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儲けようとしなくても儲かる「のんびり投資」とは?

2016年01月28日 公開
2023年05月16日 更新

澤上篤人(さわかみ投信取締役会長)

底値を狙わず、さっと買ってしまうことが大事

こうした「のんびり投資」を成功させるための最大のポイントは、「暴落相場のときに、あれこれ考えずにさっと買えるか」にあります。

のんびり投資にまだ慣れていない人は、「もっと下がるんじゃないか」「底値はもっと先なのではないか」「このまま株価は戻らないのでは?」「最悪つぶれてしまったら株が紙クズになってしまう」などとあれこれ考えて、買いを入れるのを躊躇してしまうもの。それで結局買わないまま終わるのです。

ですから、あれこれ考えず、「今こそ真打ちの応援団の出番だ」と買いを入れる。なにしろ応援しているのは、私たちの生活や未来になくてはならない企業ですから、めったなことではつぶれません。

また、暴落相場で買っておけば、株価が少し戻っただけでも利益になります。「なくては困る企業」であれば業績も長い目でみれば伸びていきますから、株価もいつかは大きく戻るはず、とのんびりかまえていればいいのです。

 

「にわか応援団」が騒ぎ出すのをじっくり待つ

仮に買ったあとでその株がさらに下がったとしても、まったく気にする必要はありません。だいたい、自分が買ったからといって株価が急に上がり始めるなんてことは、普通はありません。売りたい人がいるうちは、まだまだ下がります。相場というのはおもしろいもので、下値を想定すると、それ以上に下がるのです。株価などをどんどん下へ呼んでしまうのです。

それでも、永久に売れるものなんて絶対にありませんから、いずれどこかで売りがなくなるときが必ずきます。そうすると、今度は一転して株価は上昇に転じます。

相場に戻りの気配が出てくると、儲けたいだけの相場追いかけ投資家が姿をちょろちょろ見せ始めます。彼らは〝にわか応援団〞。株価がさらに上がり出すと「急げ! 乗り遅れるな!」と一気に買い群がってくるので、株価の上昇ピッチは上がっていきます。

一方、暴落時に安値で買っている長期のんびり投資家の保有株には、すでに利益がたっぷり乗っていますから、相場がどう動こうが焦る必要は全然ありません。にやりと笑ってあとはどっしりかまえていればいいのです。

 

長期投資はリズムが大切

人気が高まって株価が上がっているということは、自分以外にも応援者がたくさんいるということです。そんなときには応援を彼らに任せて、少しずつ、少しずつ売り上がってこれまでの投資収益を確保し、次の暴落相場に備えます。

株価高騰時にどんどん買い群がってくるのは、しょせん儲けることしか頭にない〝にわか応援団〞です。株価がひとたび下げに転じれば、一目散に逃げ出します。それでまた暴落相場が来たら、「仕方がない。また真打ち応援団の出番だ」と安くなった株を再び買い増す。

この一連の流れを淡々とやっていくというのが長期投資のリズムです。そして、このリズムを守ってさえいれば、資産は自然と増えていくのです。

(社員撮影:永井 浩)

著者紹介

澤上篤人(さわかみ・あつと)

さわかみ投信取締役会長

さわかみ投信取締役会長、さわかみホールディングス代表取締役、さわかみ一般財団法人代表理事。
1947年、愛知県名古屋市生まれ。70年から74年までスイス・キャピタル・インターナショナルにてアナリスト兼ファンドアドバイザー。その後、80年から96年までピクテ・ジャパン( 現・ピクテ投信) 代表取締役を務める。96年にさわかみ投資顧問を設立、99 年には日本初の独立系投資信託会社であるさわかみ投信を設立。長期投資の志を共にできる顧客を対象に、長期保有型の本格派投信「さわかみファンド」を運営している。同社の投信はこの1本のみで、純資産は約3000億円、顧客数は11万人を超え、日本における長期運用のパイオニアとして熱い支持を集めている。著書に、『2020年に大差がつく長期投資』(産経新聞出版)、『国債が暴落しても長期投資家は平気だよ』(日経BP社)、『長期投資はじめの一歩』(廣済堂出版)ほか多数。

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