを入れるべきではないでしょうか。
それは『るろうに剣心』のようなアクションかもしれないし、日本が得意とするアニメーションと絡めるという手法かもしれない。答えは一つに限らないけれど、今という時代を反映させてこそ、いい作品になっていくのだと思います。

実は、役者としてこだわっていることがもう一つあります。それは、自分の限界を自分で決めないことです。

役者って、自分のやりたい役柄をやっているだけだと、いつか限界が来ると思うんですよ。僕はもともと、アウトローな役柄が好きで、ネクタイを締める役なんて自分には絶対に似合わないと思っていました。
でも、ある程度の年齢になるとそういう役柄のオファーをいただくようになり、勇気を出して挑戦してみたら、演技の幅が広がって役者として一回り大きくなれた。

その辺りはきっと他の仕事も同じでしょう。仕事を選り好みして好きなことばかりやるのではなく、あえてそれまで避けていたものや新しいものに挑戦してみる。その積み重ねで、人は成長していく。少なくとも僕はそう思って仕事をしています」

 

『しんがり~山一證券 最後の聖戦~』で描かれる、山一證券破綻の顛末とは?

山一證券は、野村證券、大和證券、日興證券とともに日本の「四大証券会社」の一角にあったが、不正会計(損失隠し)事件後の経営破綻によって1997年に廃業した。
経営破綻の火種は、80年代から存在していた。同社の主なターゲットは法人だったが、当時、法人営業では顧客をつなぎとめるため、運用利回りの保証や損失補填、一任勘定(売買する銘柄や数量などを証券会社に任せる取引)が当たり前のように行なわれていた。これらの取引は、91年に証券取引法改正で禁止されたが、山一證券では裏で一任勘定が継続され、そこで発生した損失を証券会社側が引き受けていた。損失は子会社に移されて、飛ばし(含み損のある有価証券を、決算時期が異なる企業間で転売して表面化させないようにする)という手法で長らく隠蔽されていた。
97年、山一證券は経営危機に陥り、再建の道を模索していた。しかし、違法な簿外債務2,600億円の存在が発覚して、会社更生法の適用を断念。自主廃業を決めて、創業から100年の歴史に幕を下ろした。背景には法人営業部門の暴走と、それを知りながら容認してきた経営陣の怠慢があると言われている。

 

<プロフィール>
江口洋介(Yosuke Eguchi)
俳優
1968年、東京都生まれ。87年に映画『湘南爆走族』で主人公役に抜擢され、一躍有名になる。近年の出演作は、映画『脳男』、『るろうに剣心』、『天空の蜂』(主演)、2016年1月には『人生の約束』の公開が控えている。2010年1月より『日経スペシャル ガイアの夜明け』(テレビ東京系)で2代目案内人を担当している。

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