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なぜ、できる人は「本」を読むのか?

2016年02月11日 公開

嶋 浩一郎(博報堂ケトル社長)

 

積ん読、2度買いOK 読書は気楽が一番

 こうした利便性重視の背景にネット社会の影響があることは確かでしょう。とはいえ、オンライン購入や電子書籍を否定しているわけではありません。検索の迅速性は非常にありがたいので、欲しい本が決まっているなど明確な目的があるときは私も大いに利用します。そしていったん買ってしまえば内容は同じですから、その時々の都合で、紙の本と電子書籍の双方を活用します。いずれかを「良い」「悪い」と決めつけるのではなく、適宜使い分けて楽しむのが一番です。

本の読み方自体もリラックスしたもの。毎月50冊程度の本を買いますが、最後まで読むのは10冊くらい。常に何冊か併読して、読み続ける気が起きなければその時点で中止にします。

 世の人は往々にして、そうした読み方に罪悪感を覚えがちですね。本を最後まで読めない、買ったものの「積ん読」になっている、時には買ったのを忘れて2度同じものを買ってしまう、といったことに落ち込む人もいます。しかし、そこまで読書を神聖視する必要などありません。そもそも「ムダ前提」の情報なのですから、ありがたがらなくても良いのです。

 買っただけで終わった本も、自分の好奇心がそのとき一瞬発動したことの証。それがわかっただけでも十分な収穫です。

 役に立たないかもしれないものを気ままに手に取り、つまらなければ無理して読まない。そうしたカジュアルさを持つことが、書物との間に快適な関係を築くのだと思います。

本屋B&B
東京都世田谷区北沢2-12-4
 

《取材・構成:林 加愛≫
《『THE21』2016年2月号より≫

著者紹介

嶋 浩一郎(しま・こういちろう)

博報堂ケトル代表取締役社長

1968年生まれ。93年、〔株〕博報堂入社。企業のPR活動に携わり、2002~04年には雑誌『広告』の編集長を務める。04年、「本屋大賞」の立ち上げに参画。06年、既存の手法にとらわれないコミュニケーションを実施する㈱博報堂ケトルを設立。『アイデアはあさっての方向からやってくる』(日経BP社)など、著書多数。

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