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組織の生産性を落とす「保険仕事」とは?

2015年12月25日 公開

柴田昌治(スコラ・コンサルト プロセスデザイナー代表)

なぜ、日本企業の生産性は低いままなのか

バブル崩壊以後、日本の組織に漂い続ける「停滞感」。それは若い世代になればなるほど感じているはずだ。その原因は、「そもそも何が問題なのかがわからない」というところにもあるだろう。組織の風土改革のプロフェッショナルであり、新著『日本企業の組織風土改革』を発刊した柴田昌治氏に、「日本企業の組織の生産性が高まらない理由」をうかがった。

 

過剰な「保険仕事」が組織の生産性を低めている

「組織の生産性」を低下させている要因の一つに「保険仕事」がある。たとえば間接部門の仕事の中には、やらなければならない決められた仕事のほかに、会社の利益には貢献しないが、自分自身が会社の中で市民権を失わないためには「やっておいたほうがよい」という種類の仕事がある。

「やっておいたほうがよい」というのは経験上、会社の利益には寄与しないと思っていても、やっておいたほうが「万事がうまく収まりやすい」という意味である。私はこのような仕事を、過剰な「保険仕事」と呼んでいる。この行きすぎた「保険仕事」も組織の生産性を低めている大きな要因である。

もう少し詳しく見てみよう。

上司から与えられた課題を、その目的や効果、意味に疑問をもちながらもあえて深く考えることをしないでひたすら処理する、あるいはこなす、というのは過剰な「保険仕事」によくみられる典型的な例である。とりあえず上司から言われたことを、文句を言わずにこなしているかぎり、ネガティブな印象をもたれることはないから、会社の中での身の安全は保たれる。

 

職場での「居心地」を求め、問題を先送りに

上司から言われた“仕事”が本当に会社のためになっているのかどうかをそのつど考える、といった“きれいごと”では仕事などやっていけない、と割りきって仕事をしている人は実のところ非常に多い。

自分自身を良く評価されたいために、いやもっと正確に言うなら、ほとんどの場合「悪く評価されないため」に、なんとなく夜遅くまで残って仕事をするのも、過剰な「保険仕事」の一つの例である。夜遅くまで仕事をすれば体も疲れるし、精神的なゆとりもなくなる。じっくり考えて自分の仕事のやり方を変えたり、効率的な仕事の仕方を見つけ出したりするために必要な精神的パワーも失われてしまう。

じっくり仕事をしたほうが結局は生産性を高める、という意味で良い結果が得られることはなんとなくわかっていても、そうしないからといってすぐに悪い結果が出てくるわけではないため、つい職場でのとりあえずの“居心地”を優先する安易な妥協に走ってしまいがちなのだ。組織の風土は、その組織の時間の使い方に典型的に現れるものなのだ。

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著者紹介

柴田昌治(しばた・まさはる)

スコラ・コンサルト プロセスデザイナー代表

1979年、東京大学大学院教育学研究科博士課程修了。
1986年に、日本企業の風土・体質改革を支援するためスコラ・コンサルトを設立。これまでに延べ800社以上を支援し、文化や風土といった人のありようの面から企業変革に取り組む「プロセスデザイン」という手法を結実させた。社員が主体的に人と協力し合っていきいきと働ける会社をめざし、社員を主役にする「スポンサーシップ経営」を提唱、支援している。2009年にはシンガポールに会社を設立。
著書に、『なぜ会社は変われないのか』『なぜ社員はやる気をなくしているのか』『考え抜く社員を増やせ!』『どうやって社員が会社を変えたのか(共著)』(以上、日本経済新聞出版社)、『成果を出す会社はどう考えどう動くのか』(日経BP社)などがある。

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