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精神科医による「対人関係の悩み」診断

2015年10月30日 公開
2022年09月28日 更新

ゆうきゆう(精神科医/心理研究家)

ゆうきゆう氏がアドバイス!
悩みに効く心理学

対人関係の悩みを軽減するためには、まず「自分を認めること」。その前提に立ったうえで、具体的なよくある悩みについてアドバイスをいただいた。

 

Q1.職場に苦手な人がいます。仕事上かかわりを断ち切ることができないのですが、どうすればいいでしょうか。

A1.「必要最低限のかかわり」を維持しよう

そもそも人は、一定の割合で好きな人・嫌いな人を作る生き物です。つまり、あなたに苦手な人・嫌いな人がいても、それはごくごく普通のこと。
それを踏まえたうえでお伝えしたいのは、「嫌いな人を好きになろうと努力する必要などない」ということです。
とはいえ、全力で嫌悪感を表現する必要もありません。ただ「必要最低限のかかわりを維持する」ことに尽力しましょう。
大きな努力をする必要はなく、挨拶や業務連絡、話しかけられたときに相槌を打つ、程度のこと十分です。その苦手な人と接すること自体も仕事上の業務だととらえても構いません。
悪意を向ければヒートアップして穏やかとは程遠い状態になりますし、無理に親しくしようとすれば、それも嫌悪感を増幅させるだけに終わるでしょう。
ならば、あなたが必要最低限の対応を行なうことが、一番あなたの心を落ち着ける方法ではないでしょうか。
「これ以上は、頑張らない」と最低ラインを決めて、ビジネスライクに対応してみてくださいね。

 

Q2.雑談が苦手で、職場の人と打ち解けられません。仕事に支障はありませんが、疎外感があります。

A2.義務感を捨て、自分のポジションを確立しよう

最初にはっきり言ってしまえば、あなたが「仕事に支障はない」と言うように、職場の人と打ち解けなくても、仕事はできます。
それなのに、「打ち解けなければいけないのか?」と考えてしまうのは、あなたがその場に馴染んでいないような気がする、もっと言えば、そのことで他人から何か思われているのではないかと感じているからではないでしょうか。
そもそもあなたの疑問は「そうしなければいけないのだろうか」という義務感から生じています。あなたの希望ではなく義務が先行しているわけですから、あなたはその状態を望んではいません。ならば、「職場の人間関係は割り切って距離を置くタイプ」というポジションに潔く自分を置いてしまうことです。
誰もが同じような距離感で接する必要はありません。人間関係のあり方を一般化すれば、それだけ悩みは深くなるものです。あなたを苦しめる常識を一度捨ててしまうことで、もっと気楽に職場での自分を認められるのではないでしょうか。

 

Q3.人の視線、表情やしぐさや動作、言葉や言い方を深読みして、気にしてしまいます。

A3.「本当のところはわからない」と自分に言い聞かせよう

他人の動向や心理が気になるのは、根底に恐怖心があるためだと考えられます。
自分が相手を不快にしていないか、傷つけていないか……、これらは、相手から嫌われるリスクを恐れている言葉です。しかし、こういった深読みをしている人は、多くの場合、自分自身の価値観や感じ方を相手に投影しているにすぎません。
深読みで出てくる推測というのは、ほとんどの場合自分の思い込み、歪曲によるものです。特に自信を失っている人はネガティブな結論に陥りがちなので、「嫌われたかもしれない」などと、他人の挙動を自分に対する評価と結びつけてしまいがちです。
あなたが気づくべきなのは、「相手の挙動を歪曲してとらえている可能性」と「結論は自己評価に過ぎない」という2点です。ここに気づいて「そう感じたかもしれないけれど、違うかもしれない。本当のところはわからない」と考えを補正してみてください。
一度結論づけた可能性の領域を、再度、別の可能性に明け渡す癖をつけてみるのです。

 

Q4.営業職ですが、初対面の相手と話すのが苦手です。どうしたら、打ち解けることができますか。

A4.「ほんの少しの失敗談」を話してみよう

初対面の人と打ち解けるのは、誰でも難しいと感じているものです。とくに、営業をされているのであれば、相手が「この営業マンは信用できるのか」「強引に勧めてくるのでは」などと、身構えているのを感じることも多いと思います。こちらの出方をうかがわれるのは緊張しますよね。
そこで当たり障りのない話をするというのもアリですが、一気に打ち解けるには「ほんの少し失敗したことを話す」のが有効です。営業においてポジティブな情報を前面に出すのはある意味セオリーなのですが、相手はあなたの人間性をチェックしているので、親しみを感じられるほうが気持ちに踏み込めるのです。
また、初対面なのは相手も同じことですから、「相手の緊張をちょっとほぐしてあげる」という気持ちで接してみるのもいいですね。「自分が緊張しているからなんとかしよう」よりも「相手が緊張しているから少し話しやすい雰囲気にしてみよう」と転嫁するほうが、ずっと自分の緊張感は和らぐものです。

 

Q5.自分の意見を言うのが苦手です。どうしたら、はっきりと伝えられるようになりますか。

A5.意識の方向を外側から内側にシフトしよう

自分の意見を主張しづらい人というのは、他人の意見と対立することを避けたり、わがままと思われたくないから自己主張をしないということが多いのではないでしょうか。
突き詰めればそれは「嫌われたくない(ネガティブな評価を受けたくない)」ということなのですが、実はそこには“他人の気持ち(他人による自分の印象や評価)をコントロールしたい”という気持ちも入り混じっています。
このように、自分の外側に意識が向いているとき、自分の意見や気持ちもつかみづらくなり、「言わなくてもいいのではないか」と軽い扱いになってしまいがちです。
ですから、「自分はどうしたいんだろう?」という自分の「内側」を、まずはしっかりと意識することが大切です。自分の中で「伝えたい」という気持ちを強く意識することで増幅すると、周りの反応が気になりにくくなり、結果的に自己主張しやすくなりますよ。
意識の方向を外側から内側へと切り替えていくことがポイントです。

 

<プロフィール>
ゆうきゆう Yu Yuki
精神科医/ゆうメンタルクリニック総院長
神奈川県出身。東京大学医学部卒業。東京大学附属病院精神科に勤務ののち、現職。ゆうメンタルクリニックは上野院、池袋東口院、新宿院、渋谷院、秋葉原院、池袋西口院がある、首都圏最大級のメンタルクリニックグループ。心安らげるクリニックとして評判が高い。ゆうスキンクリニック池袋西口院も開院。総発行部数20万部のメールマガジン「セクシー心理学」を発行。心理研究家、漫画原作者として、著書多数。
http://yucl.net/

 

《『THE21』2015年10月号より》

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