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「数字」に落とし込めば、判断も指示も速くなる!

2016年03月14日 公開
2023年05月16日 更新

望月 実(公認会計士)

部下の数値目標をプロセスに落とし込む

 

もう一つ、課長にとって重要な管理会計の能力は、「部下の数値目標をかみくだいて小さなプロセスに落としこむ」ことです。

優秀な部下は、ノルマなどの数値目標を与えられると、その数字を達成するためのプロセスを自ら組み立てられますが、それができない部下もいます。そうした部下に力を発揮してもらうには、数値目標を与えて放ったらかしにするのではなく、さまざまなデータを元に、目標を達成するために必要なプロセスを一緒に考えていくことが大切です。

たとえば、過去の製品別売上高や成約率を分析した上で、「月300万円のノルマを達成するには契約を十件取ることが必要」「平均成約率から考えれば、1日2件のアポイントが必要」「今は平均1件以下だから、まず1件を目指そう」と日々のプロセスに落としこみます。
それでも達成できなければ、「セールストークを磨いて、成約率を上げよう」など、一人ひとりの部下の問題点を明確にしながら、必要なアドバイスを行なっていくわけです。

その人やチームの状況に合ったプロセスを見つけるポイントは、売上を構成する要素をチェックすること。具体的には、「集客数」「顧客単価」「購入率」「リピート回数」のデータを見ていきます。すると、どこに問題があるのかがわかり、解決策を打ち出すことができます。

 

同業他社4~5社のIR資料を読みこむ

 

課長より上の役職に昇進すると、所属している課の数字だけではなく、部の数字や会社全体の数字の動きを理解する必要が出てきます。管理会計の知識が身についたら、財務諸表を見る力も鍛えておきましょう。

もっとも、簿記や経営指標の知識は必要ありません。私が勧めるのは、自社と同業会社のIR資料を読み込むこと。中でも、決算説明会の資料を読むと良いでしょう。

なぜなら、それによって、どの数字に注目すれば良いかがわかるからです。

業種や業界によって、重要な数字は異なります。たとえば、情報サイトを運営する新興IT企業の場合は「有料加盟店舗数」や「月間ユニークユーザー数」などといった、売上げと関連の高い数字の伸び率が何より重要です。また、総合商社は、多額の資金調達を行なってビジネスを進めていくので、ネット有利子負債と株主資本の比率である「NET DER」などの財務関係の数字が重要です。

そうした数字がわかるのが、IR資料。とくに決算説明会のパワーポイントの資料は、会社の重要な数字をわかりやすく説明しています。四~五社分も見れば、どの会社も共通して取り上げている数字が見つかるはずです。資料は企業のIRサイトで簡単にダウンロードできます。

そうした資料を定期的に眺めていれば、その他の数値に関しても興味が湧いてきます。それらについて調べていれば、いつの間にか、決算書を読めるくらいの知識が身につき、抵抗感がなくなるはずです。ぜひ活用してみてください。

 

《『THE21』2016年3月号より》

著者紹介

望月 実(もちづき・みのる)

公認会計士

1972年、愛知県生まれ。立教大学卒業後、大手監査法人に入社。監査、株式公開業務、会計コンサルティング等を担当。2002年に独立し、望月公認会計士事務所を設立。就活やキャリアアップにおいて「数字センス」で状況を切り開いていく方法を伝えることをミッションとして、日本人を数字に強くするための活動を精力的に展開。著書に、『一生使えるエクセル仕事術』(共著/CCメディアハウス)、『内向型人間のための伝える技術』(阪急コミュニケーションズ)、『課長の会計力』(日本実業出版社)など。

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