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儲けようとしなくても儲かる「のんびり投資」とは?

2016年01月28日 公開
2023年05月16日 更新

澤上篤人(さわかみ投信取締役会長)

「のんびり投資」は儲けようとしなくても儲かる!?

講演などで私はよくこういう話をします。そうすると、たいていの人は私のことをずいぶん変わったことをいう人だという目で見ます。無理もありません。最近は金融のプロでさえも、自分たちの仕事はお金を右から左へ動かして運用成績という数字を大きくすることだと、なんの疑いももたずに信じているくらいですから。

なかには、「理想論はわかった。でも、投資する以上はなんらかの儲けを期待したい」「そんな青臭いこといっていて本当に儲かるの?」と途中で質問してくる人もいます。

それに対する私の答えはいつもこうです。

「『応援投資』をしていれば、儲けようとしなくても儲かってしまいますよ。だから心配いりません」

えっ、それでは納得できない? 大丈夫です。みなさんにも納得してもらえるように、応援投資の手順をもう少し詳しく説明していきます。

 

「ずっとなくならない企業」をどう見つけるか?

まずは、この先何があってもずっと応援し続けたいと思える企業を一つか二つ見つけることです。ここは慎重かつ徹底的にやります。

この社会には、絶対になくならない企業があります。それは、人々に必要とされている企業です。この会社の提供する商品やサービスがなくなると毎日の生活に支障が出る、だからなくなると困るんだとみんなが感じているなら、その会社は何があってもつぶれません。

もしつぶれるとしたら、それは人々の生活がなくなるときですが、不況に見舞われようが国家が財政破たんしようが、人々の生活は今日も明日も明後日も、ずっと続いていきます。

そして、生活があるかぎり、その生活を支えている企業には、明確な存在理由があるのです。

東日本大震災を思い出してください。未曽有の大災害に、被災地の人たちはたいへんな被害を被りました。その直後、ズタズタになった彼らの命をつなぎ、生活を支えたのは誰ですか。それは企業です。国は役に立ちませんでした。国に指図されなくても、たくさんの企業が自分たちの判断で、生きていくのに必要な物資を送り届け、現地で被災者と一緒に不眠不休で汗を流して、多くの人を助け、尊い命を救ったのです。

そういう企業は、まさに私たちの生活になくてはならない運命共同体のようなものです。

もちろんそこに含まれるのは、生活必需品をつくっている会社だけではありません。たとえば、ベアリングは一般の人の生活には直接関係ありませんが、車の重要なパーツの一つです。車がないと現代人の生活は成り立ちませんから、ベアリングをつくっている企業もまた、運命共同体だといえます。

そういう私たちの日常生活になくてはならない企業を、とことん応援すればいいのです。

 

年2~3回のチャンスを逃さずチェック

そういう企業を見つけても、いきなりその企業の株を買う必要はありません。翌日からしばらくその企業の株価をチェックしてみます。

すると、年に2〜3回は株式市場の暴落があるので、そこで初めてその企業の株を買います。あわてて売りに走る短期利益狙いのトレーダーを横目に、「自分たちの現在、そして未来の生活のために必要なこの企業を応援するんだ」という強い思いで買いを入れるのです。あとは株価の上げ下げに一喜一憂することなく、その企業が成長するのをじっくり、のんびり見守る。それだけです。

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底値を狙わず、さっと買ってしまうことが大事 >

著者紹介

澤上篤人(さわかみ・あつと)

さわかみ投信取締役会長

さわかみ投信取締役会長、さわかみホールディングス代表取締役、さわかみ一般財団法人代表理事。
1947年、愛知県名古屋市生まれ。70年から74年までスイス・キャピタル・インターナショナルにてアナリスト兼ファンドアドバイザー。その後、80年から96年までピクテ・ジャパン( 現・ピクテ投信) 代表取締役を務める。96年にさわかみ投資顧問を設立、99 年には日本初の独立系投資信託会社であるさわかみ投信を設立。長期投資の志を共にできる顧客を対象に、長期保有型の本格派投信「さわかみファンド」を運営している。同社の投信はこの1本のみで、純資産は約3000億円、顧客数は11万人を超え、日本における長期運用のパイオニアとして熱い支持を集めている。著書に、『2020年に大差がつく長期投資』(産経新聞出版)、『国債が暴落しても長期投資家は平気だよ』(日経BP社)、『長期投資はじめの一歩』(廣済堂出版)ほか多数。

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