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心理学者が教える「先送りゼロ」のやる気アップ法

2016年01月18日 公開
2023年05月16日 更新

榎本博明(心理学者)

榎本博明

ポイント3
他人ではなく、過去の自分と比較する

自己効力感を高めることも、モチベーションを喚起し、先送りを防ぐために必要です。自己効力感とは、「自分はできる」という自信。自己効力感があればためらいなく仕事に着手できますが、「無理かも...」と思えば手が止まってしまいます。

自己効力感を高めるうえでも、小さな成功体験を積み重ねることが有効(ポイント6参照)。もう1つ、他人と自分を比較しないことも重要です。他人を意識して劣等感が刺激されると、自己効力感が損なわれる原因になります。

比べる対象は、他人ではなく、過去の自分にしましょう。去年できなかったことが今年はできる、といった自分自身の変化や進歩に目を向けるのです。それが、すなわち「成長できた」という実感です。その喜びを感じることで意欲が湧いてくるのです。

 

ポイント4
先読みすることで、一時的な感情に溺れない

これから起こることや、このままだと自分がどういう感情になるかを先読みすることも、「すぐやる」動機づけにつながります。

たとえば朝一番のエンジンがかかりにくいとき、「先延ばしすれば、ますます自己嫌悪を招く」「今やれば、夜、早く帰れる」といった先読みをすることで、一時的な感情に溺れず、やる気が湧いてくるわけです。また、これを繰り返すと、自分を自分でコントロールできている感覚が強まってきて、自己効力感も高まります。

 

ポイント5
仕事に自分なりの意味づけをする

与えられた仕事にやりがいを感じられなければ、なかなか仕事に手をつける気が起きないもの。そんなときは、自分で意味を作り出しましょう。最初は些細な意味づけでかまいません。

たとえば、タスクを処理していくのをゲームとして捉える。「この作業を30分以内で終わらせればゲームクリア」などと自分でルールを決めてトライすると楽しさが生まれます。

次第にスパンを伸ばしていくと、「今年中にこれを達成しよう」「1年後には先輩と同レベルの仕事ができるようになろう」という目標が立ってきます。やはり、時間制限を設けることでやる気が喚起されます。

さらに次の段階では、「外につながる」意味づけを考えましょう。「この仕事は会社にどう役立つか」「社会にどう貢献できるか」などに意味を見いだせれば、小さな個人的不満があっても、モチベーションが下がりません。

 

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ポイント6 タスクを細分化して成功体験を増やす >

著者紹介

榎本博明(えのもと・ひろあき)

心理学者

1955年、東京都生まれ。東京大学教育心理学科卒業後、〔株〕東芝市場調査課に勤務。その後、東京都立大学博士課程を経て、大阪大学大学院助教授などを務めたのち、MP人間科学研究所代表に就任。ビジネスシーンを中心に、社会生活を送る中での人間心理の研究を行ない、部下育成やメンタルコントロール術を多くの企業に指導している。著書に『「上から目線」の構造』(日経プレミアシリーズ)、『モチベーションの新法則』(日経文庫)など多数。

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