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「フリマアプリ」は世界のインフラになる

2016年02月25日 公開
2016年04月06日 更新

山田進太郎(メルカリ社長)

 

アプリの質の高さに徹底してこだわった

 

 ――ユーザーにはどういう方が多いのですか?

山田 最初は女性からマーケティングを始めました。女性には、友達同士で服を持ち寄って店を出したりする、フリマが好きな人が多い。そこで、「フリマアプリ」というキャッチフレーズを強調しました。また、フリマに出品する女性たちは、「私もこのブランド好きなんですよ」とか「これも一緒に買うから安くしてくれない?」などと、お客さんとのコミュニケーションを楽しんでいます。ですから、『メルカリ』にも、出品者と購入者とが気軽にコミュニケーションを取れるチャット形式の掲示板機能を設けています。

 その後、男性も増えてきて、今は日本の人口構成に近づいています。男性ファッションもかなり大きなカテゴリーになっていますし、スマホなど、バラエティに富んだ商品が取引されるようになりました。年齢を見ても、比較的30代前後の人が多い印象はありますが、40代以上の比率も上がってきています。やはり、日本の人口構成に近づいてきていますね。

 ――他のフリマアプリだと、女性など、特定の層のユーザーに特化しているものが多いですが、『メルカリ』はそうではありませんね。

山田 今後どうしていくかはわかりませんが、今のところは、いろいろな商品があることのメリットもあるんじゃないかと考えています。たとえば、服を売りたい人が使わないPCも持っているかもしれませんし、使わないPCを売って服を買いたい人もいるでしょう。だから、カテゴリーにこだわる必要はないだろうという仮説のもとでやっています。

 ――フリマアプリには『メルカリ』に先行していたものもありますし、後発も次々と出てきています。その中で、なぜ『メルカリ』は成長し続けられているのでしょうか?

山田 1つは、タイミングが良かったということがあると思います。リリースした2013年7月は、ちょうど、スマホが普及して、いろいろなサービスがスマホへと移行している時期でした。

 それから、最初のユーザーさんたちがしっかりと定着したということ。これはアプリの質にこだわったからだと思います。当社には私を含めて創業者が3人いて、全員エンジニア経験があり、起業の経験もあります。しかも、全員、ソーシャルゲーム事業をやっていました。ソーシャルゲーム事業は数字を見るのが仕事のようなもので、DAU(1日あたりのユーザー数)やARPU(1人あたりの売上高)などのいろいろな指標を見るんです。『メルカリ』の開発でも、どの画面でつまずいて出品に至らないのかなどのデータを丁寧に見て分析して改善を繰り返していきました。ユーザビリティテストといって、実際にユーザーさんに使っていただいて観察することもしました。こうして、「この項目を入力するところで迷っているからデザインを改善しよう」とか「この概念がうまく理解されないからガイドが必要だ」などと、地道にアプリの質を高めていったのです。これは、リリース前はもちろん、リリース後も続けてきました。

 もう1つ大きかったのは、2014年5月にテレビCMを打ったことです。それまで、ゲーム以外のアプリはほとんどテレビCMをしていなかったのですが、スマホを触りながらテレビを観る人が増えているので、効果があるだろうと考えました。そこで、広告代理店と一緒に、テレビCMとアプリのダウンロード数の相関について過去の事例を調べたり、いくつもの案を何度も検討したり、さらに資金調達もして、テレビCMを打ちました。その結果、1カ月間でダウンロード数が約200万から約300万へと1.5倍に増えましたし、「スマホでモノを売り買いするなら『メルカリ』がいいよね」という空気感ができたと思います。いったん「『メルカリ』がNo.1」と認知してもらえば、他の似たサービスが出てきても、『メルカリ』に戻ってきてくれます。

 

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著者紹介

山田進太郎(やまだ・しんたろう)

〔株〕メルカリ代表取締役社長

1977年、愛知県生まれ。早稲田大学在学時にインターンとして楽天〔株〕で『楽天オークション』の立ち上げに参加。卒業後はフリーでインターネットビジネスの仕事を請けながら経験を積み、2004年に単身渡米。05年に帰国し、〔株〕ウノウを設立。10年にウノウをZyngaに売却、Zynga Japanゼネラルマネージャーに就任。12年、Zynga Japanを退社し、世界一周の旅に出て20数カ国をバックパッカーとして訪れる。13年、〔株〕コウゾウ(現〔株〕メルカリ)を創業。14年、米国で『メルカリ』のサービスを開始。

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