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なぜ、モスバーガーは愛され続けるのか?

2016年02月05日 公開
2016年02月08日 更新

櫻田厚(モスフードサービス社長)

顧客の心は、あえて「面倒なこと」をしてつかむ

ファストフード業界の明暗が分かれている。期限切れの鶏肉問題などで急失速したマクドナルドを尻目に、安定した成長を続けるモスフードサービスは、顧客からの圧倒的な支持を元に、2015年3月期も増収を記録した。「日本発」のファストフードであるモスバーガーはなぜ、ここまで愛されるのか。櫻田厚会長兼社長にうかがった。

 

創業以来あえて「面倒なこと」ばかりしてきた

 業績好調のモスフードサービスは、逆風が吹いている外食産業において数少ない「勝ち組」企業の1つだ。しかし、会長兼社長を務める櫻田氏はそうした評価にあまり関心がないようだ。

「褒めていただくのはありがたいのですが、私自身は勝ち組という言い方が好きではありません。企業の評価は2種類あります。1つは、業績など数値化できる定量的評価。もう1つは数値化できない定性的な評価です。たとえば好き嫌い、なんとなく応援したいというのがこれに当たります。本来、この2つの評価が一緒になって企業のブランドが作られるわけです。

 ところが、マスコミのみなさんは、わかりやすい定量的な数字だけに振り回されて、やれ勝ち組だ、負け組だと判断してしまう。もちろん数字も大事ですが、より大事なのは、どうしてそのような数字になったのかという根幹の部分です。根幹の方向性が正しければ、一時的に数字が悪くても気にする必要はありませんし、逆に根幹がブレていたら、たとえ業績が好調でも安心はできません」

 このような、短期の業績にとらわれない姿勢は、モスバーガーの取り組みを見れば明らかだ。「私たちは創業以来、とにかく『面倒なこと』ばかりしてきました。他社と違うところがあるとしたら、そこだと思います。

 ファストフードはもともと生産性重視、効率性重視の業界です。できるだけ短い時間に、いかに多くのお客様に多くの商品を提供するか。それを最優先してきました。

 でも、モスバーガーは注文を受けてから調理を開始するので、手間も時間もかかります。でも、手間がかかるからおいしいのだと考えて、面倒なことを面倒くさがらずにやってきたのです。かつて、作業を効率化して調理時間を短くしようとしたのですが、支持が得られずにやめてしまったこともあるくらいです。

 必ずしもみんなが同じことをしなくてもいいし、中には逆のことをする会社があってもいい。そう考えて、時間がかかってもいいから、できたてでアツアツの商品を提供することにこだわってきたわけです。

 その姿勢が長い目で見たときにお客様の支持につながり、さらには定量的な結果につながってきたのでしょう」

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著者紹介

櫻田厚(さくらだ・あつし)

〔株〕モスフードサービス代表取締役会長兼社長

1951年、東京都大田区生まれ。72年、創業者である叔父、櫻田慧に誘われてモスフードサービスの創業に参画。77年、モスフードサービスに入社。94年、取締役海外事業部長。98年、代表取締役社長に就任。14年4月より会長職を兼任。

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