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メルケル独首相、強力なリーダーシップの源泉とは?



2015年09月08日 公開

熊谷 徹(ドイツ在住ジャーナリスト)

 

 ギリシャの債務問題がどこまで波及するか、世界中が注目している中で、ますます存在感を強めているのがドイツのメルケル首相だ。米誌『フォーブス』が選ぶ「世界で最も影響力のある女性」第1位にも、5年連続で選ばれている。なぜ、メルケルは強力なリーダーシップを発揮できているのか? ドイツ在住のジャーナリスト・熊谷徹氏に緊急寄稿していただいた。

《『THE21』2015年9月号(8月10日発売)掲載/内容は執筆時点のものです》

 

世界が発言に注目する「鉄の女」メルケル

 

 ギリシャは国際通貨基金(IMF)からの債務約16億ユーロを6月30日までに返済せず、事実上の「債務不履行状態」に陥った。また、欧州連合(EU)とIMFが求めていた緊縮策を拒否し、「7月5日に緊縮策について国民投票を行なう」として、交渉を一方的に打ち切った。1999年のユーロ圏創設以来、最大の危機である。

 このとき世界が注目したのは、EU政府に相当する欧州委員会のユンケル委員長や欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁ではなく、ドイツのアンゲラ・メルケル首相の発言だった。

 7月1日、メルケルは「我々は、ギリシャで国民投票が済むまでは、同国と緊縮策の内容について交渉したり、融資を行なったりする気はない」と断言。ギリシャのチプラス首相は救済プログラムの延長を求めたが、にべもなく断わった。

 メルケルの態度が注目された理由は、2009年に表面化したギリシャ債務危機との戦いで、彼女がリーダーシップを握っていたからである。

 10年当時、債務危機はスペイン、ポルトガル、アイルランドにも飛び火し、ユーロ圏の崩壊が懸念されていた。このとき、メルケルは連邦議会での演説の中で、「ユーロが挫折したら、ヨーロッパも挫折する」と断言。南欧諸国の債務危機を「EU創設以来最も深刻な事態であり、ヨーロッパの存続がかかっている」と位置づけたうえで、これらの国々を救済する以外に「選択の余地はない」と主張した。

 メルケルは当時、「ユーロ圏からは一国も脱落させない」という決意を持っていた。そのメルケルが、態度を一変させてギリシャ政府の救援要請を断わった理由は、今年2月に誕生したチプラス政権が緊縮策を頑なに拒んだだけではなく、他のユーロ圏加盟国と協調する姿勢を見せなかったからである。そこには、「自助努力を怠り、EUのルールを守らない国は助けない」というメルケルの哲学が現われている。英国のサッチャー同様、情に流されずに原則を貫く「鉄の女」と呼ばれる所以だ。

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著者紹介

熊谷 徹(くまがい・とおる)

ドイツ在住ジャーナリスト

1959年、東京都生まれ。早稲田大学政経学部卒業後、NHKに入局。ワシントン支局勤務中に、ベルリンの壁崩壊、米ソ首脳会談などを取材。90年からはフリージャーナリストとしてドイツ・ミュンヘン市に在住。過去との対決、統一後のドイツの変化、欧州の政治・経済統合、安全保障問題、エネルギー・環境問題を中心に取材、執筆を続けている。著書に『なぜメルケルは「転向」したのか ドイツ原子力40年戦争の真実』(日経BP社)、『脱原発を決めたドイツの挑戦』(角川SSC新書)など多数。『ドイツは過去とどう向き合ってきたか』(高文研)で2007年度平和・協同ジャーナリズム奨励賞受賞。

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